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第1章 別世界のふたり
1-6 17歳の舞踏会②
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エドワードは、第1王女のレベッカと踊る前に、15歳の第3王女と、16歳の第2王女と踊っていた。
そのせいで、もうすっかりダンスに嫌気が差し、表情がさえなかった。
疲労のにじむ彼の顔を見て、レベッカが頬笑みを向ける。
「あの子たちは、まだ子どもだから、エドワードが相手をするのは大変だったでしょう」
そう言うレベッカは18歳で、エドワードは23歳だ。
「いや、そんなことはありませんが……、堅苦しいダンスが少々苦手でして」
「まあ、それならわたしとだけ踊りたいって父へ伝えれば良かったのに。わたしだって、エドワードなら大歓迎よ」
「ははは、ありがたいお言葉です……」
エドワードの本心を知らないレベッカ王女は、彼は自分に気があると勘違いをしている。
控え目な彼が、自分への婚約の申し出を、ためらっていると考えていたのだ。
これまでの舞踏会で、エドワードがダンスを踊っていたのは自分だけだと知っていた。
そのせいで、レベッカ王女は存分に誤解している。
レベッカ王女とだけ踊っていた本当の理由。
それは、エドワードは陛下とスペンサー侯爵家の当主から王女とのダンスを命じられ、その気もないのに声を掛ける羽目になっていただけ。
けれど、その事情を王女は知らない。
エドワードの本音は、王女と話すのもめんどくさい。といったところ。
エドワードは王女である自分にダンスを申し込み、1曲踊った後は他の誰とも踊らないのだ。
端正な顔立ちのエドワードは、数多の令嬢たちからダンスの申し出を受けている。
それを全て断る。それほどまで、自分を立てていることに快くしていた。
そして、いつまでも煮え切らないエドワードとの結婚を後押しするため、自分から積極的なアピールを始めてきたのだ。
「ふふっ。そう言うと思ったから、わたしとエドワードが結婚するなら、スペンサー侯爵家を公爵家にしてと、父へ頼んでみたの。父からはお許しが出たわ」
それを聞いてエドワードは、じわりと額に汗がにじんだ。
「いや、でも我が家は」
「大丈夫よ、スペンサー侯爵家が、ご両親と一緒に暮らしていることでしょう。それなら、わたしの父が王家所有の、王宮から近い土地を譲ってくれるから。新居を建てれば、わたしも義母に気兼ねなくお茶会が開催できるし、いいと思わない?」
王女からのあり得ない提案が、エドワードの顔をピクピクと引きつらせている。
「俺には過分な条件が次々と用意されて、少し気が引けてしまいます。何より、俺ではレベッカ王女殿下の夫としては、務まらないと思いますよ」
「わたしはわがままだから、エドワードみたいに、落ち着いて、包容力のある人が良いのよ。あなたは優しいから、何でもわたしのお願いを聞いてくれるでしょう」
「いや、俺は王女が思っている人間とは違うだろうから、ご期待に沿えなくて申し訳ない……」
「ふふっ。すぐに謙遜するのね。エドワードからの婚約の申し出、できるだけ早く頂戴ね」
(俺が、落ち着いている? 包容力? 優しい? おいおい、そんな人間じゃないだろう。謙遜じゃねーよ。そう感じているなら、俺が精いっぱい、王女に気を遣っているからだ)
エドワードの表情はこわばっているが、周囲の人間からは「エドワードが王女に照れている」ぐらいに見えてしまう。
黒髪に黒い瞳の見目麗しい、体躯の良いエドワードが、令嬢たちの視線を一身に集めていた。
陛下から、王女3人と踊って欲しいと懇願されていたため、エドワードは致し方なく、その3人目とのダンスをたった今終えたばかり。彼は立ち尽くして、げんなりしていた。
婚約者のいない侯爵家の嫡男へ、令嬢たちが熱い視線を送っている。だが、当のエドワードは、それに全く興味がなかった。
言い寄ってくる令嬢の中には、モーガンのように、この舞踏会だけで振る舞われるリンゴの酒を、是非にと差し出す者も多かった。
それを、しきりに断り続けるエドワード。
(王家主催の舞踏会で、令嬢たちが食いつくような珍しい酒を振る舞うなよ……。次から次へとやって来て、迷惑だっ)
内心は相当に怒っているエドワード。
そのエドワードへ、陛下の側近であるブラウン公爵が、周囲の様子をうかがいながら声を掛けてきた。
「エドワード様、陛下がお呼びになっています」
エドワードは、その側近へ不愉快だと言わんばかりに、眉間にしわを寄せた顔を向ける。
「それは、スペンサー侯爵家の俺か? それとも、もうひとり、としてか?」
「陛下が『エドワード様』と呼ばれていたので、もうひとりとして、だと思います」
「何が起きてんだか知らんが、王宮の仕事中じゃないからな。後で正規の報酬を払えと伝えておけよ」
ブラウン公爵へ、強い口調で言ったエドワード。
(ったく、あのじじぃ。俺を無理やり娘と躍らせた後は、これか……。今は仕事の時間じゃないだろう)
不承不承のエドワードは、おもむろに両手にはめていた手袋を脱ぎながら、陛下の元へ向かっていった。
全く住む世界の違うルイーズとエドワードが、モーガンの企てによって出会うことになるとは、このときの会場にいる誰もが知らなかった。
そのせいで、もうすっかりダンスに嫌気が差し、表情がさえなかった。
疲労のにじむ彼の顔を見て、レベッカが頬笑みを向ける。
「あの子たちは、まだ子どもだから、エドワードが相手をするのは大変だったでしょう」
そう言うレベッカは18歳で、エドワードは23歳だ。
「いや、そんなことはありませんが……、堅苦しいダンスが少々苦手でして」
「まあ、それならわたしとだけ踊りたいって父へ伝えれば良かったのに。わたしだって、エドワードなら大歓迎よ」
「ははは、ありがたいお言葉です……」
エドワードの本心を知らないレベッカ王女は、彼は自分に気があると勘違いをしている。
控え目な彼が、自分への婚約の申し出を、ためらっていると考えていたのだ。
これまでの舞踏会で、エドワードがダンスを踊っていたのは自分だけだと知っていた。
そのせいで、レベッカ王女は存分に誤解している。
レベッカ王女とだけ踊っていた本当の理由。
それは、エドワードは陛下とスペンサー侯爵家の当主から王女とのダンスを命じられ、その気もないのに声を掛ける羽目になっていただけ。
けれど、その事情を王女は知らない。
エドワードの本音は、王女と話すのもめんどくさい。といったところ。
エドワードは王女である自分にダンスを申し込み、1曲踊った後は他の誰とも踊らないのだ。
端正な顔立ちのエドワードは、数多の令嬢たちからダンスの申し出を受けている。
それを全て断る。それほどまで、自分を立てていることに快くしていた。
そして、いつまでも煮え切らないエドワードとの結婚を後押しするため、自分から積極的なアピールを始めてきたのだ。
「ふふっ。そう言うと思ったから、わたしとエドワードが結婚するなら、スペンサー侯爵家を公爵家にしてと、父へ頼んでみたの。父からはお許しが出たわ」
それを聞いてエドワードは、じわりと額に汗がにじんだ。
「いや、でも我が家は」
「大丈夫よ、スペンサー侯爵家が、ご両親と一緒に暮らしていることでしょう。それなら、わたしの父が王家所有の、王宮から近い土地を譲ってくれるから。新居を建てれば、わたしも義母に気兼ねなくお茶会が開催できるし、いいと思わない?」
王女からのあり得ない提案が、エドワードの顔をピクピクと引きつらせている。
「俺には過分な条件が次々と用意されて、少し気が引けてしまいます。何より、俺ではレベッカ王女殿下の夫としては、務まらないと思いますよ」
「わたしはわがままだから、エドワードみたいに、落ち着いて、包容力のある人が良いのよ。あなたは優しいから、何でもわたしのお願いを聞いてくれるでしょう」
「いや、俺は王女が思っている人間とは違うだろうから、ご期待に沿えなくて申し訳ない……」
「ふふっ。すぐに謙遜するのね。エドワードからの婚約の申し出、できるだけ早く頂戴ね」
(俺が、落ち着いている? 包容力? 優しい? おいおい、そんな人間じゃないだろう。謙遜じゃねーよ。そう感じているなら、俺が精いっぱい、王女に気を遣っているからだ)
エドワードの表情はこわばっているが、周囲の人間からは「エドワードが王女に照れている」ぐらいに見えてしまう。
黒髪に黒い瞳の見目麗しい、体躯の良いエドワードが、令嬢たちの視線を一身に集めていた。
陛下から、王女3人と踊って欲しいと懇願されていたため、エドワードは致し方なく、その3人目とのダンスをたった今終えたばかり。彼は立ち尽くして、げんなりしていた。
婚約者のいない侯爵家の嫡男へ、令嬢たちが熱い視線を送っている。だが、当のエドワードは、それに全く興味がなかった。
言い寄ってくる令嬢の中には、モーガンのように、この舞踏会だけで振る舞われるリンゴの酒を、是非にと差し出す者も多かった。
それを、しきりに断り続けるエドワード。
(王家主催の舞踏会で、令嬢たちが食いつくような珍しい酒を振る舞うなよ……。次から次へとやって来て、迷惑だっ)
内心は相当に怒っているエドワード。
そのエドワードへ、陛下の側近であるブラウン公爵が、周囲の様子をうかがいながら声を掛けてきた。
「エドワード様、陛下がお呼びになっています」
エドワードは、その側近へ不愉快だと言わんばかりに、眉間にしわを寄せた顔を向ける。
「それは、スペンサー侯爵家の俺か? それとも、もうひとり、としてか?」
「陛下が『エドワード様』と呼ばれていたので、もうひとりとして、だと思います」
「何が起きてんだか知らんが、王宮の仕事中じゃないからな。後で正規の報酬を払えと伝えておけよ」
ブラウン公爵へ、強い口調で言ったエドワード。
(ったく、あのじじぃ。俺を無理やり娘と躍らせた後は、これか……。今は仕事の時間じゃないだろう)
不承不承のエドワードは、おもむろに両手にはめていた手袋を脱ぎながら、陛下の元へ向かっていった。
全く住む世界の違うルイーズとエドワードが、モーガンの企てによって出会うことになるとは、このときの会場にいる誰もが知らなかった。
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