記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第5章 離さない
どうして否定しない⁉②
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カステン辺境伯からアンドレの話を聞いてからというもの、なんのやる気も起きず、とにかくベランダで一日中過ごしていた。
たまに吹く風は心地よいが、気分は晴れない。
目を閉じたままアンドレのポケットで見つけた指輪のことを考え続け、一体何時間が過ぎたのだろう。気づけば外が暗くなってきた。
そんな風に思っていると突然、大きな窓がガラッガラッと音を立てて開く。ハッと音の先を見ると真面目な顔のアンドレではないか! まだまだ心の整理はできてないのに戻ってきたのか!
「ジュディ、独りで寂しくなかったですか?」
そう言いながら、アンドレが駆け寄ってきた。
あっ、あっ、あっっと焦るせいで、どの態度が正解か分からず、あわあわする。
カステン辺境伯がやたらと夜伽の話をしていたせいで、いざ、彼の顔を見ると、破廉恥な想像をしてしまいドキドキするじゃない。
そんなわたしの気持ちも知らず、瞳の奥を覗き込み、人の気持ちを探ろうとする彼にイラッとくる。な、何よ……。
すると、彼はすかさずテーブルの向こう側の椅子をわたしの真横に運んできて腰掛けた。
だから距離が近いから!
何をする気だと、思わず睨んでしまったが、それでも彼は表情を変えず穏やかなままだ。
離れていかないから用心に越したことはない。
「わたしのことをいくつだと思っているの? アンドレより年上なのよ。別に寂しくなかったわ」
顎を上げふんと彼に言い切った。
だけど、今の一言は、言ってはいけないことだった……。
それに気づいたのは、彼の表情がほんの少しだけ曇ったからだ。
実際は、アンドレの方がわたしより一つ年上だ。フィリベールと同じ年なんだもの……。
それを知っている数少ない人物なのに、年下だと口走ってしまった。
ごめんなさいと謝ろうと思ったところで、彼が優しい笑顔を向けてきた。
「僕がいなくて寂しかったと言って欲しかったのですが、なかなか上手くいきませんね」
「別にアンドレのことなんか……」
「どうしたんですか、暗い顔をして。別に気にしなくていいですよ」
「……ぁ」
「ジュディの体調がよくないと聞きました。今日の夕飯はスープと果物を部屋に運んでもらうことにしましたので、もうすぐ届きます。一緒に食べましょう」
「う、うん……」
結局何も言えずに終わったため、浮かない顔で答えた。
「今朝、魔法契約を切る話をしていましたが、体調が戻らないなら止めておきますか?」
「いいえ、大丈夫よ」
「無理しなくていいんですよ」
「体調は問題ないからいいのよ……」
問題は、せわしなく揺れるわたしの感情だし。
アンドレが好きなのか、よく分からない。こんな感情のまま彼に優しくしてもらってよいのかしら。そう思ってしまう。
それに、彼が触れ回っているのだろう。やたらめったら出てくる夜伽に応えられる気がしない。
「ふ~ん、そうですか。じゃあ湯あみは僕が一緒に入って手伝いますよ。その後、ジュディが眠ったら僕が魔法契約を解呪しましょう」
真面目な顔で言われた。
ちょっと待ちなさいよ! アンドレとわたしが一緒にお風呂に入るのは、あり得ない。
それは早すぎる。いや、そもそも一緒には入らないし。
はッ! もしかして冗談なのか? 楽しくノリ突っ込みをすればいいんだろうか?
……アンドレがわたしを好きで、指輪やら夜伽やら考え出して、とんでもなく頭が混乱しているときに、高度な冗談をぶっこんでこないでよね。返せないからッ!
「百面相をしてどうしたんですか? そんなに気にしなくても、ジュディの裸は見ていますし、今更遠慮はいりませんよ」
「はい? ちょ、ちょっと! 人が寝ている時に勝手に見たの?」
「ふふ、違いますよ。ジュディが僕の家に転がり込んできて早々、シャワーのお湯が出ないと騒いでいたでしょう」
「ああ~っ! あの時、やっぱりアンドレは見ていたんじゃない!」
「それを僕が怒られるのはおかしいですよ。堂々と見せていたのはジュディですからね」
「もう、いいわよ。アンドレに湯あみを手伝ってもらったら、何を言われるか分かったもんじゃないわ」
「残念ですね、隅々まで洗ってあげるのに」
「もう馬鹿! 何を言っているのよ、クリスタに聞かれているでしょう。誤解されたらどうするのよ!」
大きな窓ガラス越し。そのすぐ手前には、窓を開けようか開けまいか迷っているクリスタの姿がある。
配膳用のカートの取っ手を握る彼女は、こちらを見て、くすくすと微笑んでいるではないか。
そのうえ、話題が自分になったのを察知して、遠慮なく窓ガラスを開けて入ってきた。
――ほらね、完璧に会話が聞こえているじゃない。こうして誤解が広がっていくのよ。
「ふふっ、ジュディット様のご機嫌が悪いから、今日は一緒にお風呂に入らないことになったんですか?」
「いいえ。違うわよ」
「それでは、一緒に入りますか?」
アンドレがにっこりと笑って、禄でもない提案を差し込んできた。
「あ~、もう。話がややこしくなるから、アンドレは黙っててちょうだい」
今の「違うわよ」の否定は、そっちじゃないでしょう。明らかに!
そもそもの話。元々、一緒にお風呂に入る関係じゃないんだから。
アンドレってばそれを分かって、わざとやっているでしょう。
馬鹿……。何を言い出すのよ。
自分の容量オーバーな会話をしたせいで、耳までじんじんと熱い。
動揺しまくりのわたしとは裏腹に、にこやかなクリスタは、軽めの夕食を乗せたカートを押しテーブルの脇までやってくる。
=================
お読みいただきありがとうございます。
作者の瑞貴です!
ここのストーリーは、次の話と対になっております。
投稿まで、今しばらくお待ちください。
たまに吹く風は心地よいが、気分は晴れない。
目を閉じたままアンドレのポケットで見つけた指輪のことを考え続け、一体何時間が過ぎたのだろう。気づけば外が暗くなってきた。
そんな風に思っていると突然、大きな窓がガラッガラッと音を立てて開く。ハッと音の先を見ると真面目な顔のアンドレではないか! まだまだ心の整理はできてないのに戻ってきたのか!
「ジュディ、独りで寂しくなかったですか?」
そう言いながら、アンドレが駆け寄ってきた。
あっ、あっ、あっっと焦るせいで、どの態度が正解か分からず、あわあわする。
カステン辺境伯がやたらと夜伽の話をしていたせいで、いざ、彼の顔を見ると、破廉恥な想像をしてしまいドキドキするじゃない。
そんなわたしの気持ちも知らず、瞳の奥を覗き込み、人の気持ちを探ろうとする彼にイラッとくる。な、何よ……。
すると、彼はすかさずテーブルの向こう側の椅子をわたしの真横に運んできて腰掛けた。
だから距離が近いから!
何をする気だと、思わず睨んでしまったが、それでも彼は表情を変えず穏やかなままだ。
離れていかないから用心に越したことはない。
「わたしのことをいくつだと思っているの? アンドレより年上なのよ。別に寂しくなかったわ」
顎を上げふんと彼に言い切った。
だけど、今の一言は、言ってはいけないことだった……。
それに気づいたのは、彼の表情がほんの少しだけ曇ったからだ。
実際は、アンドレの方がわたしより一つ年上だ。フィリベールと同じ年なんだもの……。
それを知っている数少ない人物なのに、年下だと口走ってしまった。
ごめんなさいと謝ろうと思ったところで、彼が優しい笑顔を向けてきた。
「僕がいなくて寂しかったと言って欲しかったのですが、なかなか上手くいきませんね」
「別にアンドレのことなんか……」
「どうしたんですか、暗い顔をして。別に気にしなくていいですよ」
「……ぁ」
「ジュディの体調がよくないと聞きました。今日の夕飯はスープと果物を部屋に運んでもらうことにしましたので、もうすぐ届きます。一緒に食べましょう」
「う、うん……」
結局何も言えずに終わったため、浮かない顔で答えた。
「今朝、魔法契約を切る話をしていましたが、体調が戻らないなら止めておきますか?」
「いいえ、大丈夫よ」
「無理しなくていいんですよ」
「体調は問題ないからいいのよ……」
問題は、せわしなく揺れるわたしの感情だし。
アンドレが好きなのか、よく分からない。こんな感情のまま彼に優しくしてもらってよいのかしら。そう思ってしまう。
それに、彼が触れ回っているのだろう。やたらめったら出てくる夜伽に応えられる気がしない。
「ふ~ん、そうですか。じゃあ湯あみは僕が一緒に入って手伝いますよ。その後、ジュディが眠ったら僕が魔法契約を解呪しましょう」
真面目な顔で言われた。
ちょっと待ちなさいよ! アンドレとわたしが一緒にお風呂に入るのは、あり得ない。
それは早すぎる。いや、そもそも一緒には入らないし。
はッ! もしかして冗談なのか? 楽しくノリ突っ込みをすればいいんだろうか?
……アンドレがわたしを好きで、指輪やら夜伽やら考え出して、とんでもなく頭が混乱しているときに、高度な冗談をぶっこんでこないでよね。返せないからッ!
「百面相をしてどうしたんですか? そんなに気にしなくても、ジュディの裸は見ていますし、今更遠慮はいりませんよ」
「はい? ちょ、ちょっと! 人が寝ている時に勝手に見たの?」
「ふふ、違いますよ。ジュディが僕の家に転がり込んできて早々、シャワーのお湯が出ないと騒いでいたでしょう」
「ああ~っ! あの時、やっぱりアンドレは見ていたんじゃない!」
「それを僕が怒られるのはおかしいですよ。堂々と見せていたのはジュディですからね」
「もう、いいわよ。アンドレに湯あみを手伝ってもらったら、何を言われるか分かったもんじゃないわ」
「残念ですね、隅々まで洗ってあげるのに」
「もう馬鹿! 何を言っているのよ、クリスタに聞かれているでしょう。誤解されたらどうするのよ!」
大きな窓ガラス越し。そのすぐ手前には、窓を開けようか開けまいか迷っているクリスタの姿がある。
配膳用のカートの取っ手を握る彼女は、こちらを見て、くすくすと微笑んでいるではないか。
そのうえ、話題が自分になったのを察知して、遠慮なく窓ガラスを開けて入ってきた。
――ほらね、完璧に会話が聞こえているじゃない。こうして誤解が広がっていくのよ。
「ふふっ、ジュディット様のご機嫌が悪いから、今日は一緒にお風呂に入らないことになったんですか?」
「いいえ。違うわよ」
「それでは、一緒に入りますか?」
アンドレがにっこりと笑って、禄でもない提案を差し込んできた。
「あ~、もう。話がややこしくなるから、アンドレは黙っててちょうだい」
今の「違うわよ」の否定は、そっちじゃないでしょう。明らかに!
そもそもの話。元々、一緒にお風呂に入る関係じゃないんだから。
アンドレってばそれを分かって、わざとやっているでしょう。
馬鹿……。何を言い出すのよ。
自分の容量オーバーな会話をしたせいで、耳までじんじんと熱い。
動揺しまくりのわたしとは裏腹に、にこやかなクリスタは、軽めの夕食を乗せたカートを押しテーブルの脇までやってくる。
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お読みいただきありがとうございます。
作者の瑞貴です!
ここのストーリーは、次の話と対になっております。
投稿まで、今しばらくお待ちください。
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