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103・船、出港す
第316話 お見送りなのだ
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朝になった。
喋っているうちに寝てしまったのだが、僕とダイフク氏の上に何かホカホカした温かいものがいる。
アゲパンだ!
寝てしまった僕らの上で、さらに大の字になって寝ているではないか!
ちょっと重いと思ったんだ。
だがコボルドは体温が高いからホカホカしてて大変良い。
「お腹の上に何かいますぞ」
「アゲパンが僕らを暖めようとして寝てしまったらしい」
「優しみのカタマリ」
全くだ。
ちょっと揺さぶっても起きなかったので、そーっと抜け出した。
おお、外に出ると朝日が眩しい。
アゲパンハウスは、夕日は見られるものの朝日は外に出なければ拝めないのだ。
大きく伸びをすると、隣でダイフク氏が大の字になって立っている。
「アビサルワンズが変温動物だった頃の名残かも知れませんな! わしはこうして陽の光を全身に集めるのが好きなのです」
「誰だって気持ちいい朝日は好きなもんだよ」
僕も彼に倣って、大の字で朝日を受け止めるのだった。
さて、その後朝食だ。
コゲタが家から飛び出してきて、
「あっ、ご主人ー!」
と僕を指さした。
「おう、先に目覚めてるぞ」
「おこしにいこうとおもったのに! おさかなもおきてる!」
「お魚では無いですが起きてますぞ!」
「アゲパンはまだ寝てる」
「ほんと!? おこしにいくー! おきろー!」
コゲタがアゲパンハウスに飛び込むと、なんかアゲパンをペチペチ叩く音がした。
「ウグワーッ、てきしゅう~!! ハッ、コゲタさん!?」
「コゲタだよー。あさごはん! かおあらってきなさーい!」
「はっ!」
アゲパンが飛び起きて、コボルド二人で井戸にて顔を洗っている。
ほっこりする光景だ。
さて、僕らも食事に行こう。
朝食はやはりダイフク氏に合わせて、スープメインになった。
パンを煮込んだやつだから腹持ちも凄いぞ。
ほぼグラタンだ。
「美味い美味い」
「おいしー!」
「私用のはチーズを乗せないでくれたんだね。重くなくて助かるー」
「だうー」
「カルも食べたいのかい? もう少し大きくなったらだなあ……」
そうか、カルもじきに離乳食が見えてくるのだな。
リップル、おっぱいの出はいいらしいので、この辺は離乳に合わせて減っていくものだろうか。
なお、ダイフク氏はちょうど冷めたところで、カパッと一気に口に流し込み、喉越しを楽しんでいた。
「半固形状でぬるっと行く感じの喉越しでしたな! アーランで、そしてナザルさんと囲む最後の食事がこれで良かったですぞ! うまし!」
「一瞬の食事で美味しいというのが未だによく分からないが、気に入ってもらえたのなら良かった」
こうして食事を終え……。
船は今日発つということで、みんなで見送りに行くのだった。
僕はベビーカーを押しながら、のんびり歩く。
ポーターがパカポコと道を行き、背中にはコゲタが乗っている。
「ばじょうのコゲタさんも、えになりますねえ」
なんかアゲパンがうっとりしているな。
「コゲタ、私が歩き疲れたら馬の上変わってもらっていい?」
「いいよー!」
それでも、子育てで前より体力がついたリップルなのである。
港へ向かう半分の距離を歩き通すことができた。
「こうね、カズテスの島ではこっそり浮いて移動してたから楽だったんだけど、自分の足で歩くのは疲れるねー」
「手を抜いていたか……」
ダイフク氏はカエルっぽい姿なのに、ぴったんぴったん歩くのは全然苦ではないらしい。
ちなみにカエルのようにジャンプできるわけでもないとか。
「ハハハ、わしはカエルではないので」
ジャンプしない以外の生態がかなりカエル寄りなのになあ……。
そして港についた。
到着してしまった。
つまり、別れの時なのである。
船の外にはデュオス殿下が来ており、船のオーナーと握手していた。
「おお、来たかダイフク! 出るぞ!」
「ちょうどいい時間でしたな。では皆さん! お達者で! おさらばですぞ!」
ダイフク氏はびしっと敬礼っぽいポーズをすると、ぴったんぴったん桟橋を渡っていった。
船べりから、僕らに向き直る。
彼の他に、見知った船員たちがワーッと出てきた。
「ナザルさんとリップルさんがいるぜ!」「赤ちゃんもいる!」「ひえー、やっぱあの二人はデキてたんだなあ!」「ばっか、お前結婚式見に行かなかったのか?」「酒のんで倒れてたから……」
賑やかだ。
大変賑やかだ。
だが、そんな中でダイフク氏。
スウーッと大きく息を吸い込んだ。
彼のお腹がまさにカエルのように膨らむ。
いや、膨らんだ所に布地がちゃんとついてくるのが凄いな。
そういう布地かな?
「みなさーん!! これにてお別れですぞー!! 末永くお元気でー!!」
凄い声で、船員たちの大騒ぎを圧倒した。
離れているこっちまで、ビリビリ来る!
最後にとんでもない特技を披露していったな……!!
「元気でなー!」
「ばいばーい!」
「君の旅路に幸多からんことを!」
僕らに見送られつつ……。
船はゆっくりと岸を離れていくのだった。
長い事いた船は、今ついにサウザンド大陸へと帰っていくのだなあ。
僕らは船が見えなくなるまで、見送っていたのだった。
またいつか会えるといいな、友人よ。
喋っているうちに寝てしまったのだが、僕とダイフク氏の上に何かホカホカした温かいものがいる。
アゲパンだ!
寝てしまった僕らの上で、さらに大の字になって寝ているではないか!
ちょっと重いと思ったんだ。
だがコボルドは体温が高いからホカホカしてて大変良い。
「お腹の上に何かいますぞ」
「アゲパンが僕らを暖めようとして寝てしまったらしい」
「優しみのカタマリ」
全くだ。
ちょっと揺さぶっても起きなかったので、そーっと抜け出した。
おお、外に出ると朝日が眩しい。
アゲパンハウスは、夕日は見られるものの朝日は外に出なければ拝めないのだ。
大きく伸びをすると、隣でダイフク氏が大の字になって立っている。
「アビサルワンズが変温動物だった頃の名残かも知れませんな! わしはこうして陽の光を全身に集めるのが好きなのです」
「誰だって気持ちいい朝日は好きなもんだよ」
僕も彼に倣って、大の字で朝日を受け止めるのだった。
さて、その後朝食だ。
コゲタが家から飛び出してきて、
「あっ、ご主人ー!」
と僕を指さした。
「おう、先に目覚めてるぞ」
「おこしにいこうとおもったのに! おさかなもおきてる!」
「お魚では無いですが起きてますぞ!」
「アゲパンはまだ寝てる」
「ほんと!? おこしにいくー! おきろー!」
コゲタがアゲパンハウスに飛び込むと、なんかアゲパンをペチペチ叩く音がした。
「ウグワーッ、てきしゅう~!! ハッ、コゲタさん!?」
「コゲタだよー。あさごはん! かおあらってきなさーい!」
「はっ!」
アゲパンが飛び起きて、コボルド二人で井戸にて顔を洗っている。
ほっこりする光景だ。
さて、僕らも食事に行こう。
朝食はやはりダイフク氏に合わせて、スープメインになった。
パンを煮込んだやつだから腹持ちも凄いぞ。
ほぼグラタンだ。
「美味い美味い」
「おいしー!」
「私用のはチーズを乗せないでくれたんだね。重くなくて助かるー」
「だうー」
「カルも食べたいのかい? もう少し大きくなったらだなあ……」
そうか、カルもじきに離乳食が見えてくるのだな。
リップル、おっぱいの出はいいらしいので、この辺は離乳に合わせて減っていくものだろうか。
なお、ダイフク氏はちょうど冷めたところで、カパッと一気に口に流し込み、喉越しを楽しんでいた。
「半固形状でぬるっと行く感じの喉越しでしたな! アーランで、そしてナザルさんと囲む最後の食事がこれで良かったですぞ! うまし!」
「一瞬の食事で美味しいというのが未だによく分からないが、気に入ってもらえたのなら良かった」
こうして食事を終え……。
船は今日発つということで、みんなで見送りに行くのだった。
僕はベビーカーを押しながら、のんびり歩く。
ポーターがパカポコと道を行き、背中にはコゲタが乗っている。
「ばじょうのコゲタさんも、えになりますねえ」
なんかアゲパンがうっとりしているな。
「コゲタ、私が歩き疲れたら馬の上変わってもらっていい?」
「いいよー!」
それでも、子育てで前より体力がついたリップルなのである。
港へ向かう半分の距離を歩き通すことができた。
「こうね、カズテスの島ではこっそり浮いて移動してたから楽だったんだけど、自分の足で歩くのは疲れるねー」
「手を抜いていたか……」
ダイフク氏はカエルっぽい姿なのに、ぴったんぴったん歩くのは全然苦ではないらしい。
ちなみにカエルのようにジャンプできるわけでもないとか。
「ハハハ、わしはカエルではないので」
ジャンプしない以外の生態がかなりカエル寄りなのになあ……。
そして港についた。
到着してしまった。
つまり、別れの時なのである。
船の外にはデュオス殿下が来ており、船のオーナーと握手していた。
「おお、来たかダイフク! 出るぞ!」
「ちょうどいい時間でしたな。では皆さん! お達者で! おさらばですぞ!」
ダイフク氏はびしっと敬礼っぽいポーズをすると、ぴったんぴったん桟橋を渡っていった。
船べりから、僕らに向き直る。
彼の他に、見知った船員たちがワーッと出てきた。
「ナザルさんとリップルさんがいるぜ!」「赤ちゃんもいる!」「ひえー、やっぱあの二人はデキてたんだなあ!」「ばっか、お前結婚式見に行かなかったのか?」「酒のんで倒れてたから……」
賑やかだ。
大変賑やかだ。
だが、そんな中でダイフク氏。
スウーッと大きく息を吸い込んだ。
彼のお腹がまさにカエルのように膨らむ。
いや、膨らんだ所に布地がちゃんとついてくるのが凄いな。
そういう布地かな?
「みなさーん!! これにてお別れですぞー!! 末永くお元気でー!!」
凄い声で、船員たちの大騒ぎを圧倒した。
離れているこっちまで、ビリビリ来る!
最後にとんでもない特技を披露していったな……!!
「元気でなー!」
「ばいばーい!」
「君の旅路に幸多からんことを!」
僕らに見送られつつ……。
船はゆっくりと岸を離れていくのだった。
長い事いた船は、今ついにサウザンド大陸へと帰っていくのだなあ。
僕らは船が見えなくなるまで、見送っていたのだった。
またいつか会えるといいな、友人よ。
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