俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
320 / 337
105・求めよ、精のつく食材

第320話 カキフライ生まれ落つ!

しおりを挟む
 たっぷりの牡蠣をゲットしたら、向かうところは……。

「そう、ギルボウの店だね!」

「えっ、ここ王国でも評判の高級店じゃないですか! ここがギルボウさんの店だったんですか!? あ、そう言えば同じところにある気がする……」

 前に一度だけ連れてきたツイン。
 その時の記憶と、今のギルボウの店のでかさが全く変わっているので、同じ店だと気付かなかったようだ。

「おーいギルボウ」

「おう! 久々だな! また何か持ってきたな? そろそろお前の美食の虫が疼きだす頃だと思っていたぜ」

 立派な口ひげを生やしたギルボウが二階にあるベランダから顔を出した。
 どうやらやる気にならなくてサボっていたらしい。
 オーナー、向いてないんじゃないか……?

 彼は猛スピードで降りてきて、僕らを出迎えた。
 そして筒の中いっぱいになっている牡蠣を見て、にやりと笑った。

「おいおい。アーランじゃ牡蠣はご禁制だぜ? 生はもちろん、焼いてもいかんことになってる」

「だから揚げるんだ」

「やっぱりな。法の抜け道だ」

 完全に想定していたらしい。
 招き入れられた僕らは、オーナー用の部屋までやって来た。
 ここはいうなれば……プライベートキッチン!!

 前回来たときよりも設備が充実している。
 本当に気に入った客のみを招き、ギルボウのスペシャルをごちそうする部屋だ。

 アーランの豪商や貴族たちの間では、憧れの部屋なんだとか。
 僕はその気になれば毎日来れるのだが?

「美食伯はギルボウさんの親友だからでしょう」

「そうかも知れない」

 あまり自分が特別な位置にいるということは、分からないものである。
 さて、サルシュが器用にナイフを使い、牡蠣の殻を剥いている。
 さっきは全部剥くと悪くなりそうだったので、ほとんどは殻付きで持ってきたのである。

 ここにギルボウが加わり、牡蠣はみるみる剥かれていった。
 おお、美味そう!!

 プルップルだ。
 だが、あの明らかに栄養がたっぷりありそうな海で育った牡蠣を、そのまま生で食するのは危なそうだ。
 やはり加熱。
 油による加熱が全てを解決する。

「僕は衣を用意しておく。粉と卵はここ?」

「おう。そこに冷蔵魔法が掛かった小型倉庫があるだろ」

「ツーテイカーから導入したのか!? 高かったろ!」

「おう、このレストランと同じ値段だぜ、その倉庫。だがいいんだ。俺の趣味だからな」

 生卵が収められている。
 これを粉と混ぜて衣を作り、パン粉も用意し……。

 大きな鍋に油を満たす。
 今回はサラダ油で良かろう。

 そのうち、オブリーオイルを使ったアヒージョを作ったり、あるいはミルクやチーズと一緒に煮込んでグラタンにしてやってもいい。
 カキフライ丼という手もあるな……。

 夢が広がる。

「あんたなかなか器用だな。リザードマンってのは指先の関節が一つ多いのか」

「人差し指だけが多いのです。逆に人間は関節が一つ足りないのによくそこまで器用に動かせますね」

 ギルボウとサルシュが和気あいあいと喋りながら牡蠣の殻を剥く。
 ツインは油番だ。

 彼は光を纏うことで熱によるダメージを遮断できるので、油の温度を直に測っている。

「ふむ……神殿でやっていた揚げ物なら、もうすこし熱いほうがいいか……」

 思わぬ才能……!!
 こうして牡蠣は無事に剥き終わり……。

 これを僕が次々に衣につけてパン粉をまぶし、いい感じの温度になった油の中にイン!!
 じゅわーっと揚がる。
 素晴らしい音だ。

 今回採ってきた牡蠣の数は、およそ三十くらい。
 この場にいるのは四人。
 一人七個ちょっと食べられるな……。

 こんがりきつね色に揚がったカキフライを、並べた。
 するとギルボウは、既に酸味のあるクリーミーなソースを作っているではないか。

「ギ、ギルボウ!! まさかお前、タルタルソースとカキフライが合うことを知っていたのか!!」

「いや? 俺はただ、フライで食べ応えがついた牡蠣を食うなら、さっぱりしたサワーソースをつけたほうがバランスがいいだろうと思っただけだぜ……?」

 天才だ、こいつ……!!
 僕は戦慄した。
 この世界で一番の天才が誰かと聞かれたら、間違いなくギルボウを指す。

 果たして、カキフライにサワーソースは大変にマッチした。

「うおっ! サクッとした歯ごたえの後に、ほっくりと火の通った実が……! 衣で牡蠣の旨味が逃げていないから、すごくジューシーでほろ苦くて……」

「おお、酸っぱいソースが合いますね。素晴らしい香気です。これは……生牡蠣に使われていたラムイという柑橘を使っていますね?」

「流石は嗅覚に優れるリザードマンだ。ご名答だぜ。それに卵とビネガーを組み合わせてとろみがつくまで撹拌したものだ。手軽に作れるから神殿でもぜひ試してくれ」

 全く新しいソースだろうに、レシピをさらっと教えてしまうギルボウ。
 彼にとって、こんなものは幾らでも作れるものなのだ。

 それはそうと、カキフライが美味い!!

「これは幾らでも行けてしまうな。美味い! 美味い! だが衣のお陰で嵩が増えているし、しっかり噛んで食べるから満腹中枢が刺激される。ほどよい数で収まりそうだな」

「おう。揚げ物にする利点はそこだよな。量を食べ過ぎる心配がない。牡蠣ってのは栄養豊富すぎて、つるつる食べまくってると栄養が溢れて体を壊すって聞いたぜ? うほー! サクサクでジューシーでうめえ!!」

 ギルボウと向き合ってカキフライをさくさく食べながら、ふと僕らの声が唱和するのだった。

「米が欲しいな……」



しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...