記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第2章 あなたは暗殺者⁉
喜ぶフィリベール王太子②
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陛下が目を吊り上げ、リナとの禊の儀に対し難癖をつけてきた。
だが、怯むことはない。
なんと言われようとも、私が妃に望んでいるのは、リナなのだ。
ジュディットを追放しリナを妃にする。これがあるべき姿である。陛下は激昂するが、なんの問題もなかろう。
無性に熱くなっている父を冷静に諭す。
「禊の儀を中止にする必要はありませんでしたから。公表している王太子の結婚式までは、もう三週間を切っていますし。このままリナと結婚するつもりです」
「は? お前はそれでいいのか?」
「ええ、当然です。リナを妃として迎えるので」
「お前はリナ殿と結婚……。そうか……。彼女が結界を張れるなら、とりあえず慌てることはないのか……」
「はい。リナは優秀な聖女ですから」
「馬鹿者! 勘違いするな! ジュディット様以上の聖女はいない。彼女を逃した損害は、はかりしれないからな」
「ジュディットごときに、そこまで加担しなくてもよろしいのではないですか、陛下?」
一国の王たるもの、令嬢ごときに取り乱すべきではない。落ち着くべきだと平坦な口調で発した。
すると陛下が私から顔を背け、再び窓の外を眺めた。
「お前がそういう扱いでいたから、ジュディット様は違う男の元へ行ってしまったんだろう。……この愚か者めが!」
は? どうして私が悪いのだ。意味が分からない。
あの女が使った黒魔術。その真実を知らない陛下が、何も分からず好き勝手に言ってくれる。
「ジュディットは以前から頻繁に他の男と関係があったんですよ。――ですから私はリナを妻に望んだだけです」
「どちらにしても今更、お前はジュディット様と結婚はできん。儂に一つの相談もせずに、お前はリナ殿と聖なる泉に入り、『禊の儀』まで交わしたんだ。ジュディット様から聞いて知っているだろう。あれは、ただの泉ではない。お前にとってリナ殿が唯一の存在になってしまったからな」
その言葉を聞き、ほっと胸をなでおろした。
聞き取りにくい程、低い声で話す陛下。そんな父がリナとの結婚を認めないと言い出すかと思えば、その逆だったからだ。
「リナとの結婚を認めてくださりありがとうございます。明日にでも、私とリナの結婚を、国中に知らせてもよろしいでしょうか?」
「ああ勝手にしろ。儂は知らん」
「はい、では私の名前で通知いたします」
「ふん。とりあえず事態は理解した。今後、大きく変化していくだろうが、今は考えられん。お前は、お前の仕事をとにかくこなせ」
「承知しましたが、私とリナの結婚を祝ってはくれないのですか?」
「もしそれが、本当にめでたい事なら結婚式の日に伝えてやる。今はこれ以上お前の顔を見たくない。早くこの場から消え去れ!」
陛下は何だってあの女に入れ揚げているんだ。まさかあの女、陛下にまで媚びを売っていたんじゃあるまいな。汚らわしい。
その事実はどうであれ、とことん腹立たしい女だ
◇◇◇
私とジュディットの婚約解消について、陛下が多少不満げにしていたが、まあ気にすることはない。
陛下は以前から、何かにつけてジュディットの肩を持つのだ。いつものことである。
結婚するのは、あくまでも私とリナだし。それを思えば、ふっと笑みが溢れる。
忌々しいジュディットとの婚約破棄が成立し、このまま最愛のリナと一緒になれるのだから、嬉しくて顔が緩んでくる。
政務に取りかかろうと自分の執務室へ来たが、気持ちがそわそわと落ち着かない。
あの扉から、リナが入ってくると思えば、浮かれすぎて仕事がはかどらない。
早くリナに会いたい。もうそろそろ彼女は来るだろうな。
私の横にいるだけで癒しになる。まさに存在自体が聖女そのもの。
いつも冷めた顔をしているジュディットとは大違いだからな。
リナの姿を想像して楽しんでいた時。従者の一人が部屋へやって来た。
感情の読めない無表情の事務官。能面のように張り付けた顔の男は、ジュディットの担当事務官だ。
荷台に書類を大量に乗せて運び込んできた。
何しに来たのかと見ていれば、書類の山を二つ、ドンッと大きな音を立てて机に並べた。
「何をしている」
「先ほど陛下から知らせを受けましたが、ジュディット様はしばらく王宮へお越しにならないとのことでしたので、これが本日分の政務となります。ちなみに右に置いたのが、昨日ジュディット様が行うはずだった決裁書類となりますので、できればそちらを先にお願いします」
その事務官は、うずたかく積まれた書類を早急に片付けろと言わんばかりに見やる。
「おい。何をふざけたことをしている。仕事の邪魔だ。余計な紙は持ってくるな」
「ふざけてはおりません。いつも、ジュディット様がこなしていた政務となります」
「は? そんなこと。聞いた覚えはない!」
「そうですか。ですが王太子殿下に不測の事態が起きた際に、王太子妃が政務をこなすことで、国政が滞らないための対策で、何年も前からされていましたけど」
「どうして私は知らされていないのだ!」
「かつての王族の中には、不測の事態と告げると王太子妃に政務を任せるのに同意いただけない歴史もありましたから。密かに政務をお任せするのが、ルダイラ王国の妃教育に伝わるしきたりです。殿下が存じないのは当然でしょう」
「妃教育……。この一山が一日分なのか……」
だが、怯むことはない。
なんと言われようとも、私が妃に望んでいるのは、リナなのだ。
ジュディットを追放しリナを妃にする。これがあるべき姿である。陛下は激昂するが、なんの問題もなかろう。
無性に熱くなっている父を冷静に諭す。
「禊の儀を中止にする必要はありませんでしたから。公表している王太子の結婚式までは、もう三週間を切っていますし。このままリナと結婚するつもりです」
「は? お前はそれでいいのか?」
「ええ、当然です。リナを妃として迎えるので」
「お前はリナ殿と結婚……。そうか……。彼女が結界を張れるなら、とりあえず慌てることはないのか……」
「はい。リナは優秀な聖女ですから」
「馬鹿者! 勘違いするな! ジュディット様以上の聖女はいない。彼女を逃した損害は、はかりしれないからな」
「ジュディットごときに、そこまで加担しなくてもよろしいのではないですか、陛下?」
一国の王たるもの、令嬢ごときに取り乱すべきではない。落ち着くべきだと平坦な口調で発した。
すると陛下が私から顔を背け、再び窓の外を眺めた。
「お前がそういう扱いでいたから、ジュディット様は違う男の元へ行ってしまったんだろう。……この愚か者めが!」
は? どうして私が悪いのだ。意味が分からない。
あの女が使った黒魔術。その真実を知らない陛下が、何も分からず好き勝手に言ってくれる。
「ジュディットは以前から頻繁に他の男と関係があったんですよ。――ですから私はリナを妻に望んだだけです」
「どちらにしても今更、お前はジュディット様と結婚はできん。儂に一つの相談もせずに、お前はリナ殿と聖なる泉に入り、『禊の儀』まで交わしたんだ。ジュディット様から聞いて知っているだろう。あれは、ただの泉ではない。お前にとってリナ殿が唯一の存在になってしまったからな」
その言葉を聞き、ほっと胸をなでおろした。
聞き取りにくい程、低い声で話す陛下。そんな父がリナとの結婚を認めないと言い出すかと思えば、その逆だったからだ。
「リナとの結婚を認めてくださりありがとうございます。明日にでも、私とリナの結婚を、国中に知らせてもよろしいでしょうか?」
「ああ勝手にしろ。儂は知らん」
「はい、では私の名前で通知いたします」
「ふん。とりあえず事態は理解した。今後、大きく変化していくだろうが、今は考えられん。お前は、お前の仕事をとにかくこなせ」
「承知しましたが、私とリナの結婚を祝ってはくれないのですか?」
「もしそれが、本当にめでたい事なら結婚式の日に伝えてやる。今はこれ以上お前の顔を見たくない。早くこの場から消え去れ!」
陛下は何だってあの女に入れ揚げているんだ。まさかあの女、陛下にまで媚びを売っていたんじゃあるまいな。汚らわしい。
その事実はどうであれ、とことん腹立たしい女だ
◇◇◇
私とジュディットの婚約解消について、陛下が多少不満げにしていたが、まあ気にすることはない。
陛下は以前から、何かにつけてジュディットの肩を持つのだ。いつものことである。
結婚するのは、あくまでも私とリナだし。それを思えば、ふっと笑みが溢れる。
忌々しいジュディットとの婚約破棄が成立し、このまま最愛のリナと一緒になれるのだから、嬉しくて顔が緩んでくる。
政務に取りかかろうと自分の執務室へ来たが、気持ちがそわそわと落ち着かない。
あの扉から、リナが入ってくると思えば、浮かれすぎて仕事がはかどらない。
早くリナに会いたい。もうそろそろ彼女は来るだろうな。
私の横にいるだけで癒しになる。まさに存在自体が聖女そのもの。
いつも冷めた顔をしているジュディットとは大違いだからな。
リナの姿を想像して楽しんでいた時。従者の一人が部屋へやって来た。
感情の読めない無表情の事務官。能面のように張り付けた顔の男は、ジュディットの担当事務官だ。
荷台に書類を大量に乗せて運び込んできた。
何しに来たのかと見ていれば、書類の山を二つ、ドンッと大きな音を立てて机に並べた。
「何をしている」
「先ほど陛下から知らせを受けましたが、ジュディット様はしばらく王宮へお越しにならないとのことでしたので、これが本日分の政務となります。ちなみに右に置いたのが、昨日ジュディット様が行うはずだった決裁書類となりますので、できればそちらを先にお願いします」
その事務官は、うずたかく積まれた書類を早急に片付けろと言わんばかりに見やる。
「おい。何をふざけたことをしている。仕事の邪魔だ。余計な紙は持ってくるな」
「ふざけてはおりません。いつも、ジュディット様がこなしていた政務となります」
「は? そんなこと。聞いた覚えはない!」
「そうですか。ですが王太子殿下に不測の事態が起きた際に、王太子妃が政務をこなすことで、国政が滞らないための対策で、何年も前からされていましたけど」
「どうして私は知らされていないのだ!」
「かつての王族の中には、不測の事態と告げると王太子妃に政務を任せるのに同意いただけない歴史もありましたから。密かに政務をお任せするのが、ルダイラ王国の妃教育に伝わるしきたりです。殿下が存じないのは当然でしょう」
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