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第2章 いがみ合うふたり
2-2 騎士訓練初日②
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反動を付けて、重い剣を持ち上げようとしたルイーズは、その勢いで尻もちをついた。
そのとき、自分が持っていた剣が、あわや、ルイーズの体目掛けて落下してくる。
それに気付き、剣が自分に刺さると覚悟し身を固くした。
けれど、エドワードが咄嗟に、皮の手袋をはめた手で、剣をつかんだ。
それを見てルイーズは、助かったとホッと力が抜け、にヘヘと苦笑いをして誤魔化した。
「馬鹿っ、危ないだろう。何やっているんだ、お前っ!」
焦るエドワードとは裏腹に、のんきなルイーズは、あっけらかんと返答する。
「ありがとう、エドワードのお陰で助かったわ。初日から、救護室で回復魔法師様のお世話になるところだった」
「お前な、回復魔法師でも治せるのと、そうじゃないのがあるんだ。そもそも救護室へ運び込む前に死んだら終わりだ。今の剣が真っすぐお前に落ちていれば、心臓に刺さってあっという間に死んでいたぞ。この訓練は遊びじゃないんだ、甘く見るな」
「そうなんだ。エドワードのお陰でわたしは命拾いしたのね、ありがとう。それにしても、エドワードは、随分と回復魔法師様に詳しいけど、会ったことがあるの?」
「…………あるよ」
まさか、エドワードから至上者である回復魔法師に会ったことがあると、返ってくるとは思わず、ルイーズは一気にテンションが上がる。
「すごいわ、カッコよかった? って、言っても、3人とも顔を隠しているんだっけ。偉い方たちなのに、素性を晒さないなんて、きっと、色々大変なんだろうなぁ。そう考えると、わたしの悩みなんて大したことはないわね。さあ、頑張るかぁ」
いけしゃあしゃあと話すルイーズは、今の危機をなかったことにしている。
それに、いら立つのはエドワードだ。
「はぁぁーっ、お前は、少しも悩んでいないだろう! その足りない頭で考えたって分かるだろう、死にかけたお前は、この訓練から立ち去るのが賢明だってな! 1時間やって、まだ膝の高さまでしか持ち上げられていないだろう。お前の体が、そもそも騎士には向いていない。赤の他人の心配をしていないで、お前は迷惑だから帰ってくれ」
「諦める……?」
(わたしが騎士を諦めたら、他に何になれるんだろう……。教養も知識も足りないし、侍女なんて無理でしょう。町の食堂で働いても、モーガンと食べていくのもやっとだわ。アランに家庭教師を付けてあげられない。アランから応援してもらったのに、何も応えられていないわ)
「よしっ、諦めてくれたな。ほら、その剣は俺が戻しておくから、とっとと帰れ!」
「ううん、諦めない。まだ何も頑張っていないから。こんなんじゃ、婚約者に申し訳が立たないもの」
「はぁぁーっ! 婚約者じゃなくて、俺に申し訳が立たないだろう、馬鹿」
「はぁぁーっ、なんでエドワードに申し訳を立てなきゃいけないのよ。じゃぁ、どっか行って、ってさっきから言っているでしょう」
(この女、俺にどっか行けって、また言いやがったのか。死ぬところを助けてもらって、その言い草。どこまでもふざけている女だな)
「ふざけるなっ! 今日中に剣を持ち上げられなければ、あしたは来るなって言っただろう」
「ふん、エドワードと約束する必要はないし、あと2時間はあるもん」
そう言って、エドワードに取られかけていた、自分が借りている剣を胸に抱え込んで死守したルイーズ。
ルイーズは、再び素振り以前の、ただひたすらに剣を持ち上げようとしている。彼に何と言われても、騎士になるのが、今の自分にとっては、全てがうまくいく気がしているのだから。
(あるもん! じゃないだろう……)
彼はそう思いながらも、ルイーズを静かに見守っていた。
そして2時間後、ルイーズは腰の高さまで剣先を持ち上げられるようになり、満足そうな顔をしている。
そして、エドワードへ悪びれる様子もなく誇らし気に話し掛けた。
「ふふふっ。持ち上げられたわ。やればできるのよ」
「お前なぁ~、それしか上がらない剣で、どうやって警護するんだよ」
「も~う、エドワードはうるさいな~。半年の訓練の初日なんだからこれで上出来でしょ。でも、もっと練習していこうかな」
「駄目だ。訓練初日は、俺は忙しいんだ。さっさと帰れ」
「エドワードの都合なんて知らないわよ、1人で帰ればいいでしょう」
ピーーッと教官が鳴らす笛の音が訓練場に響き渡る。
そのあと、訓練の終了が言い渡され、訓練生たちはみんな、直ちにこの場から解散するようにと指示された。
「ほら、教官がさっさと帰れだと。お前の剣をよこせ。返却しておく」
そう言ってエドワードは、ルイーズからひょいっと剣を奪い取り、さっさと立ち去っていく。
「いいわよ、自分でやるわ、ちょっと待ってよ!」
エドワードを走って追いかけるルイーズだけど、疲れ過ぎているせいで、速足のエドワードに追い付くこともできない。どんどんエドワードに引き離され、そのまま彼が立ち去るのを見送ってしまった。
(何なんだろう、あの人、何も練習していなかったわよね……。騎士試験に遊びで参加しているのかしら……)
今日から始まる騎士の訓練場を見にきていた令嬢たちは、想定外の人物が訓練場におり、悲鳴を上げていた。だが、エドワードのことを、ただの『嫌なやつ』ぐらいにしか思っていないルイーズは、しれっとしていた。
そのとき、自分が持っていた剣が、あわや、ルイーズの体目掛けて落下してくる。
それに気付き、剣が自分に刺さると覚悟し身を固くした。
けれど、エドワードが咄嗟に、皮の手袋をはめた手で、剣をつかんだ。
それを見てルイーズは、助かったとホッと力が抜け、にヘヘと苦笑いをして誤魔化した。
「馬鹿っ、危ないだろう。何やっているんだ、お前っ!」
焦るエドワードとは裏腹に、のんきなルイーズは、あっけらかんと返答する。
「ありがとう、エドワードのお陰で助かったわ。初日から、救護室で回復魔法師様のお世話になるところだった」
「お前な、回復魔法師でも治せるのと、そうじゃないのがあるんだ。そもそも救護室へ運び込む前に死んだら終わりだ。今の剣が真っすぐお前に落ちていれば、心臓に刺さってあっという間に死んでいたぞ。この訓練は遊びじゃないんだ、甘く見るな」
「そうなんだ。エドワードのお陰でわたしは命拾いしたのね、ありがとう。それにしても、エドワードは、随分と回復魔法師様に詳しいけど、会ったことがあるの?」
「…………あるよ」
まさか、エドワードから至上者である回復魔法師に会ったことがあると、返ってくるとは思わず、ルイーズは一気にテンションが上がる。
「すごいわ、カッコよかった? って、言っても、3人とも顔を隠しているんだっけ。偉い方たちなのに、素性を晒さないなんて、きっと、色々大変なんだろうなぁ。そう考えると、わたしの悩みなんて大したことはないわね。さあ、頑張るかぁ」
いけしゃあしゃあと話すルイーズは、今の危機をなかったことにしている。
それに、いら立つのはエドワードだ。
「はぁぁーっ、お前は、少しも悩んでいないだろう! その足りない頭で考えたって分かるだろう、死にかけたお前は、この訓練から立ち去るのが賢明だってな! 1時間やって、まだ膝の高さまでしか持ち上げられていないだろう。お前の体が、そもそも騎士には向いていない。赤の他人の心配をしていないで、お前は迷惑だから帰ってくれ」
「諦める……?」
(わたしが騎士を諦めたら、他に何になれるんだろう……。教養も知識も足りないし、侍女なんて無理でしょう。町の食堂で働いても、モーガンと食べていくのもやっとだわ。アランに家庭教師を付けてあげられない。アランから応援してもらったのに、何も応えられていないわ)
「よしっ、諦めてくれたな。ほら、その剣は俺が戻しておくから、とっとと帰れ!」
「ううん、諦めない。まだ何も頑張っていないから。こんなんじゃ、婚約者に申し訳が立たないもの」
「はぁぁーっ! 婚約者じゃなくて、俺に申し訳が立たないだろう、馬鹿」
「はぁぁーっ、なんでエドワードに申し訳を立てなきゃいけないのよ。じゃぁ、どっか行って、ってさっきから言っているでしょう」
(この女、俺にどっか行けって、また言いやがったのか。死ぬところを助けてもらって、その言い草。どこまでもふざけている女だな)
「ふざけるなっ! 今日中に剣を持ち上げられなければ、あしたは来るなって言っただろう」
「ふん、エドワードと約束する必要はないし、あと2時間はあるもん」
そう言って、エドワードに取られかけていた、自分が借りている剣を胸に抱え込んで死守したルイーズ。
ルイーズは、再び素振り以前の、ただひたすらに剣を持ち上げようとしている。彼に何と言われても、騎士になるのが、今の自分にとっては、全てがうまくいく気がしているのだから。
(あるもん! じゃないだろう……)
彼はそう思いながらも、ルイーズを静かに見守っていた。
そして2時間後、ルイーズは腰の高さまで剣先を持ち上げられるようになり、満足そうな顔をしている。
そして、エドワードへ悪びれる様子もなく誇らし気に話し掛けた。
「ふふふっ。持ち上げられたわ。やればできるのよ」
「お前なぁ~、それしか上がらない剣で、どうやって警護するんだよ」
「も~う、エドワードはうるさいな~。半年の訓練の初日なんだからこれで上出来でしょ。でも、もっと練習していこうかな」
「駄目だ。訓練初日は、俺は忙しいんだ。さっさと帰れ」
「エドワードの都合なんて知らないわよ、1人で帰ればいいでしょう」
ピーーッと教官が鳴らす笛の音が訓練場に響き渡る。
そのあと、訓練の終了が言い渡され、訓練生たちはみんな、直ちにこの場から解散するようにと指示された。
「ほら、教官がさっさと帰れだと。お前の剣をよこせ。返却しておく」
そう言ってエドワードは、ルイーズからひょいっと剣を奪い取り、さっさと立ち去っていく。
「いいわよ、自分でやるわ、ちょっと待ってよ!」
エドワードを走って追いかけるルイーズだけど、疲れ過ぎているせいで、速足のエドワードに追い付くこともできない。どんどんエドワードに引き離され、そのまま彼が立ち去るのを見送ってしまった。
(何なんだろう、あの人、何も練習していなかったわよね……。騎士試験に遊びで参加しているのかしら……)
今日から始まる騎士の訓練場を見にきていた令嬢たちは、想定外の人物が訓練場におり、悲鳴を上げていた。だが、エドワードのことを、ただの『嫌なやつ』ぐらいにしか思っていないルイーズは、しれっとしていた。
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