俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
336 / 337
110・かくして、油使いは伝説に

第336話 活版印刷女来たる!

しおりを挟む
 遥か北方の国から、使節が来るなんていう話になった。
 なんだなんだ。
 王国から僕に直々にそんな知らせが来たのだが……。

 なんの関係があるのか……。

「あっ!! エリオットがなんか言ってたな……」

 遥か北方とか、僕が行ったことないところじゃないか。
 で、わざわざこっちに来る?
 予測ができるというものである。

 果たして……。
 王宮までやって来たら、彼女はいたのだった。

 一見すると、黒髪で落ち着いた雰囲気の美女。
 真っ白な肌は、なるほど北方の出身っぽい。
 白いドレスは、それこの国で調達したやつだな。

「あ、はじめまして。エリオットから話は伺っております。おそらくあれですよね。活版印刷を開発なさった」

「あっ、はい……!」

 親しく話しかけたら、ちょっと緊張している風の彼女なのだった。

「カミラと申します、ナザル様」

「カミラさん改めてはじめまして。お互いさん付けで行きましょう!」

「うわーっコミュ強だ……」

「なんかおっしゃいました?」

「いえ、なんでも……」

 聞かなかったふりをしてあげよう……。

 彼女は活版印刷技術をモノにし、この国まで伝えにやって来たのだった。
 そして遥か北方の国というのは僕の馴染がないはずだ。

 その国は地下にあった。
 魔法王国の遺跡そのものを都市として利用していたのだ。

 で、彼女はその国に……転生した。
 前世で同人印刷屋だった彼女は、この世界でコミックイベント……コミベを開きたいという野望を持っていたのだという。
 ということで、そのエネルギーで邁進していたら活版印刷が実現していたと。

「ナザルさんが作られたお料理を口にしました。懐かしい……。あまりにも懐かしかったです……! あんなの日本の洋食じゃないですか……!」

「そうです! 食べ慣れたああ言うのがやっぱりいちばん美味い」

「こんな、食材が全く異なる異世界で再現してしまうなんて、とんでもない情熱……! 私にはとってもマネなんて出来ない……」

「いえいえ、僕だって夢中になって美味いもの探しをしていたらこうなっただけですし、偉大なる先人もおられたわけですから。ということで、僕が突っ走る内に世界の方も僕に力を貸してくれるようになり、こうして大陸中に美食が広がることになりました」

 美食と同時に生活習慣病も広がってるんですがね!
 そこはホント問題だよなあ。

「いやあ、もう、食だけで必死でしたから知的な文化の方はさっぱり手が回らなくて」

「あの、これ……」

「えっ、オフセット印刷!? すごすぎる……! 異世界でオフセット印刷を!?」

「様々な方が助けて下さいまして……。それで、この世界の叙事詩をマンガにして残すことができるように……」

「すごすぎる」

 こうしてお互いに大してリスペクトをぶつけ合うのだった。
 影からソロス王とエリオットが見ていたらしい。

 陛下がニコニコしながらやって来た。
 そしてメモし続けるエリオット。
 お前は一体なんなんだ。

「大陸を代表する二人の文化人が出会ったというところだな。アナスタス王国は我が国に文化を運んできてくれた。インサツというそうだ。その力を使い、我が国の文化となった美食もまたレシピを木版や粘土板以外にも残せるようになる。これは後世に伝えるべき偉大な文化だからな」

「ほうほう、なるほどなるほど。形になって残るのは大きいですよね」

「叙事詩やマンガだけではなく、日本のお料理レシピまで本にできるなんて……。とても光栄です」

「ふむ……二つの文化が出会い、広がっていく……。ノーザンス大陸はここから大いなる発展を遂げていくのだった……と」

 さらさらさらーっとメモ絶好調なエリオットなのだ。
 ここから、事態は急速に進展していった。

 活版印刷の装置を、カミラはアナスタス王国の使節たちとともに持ってきていたのだ。
 すぐさま装置は組み立てられた。

 そして彼女が持ってきたインクを用いて、紙に印刷されていくレシピ。
 記念すべき一番最初のレシピは……。

 スパゲッティ・カルボナーラである。
 16Pほどの小冊子だが、これは人類にとっての大きな一歩である!

 なお、アナスタス王国とアーランでは、使ってる文字がちょっと違った。
 うち用の活版を作らないとね……!

 幾つかのメニューが印刷され、それは使節たちがアナスタス王国へ持ち帰った。
 美食を存分に再現してくれたまえ。
 食材なんかも持ち帰ってもらったから、そっちで生産できるといいな。

 美食が真の意味で、世界に広がっていく。
 口伝ではなく、明確なレシピとして。

 カミラはしばらくこちらに滞在するということだった。
 僕は彼女をギルボウの店につれていき、うな重を食べさせた。

「うな重!? 異世界でうな重!? あっあっ、醤油がある! 味噌もあるの!? ひぃー」

 カミラが嬉しい悲鳴をあげているのだった。
 彼女は彼女で、大変な苦労やドラマがあってここまで辿り着いたんだろうなあ。

 世界は広い。
 色々なところで、みんな各々の人生を送っているのだ。
 しみじみそう思うのだった。

 さあ、たんとお食べ!
 肝吸いに白焼きもあるよ!
=============================
お読みいただきありがとうございます。
面白い、もっと先を読みたいと思われましたら、
★で応援いただけますと幸いです。

とある怪人油男の日常を描いていく、まったりした都市型スローライフものです。
いよいよ、終わりが近いようです。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき
ファンタジー
冴えない高校生女子、きら星はづき(配信ネーム)。 彼女は陰キャな自分を変えるため、今巷で話題のダンジョン配信をしようと思い立つ。 初配信の同接はわずか3人。 しかしその配信でゴボウを使ってゴブリンを撃退した切り抜き動画が作られ、はづきはSNSのトレンドに。 はづきのチャンネルの登録者数は増え、有名冒険配信会社の所属配信者と偶然コラボしたことで、さらにはづきの名前は知れ渡る。 ついには超有名配信者に言及されるほどにまで名前が広がるが、そこから逆恨みした超有名配信者のガチ恋勢により、あわやダンジョン内でアカウントBANに。 だが、そこから華麗に復活した姿が、今までで最高のバズりを引き起こす。 増え続ける登録者数と、留まる事を知らない同接の増加。 ついには、親しくなった有名会社の配信者の本格デビュー配信に呼ばれ、正式にコラボ。 トップ配信者への道をひた走ることになってしまったはづき。 そこへ、おバカな迷惑系アワチューバーが引き起こしたモンスタースタンピード、『ダンジョンハザード』がおそいかかり……。 これまで培ったコネと、大量の同接の力ではづきはこれを鎮圧することになる。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...