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第2章 あなたは暗殺者⁉

横恋慕の気配②

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 そもそも兵士用の寄宿舎が、すぐ横にあるにもかかわらず、アンドレはどうして、この立派な邸宅で暮らしているのだろうか?

 この建物を使わせてもらっていることに、改めて疑問が湧く。
 カステン辺境伯とどういう関係なんだろう?

 これを聞き出せば、また、図々しいと怒られるかもしれない。だけど気になってしょうがない。

 お怒られたらその時だと割り切り、勇気を持って、訊ねてみることにした。

「アンドレとカステン辺境伯は、どういう関係なの? 寝室が四部屋もある大きな邸宅を、普通、無関係の人に任せきりにしないでしょう」

「はは、気になりますよね」
「まあね」
「イヴァン卿は母方の遠い親戚に当たるんですよ。この話は、いつもイヴァン卿自身が軍のみんなに聞かせているから、そのうち耳に入ることでしょう」

「そう」と、納得したような、しないような返答をする。

「買った服はここに置いておくので、中を確認してくださいね」

 扉からすぐの壁際に置こうとしたアンドレは、箱を持った腕を伸ばす。

「ああ~良かったわ。これで、明日から着る服に悩まなくて済むわね」
 それに、今晩のパジャマも。

「ふふっ。どうせ、仕事中は作業着を羽織るんですから、中に何を着ても大差はないでしょう。ジュディが見つけた僕のシャツでいいですよ」

 アンドレの言いたいことは分かる。
 調理場では白い袖のある羽織りものを着ている。スモックというらしい。
 服は全部隠れて見えないから、中に何を着ていても確かに関係ない。
 でも明日は外出予定だし、違う。

「一応アンドレは上司だから報告しておくわね。明日朝食を終えてから、第一部隊のみんなと、魔猪の子どもを探しに行くのよ」

「え? どうして勝手なことを決めているんですか!」

「ちゃんとエレーナさんの承諾もあるから大丈夫よ。だから自分の服が届いてよかったわ」

「あの服で……」
 放心するアンドレが、床に置きかけていた段ボール箱を、ドンと音を立てて落とした。

「どうしたの? 大丈夫?」
「なぜ、そんなことになっているんですか? 僕は聞いていないですよ」

「だから、今、言ったじゃない」

「いや、そうではなくて……。新しい服って……。肩の出た服や透けた服を着ていくつもりですか?」

「ふふ、可愛いわよね」

「お、お止めなさい。魔猪を探すのに新しい服を着ていっては汚れるから……僕のズボンとシャツにした方がいいですよ」

 諭すように言われた。
 確かにアンドレの言うとおりだ。新調したてのワンピースで畑へ行くのは気が引ける。

「あ、それもそうね。じゃあ、隊長と買い物へ行く時に、それを着るか」

「買い物まで一緒に行くんですか――……。まあ、僕がとやかく言うことではないですが……」

「ふふっ。熱烈に誘われちゃったのよ、デートみたいに」
 懇願されたことを、冗談めかして告げた。

「何をふざけたことを言っているんですか? 朝は早いんですし、大概にして早く寝るんですよ」

 急に視線の合わなくなった彼が、うつむきがちに背中を向けた。

 そして、何やら一人で考えごとを始めたアンドレは、そのまま、とぼとぼと元気なさげに立ち去っていった。

「はい?」どうしたというんだ?

 アンドレの怒る地雷と元気のなくなるスイッチが、さっぱり分からないわね。
 そう思いながら、段ボール箱をワクワクしながら開ける。

 けれど「あれ? おかしいな?」と箱の中身を全て引っ張り出す。
 ……嘘ぉぉ。待ちかねたパジャマが入っていないではないか。
 しまった! 下着に気を取られ、パジャマを買い忘れていたんだ。

 げんなりするわたしは、致し方なくアンドレのシャツを着て眠る羽目になった。

◇◇◇
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