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第2章 あなたは暗殺者⁉

新生筆頭聖女のリナ②(SIDEリナ)

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「お話はやめて、結界に意識を集中して祈ってください、リナ様。そこに見えている魔物がこの国に入り込んでしまいますぞ!」
 大司教が焦り口調で発した。

「って、言ってもお姉様は寝てたんでしょう」

「リナ様……。ご自分を、あの偉大なジュディット様と同じに考えてはなりません。ジュディット様は、歴代類を見ない力をお持ちの聖女様ですぞ。『寝ても結界くらい余裕で張れる』というのが口癖でした。あのお方にとっては結界など造作もなかったのでしょう。その部屋から出てくる時は、いつも大あくびをしながら戻ってきていましたのに、ジュディット様はどこへ行ったのでしょうか……」

「はぁ⁉ 何なのよ、あの女……」
「何か仰いましたか?」
「いいえ。もう、集中できないから静かにして」

 聖女の祈り……なんてものは正直分からないけど、とりあえず、あの大きな黒い蜘蛛が入ってこないように、願うことにした。

 すると、その蜘蛛から突然炎が上がり、黒焦げに燃え尽きた。

「ウッソー。こんな遠隔地から魔物を退治できるなんて、リナって超凄い聖女なんじゃない! よぼよぼの大司教が姉を褒めていたけど。あの老いぼれの見る目がないだけじゃない! やっぱりリナの方が全てで勝っているのよ、うふふ」

 一時間後。入り口の扉が開き、大司教の老いぼれがひょこっと顔を出し祈祷室の中を窺がう。

「リナ様。とりあえず、今日の祈りはここまでで大丈夫でしょう。次は回復ポーションの作成を、いつものようにお願いいたしますね」

「えっ⁉ 無理よ。もう魔力が残っていないもの」

「はぁぁ~。そう言われましても、ポーションは王都から離れた遠隔地に定期的に届けているので、作っていただかないと困ります。——おや? リナ様? そのお顔はどうかされましたか?」

 よぼよぼの大司教が、リナの右頬を凝視する。

「何よ! なんか文句でも言いたいの!」

「いえ、リナ様の右頬に黒い痣がありますぞ。この祈祷室に入る前はなかったものですから、気になって」

 ま、まずい。
 結界を張ったせいだわ。魔力が枯渇して偽装魔法が解けているのか。

 とっさに右頬を手で覆い痣を隠す。顔のどこにあるかは、鏡を見なくても分かるもの。

 ちらりちらりと腕と胸元を見る。
 良かったぁ~。
 幸い今日は、胸も腕も出ていない服を着ていたわ。運がいいじゃない。

「やだわ恥ずかしい」
「それは……もしや……」

「祈祷室の中で、大きな蜘蛛に驚いて転んだのよ。ねえ、大司教のガラス玉を一つちょうだい」

「いえ。もう、あのガラス玉を安易に消費するわけにはいきませんから。今残っているガラス玉の使い方は、陛下と検討して使う予定ですので、お渡しするわけにはいきません。それならポーションの作成はやめましょう」

「ポーション以前の問題だわ。リナの魔力が枯渇してるのよ! これだと水道から水も出せないでしょう。どうしてくれるのよ。あのガラス玉を渡してくれなきゃ、明日、ここには来ないわよ」

「あっ、まあ、その程度にお使いになるなら、一個でひと月以上は使えますから、お渡しいたします。少々こちらでお待ちください」

「は? ここで——」

 大司教は言いかけたリナの話も聞かずに立ち去り、祈祷室の前でぽつんと取り残された。

 ゆっくりとした足取りで離れていく老いぼれの背中を睨む。

 もう! 老いぼれのくせに……恩着せがましいんだから。
 目の前で大司教のガラス玉をボンッと作ってくれればいいのに。
 そう思うリナを無視すると、もったいつけるように、どこかへ消えた。

 あの大司教、老いぼれのくせに偉そうだわ。
 早く引退して、魔力を結晶化する奇妙な力を次代に受け継げばいいのに。

 あっ、そうだ!
 リナが王太子妃になった暁には、引退させてやるわ。

 うん、うん、そうよ。もっとリナを立ててくれる人物に、大司教を代えた方がいいわね。

 それからしばらくして、足取りのおぼつかない大司教が、黒い大きなお盆にたった一つだけ、大司教のガラス玉乗せ、恭しく持ってきた。

 これだけ待たせて、たったの一つって……。気が利かない。

「遅かったわね」

「わたくしが想定していたよりもガラス玉の数が少なかったものですから……渡すべきか悩んでおりました。大変希少なものになります。くれぐれも、無駄に魔力をお使いにならないでくださいね」

「はいはい。分かったわよ」
 
 この老いぼれ。
 こうやって、ガラス玉の希少性を上げているんだろうと、適当に返事をしておいた。

◇◇◇

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