【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第1章 別世界のふたり

1-10 ルイーズと弟アラン

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 他の家族の食事とは、別メニューが用意されているルイーズは、パン1個とスープだけを食べ終え、自分の部屋にこもっていた。
 そのとき、アランが訪ねてきた。 

「姉上、ここが分からないんですが、教えてくれませんか?」
 弟のアランから、勉強を教えて欲しいと言われて、考え込むルイーズは、しばらく固まっていた。

(アランは、もうこんな勉強をしているのか……。もうそろそろ、わたしでは、本当に教えられないわね。優秀なこの子は、しっかり勉強して、立派にフォスター伯爵家を立て直してもらわないと)

「姉上?」

 弟の声にハッとする。弟が持ってきたノートに、ルイーズは質問されたことをサラサラと書き終えた。
「はい、答えを書いてみたわよ。アランは、本当にしっかりしているわね。偉い偉い」
 そう言って、弟の頭をなでるルイーズは、弟がかわいくてたまらないのだ。

 そのアランも、何かを考え込んでいたルイーズを心配する。

「姉上はおなかが空いていないのですか? いつも僕たちとは違うのを食べているから」
「ふふっ、ほら、わたしって細いから。あんまり食べなくても動けるようになっているのよ。気にしなくても大丈夫よ」

「そうですか……。そうだ、僕のワイシャツのボタンが取れてしまって、付けてくれませんか? メイドは、ミラベル姉上に何か頼まれたようで、忙しいみたいで」

 そう言われて、ルイーズがアランを見ると、弟が今着ている白いワイシャツは、上から2番目のボタンが取れている。
 ボタンを握り困った顔をしているアラン。
 この屋敷には、メイドが2人いたけれど、母と姉の専従状態である。
 今は姉の買い物に付き合わされ、不在になっていた。
 頼まれたルイーズは、何かひらめいた顔をする。


「ふふっ、いいわよ。ついでに、くまの絵でも刺繍ししゅうしてあげるわよ」
「姉上は僕をいくつだと思っているんですか……。シャツに、かわいいくまの模様を入れてもらっても、恥ずかしいですよ」

「そうかしら、いいと思うけど。まあいいわ。シャツを脱いでくれたら、すぐに付けてあげるわよ」
「助かります」と、すぐさま、着ていたワイシャツを脱いで姉に渡すアラン。

 ルイーズは以前、メイドから裁縫道具を借りていたが、それを返さずにそのまま部屋に置いてあったのだ。
 メイドたちから何も言われないところをみると、裁縫箱はおそらく他にもあるのだろう。
 そう思ったルイーズは、ちゃっかりと彼女の部屋にそれを拝借していた。
 
 ルイーズは、弟から受け取ったシャツに、手際よくボタンを付けた。
 弟からすると、見事な早業だったのだろう、自分の想像以上に驚かれる。

「ありがとうございます、助かりました。それにしても、姉上は随分器用ですね、こんなにあっという間にできるなんて」
「わたしって、必要に迫られれば、うまくなるのよ。ふふっ。きっと、剣技もうまくなるわね」
「そうだと良いですね。騎士の訓練、頑張ってください」
 素直な弟は、ルイーズに信頼を寄せて慕っている。今も、姉へ心からの応援を送った。
 食事中に、大人の会話に口を出せないアラン。
 彼は、ただ静かに、この家の事情を見守っていた。

「本当にいい子に育ってうれしいわ」
 
 弟のアランにとっては、もう1人の姉ミラベルは、ひどく冷たかった。
 アランの物心が付いたときには、ミラベルは、弟を転ばせようとして足を掛けたり、髪を引っ張ったり意地悪をしていたのだから。
 10歳のアランは、そんな長女の気持ちがよく分からず、近づかないようにしている。

 長女ミラベルは、弟のアランに、順風満帆な人生設計を崩されたと思い、ひがんでいたのだけど。


 あしたからの騎士訓練に希望を抱きながら、ルイーズは、弟の頭をなでている。
 
 エドワードとの出会いで世界が変わり始めるとは、夢にも思っていないルイーズ。
 その彼女の18歳の誕生日まで、残すところ、……あと半年。
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