【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第3章 入れ替わりのふたり

3-1 入れ替わり

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 騎士候補生の訓練場に、久しぶりに剣をぶつけ合う2人の姿があった。
 だが、今日のルイーズは様子がおかしい。早々に、はぁはぁ~と肩で大きく息をしている。

「馬鹿。剣を地面に刺すな。剣先が痛むだろう」
「……」
 エドワードに言い返す元気もない。

 ……それもそのはず。元々きゃしゃだったルイーズが、高熱でうなされていた、この2週間。具無しのスープしか口にしていない。
 ただでさえ運動量と食事量が見合っていなかったルイーズは、そもそも栄養不足。

 始めから「無いも同然の体力」。それが休んでいた間に更に落ちた自覚が、訓練前からルイーズに、はっきりとあった。
 自分の不調を察知して、ここで倒れるわけにはいかないと必死だ。

 ……その結果。少し前から下したままの剣は、つえのように彼女を支えている。
 今日、無理を押して訓練に来たのも、このまま休んでいては候補生の資格がなくなるから。ただその一心。

 それでも今日は無理。既に限界だと、やっと諦めがついた。
 休憩所を見やるルイーズは、練習を切り上げようとしている。

「エドワード、悪いけどここまでにして。疲れたから下がるわね」
 見るからにフラフラ。立っているのも辛かったルイーズ。
 彼女は、ぼーっとしながら他の候補生の間を通って、戻ろうとしていた。

「おい、馬鹿っ。これだから女は……」
 と、エドワードは大きな声で叫ぶ。強く制止したが、ルイーズに止まる気配はない。
 そして、小さな声でつぶやく。
「ったく、他のやつらが剣を振っている間を通って、危ないだろう」
 ハラハラした顔を見せるエドワードは、ルイーズに駆け寄ろうと、周囲の様子を見ていた。


「おい、馬鹿っ」と、エドワードの叫ぶような言葉を聞いたルイーズ。彼女は、さらりと自分の気持ちが言えるエドワードを羨ましく思っていた。
 自分がエドワードだったら、姉に「お前は馬鹿か」と言ってやれたのに、と心からそう思った。

 そして、ルイーズを追いかけようとしたエドワードの目に飛び込んだのは、どこかの訓練生の手から滑って、空高く飛んでいる剣だった。
 その剣の軌道の先を追えば、ルイーズがいる。
 これはまずいと、目を大きく見開くエドワード。
 ……その剣の真下にいるルイーズは、案の定、全く気付く気配もない。

「ルイーズ危ないっ!」
 日頃から掛け声で騒がしい訓練場では、危険を知らせる声はルイーズには届いていない。
 ……それどころか、今にも倒れそうな彼女は、すぐに反応する余裕もなかった。避ける素振りは全くない。
 
 あの剣がルイーズに直撃した後、すぐに治療をすれば助けられるだろうか? と、エドワードは思考をめぐらせた……。
 その結果、サーッと血の気が引いた。助けられる自信がない。
 ……ルイーズが死ぬ。
 そんなのは駄目だ。エドワードがルイーズと代わりたい、そう思った瞬間だった。


 ルイーズを見ていたはずの自分の視界に、ルイーズはいない。
 そして、何が起きたのか周囲を見渡せば、離れた所に自分がいる。
 その後に、見上げた先には真っ逆さまに落ちてくる剣がある。……それで悟った。


 ――ルイーズとエドワードが入れ替わった。

 それに気が付いたエドワードは、あっけなく落下してきた剣を避ける。
 そしてそのまま、自分の体の元へ駆け寄り、何も言わずに、その人物の手を引いて訓練場を後にした。


 休憩室へ着くなり、きびすを返したエドワードルイーズの体
 彼は、知り尽くしているその体の両方の肘を強くつかんで対面していた。

「おいっっ、お前、ルイーズだろう!」
 動揺を隠しきれないエドワードルイーズの体が、甲高い声でエドワードの体へ問いかける。

「そうよ。ねぇ、一体何がどうなって、こうなっているの。意味が分からない」
 ルイーズエドワードの体が唇を震わせながら、不安気に答えた。

「お前、俺の体で気持ち悪いから、そんなしゃべり方するな」
「はぁぁっ! そっちこそ、わたしの体でガサツな言い方をしないでよ」

 エドワードの言葉にカッとしたルイーズは、エドワードとヒートアップしたテンションに早変わりしている。

「ヤバい、全然戻り方に心当たりがない。お前なんかしたのか?」
「するわけないでしょう。エドワードの方が何かしたんじゃないの?」

(自分の回復魔法が働いたのかもしれない。だが、魔法は使っていない……)
 
 天を仰いでいるエドワードルイーズの体は、苦悶くもんの表情を浮かべ考え込む。
 だが、どう考えても答えは分からなかった。イライラして自分の体に当たり散らす。

「あー-っ、分からん! そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
 エドワードがいつもの自分の頭だと思い、ルイーズの長い髪をぐちゃぐちゃとかきむしったせいで、髪はまるで鳥の巣のように、ぐしゃぐしゃになっている。

 その姿を見てギョッとするルイーズエドワードの顔だけど、何だか楽しそうだ。

「もーう、女の子はこんなことをしないわよ」
 と、ルイーズエドワードの体が笑いながらルイーズ中身はエドワードの髪をなでて整える。

 ルイーズにされるがままのエドワードルイーズの体は、至って真面目にこの先のことを考えている。

「いつ戻れるか分からないから、取りあえず、俺の屋敷へ行く。その後はお前の屋敷だ」
「えぇー、エドワードの部屋へ行くなんて、ちょっと困る。わたしに何するつもり」
「馬鹿か! お前、今日はどっちの屋敷へ帰るつもりでいるんだ! 今日中に自分の体に戻れなかったら、お前は俺の屋敷で過ごすんだぞ。俺の部屋の場所も分からないだろう。俺が狂ったと思われるから、『わたしルイーズです』と、馬鹿なことを屋敷で言うなよ」

「はぁぁーっ、何それっ! そんなのお互い様でしょ、分かっているわよ」

 ルイーズの屋敷の馬車を帰し、2人でスペンサー侯爵家の2頭引きの豪華な馬車に乗り込んだ。
 息の上がるエドワードルイーズの体は、自然とルイーズエドワードの体に腕を組んで歩いている。
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