【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第3章 入れ替わりのふたり

3-9 気まずかったはずなのに、大爆笑

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 げっそりしたルイーズエドワードの体の視界に、プラチナブロンドの髪が目に入る。
「あぁー、わたしの体は無事だ。会いたかった」と、エドワードルイーズの体を目指して一目散に駆け寄った。

 ルイーズとエドワード。2人とも会うつもりだったし、顔を合せるまでは良かった。
 ……だが、互いに気まずい2人。双方に視線をずらし、もじもじとしている。
 不思議な緊張感。2人とも「そっちから何か言え」と、言いたげだ。

 いつだって「おはよう」の代わりは、エドワードが発していた「今日も来たのか! 来るなと言っているだろう」そんな会話から始まっていたのだ。
 普通の会話に、速攻で行き詰ってしまった。

 そうは言っても、このまま休憩室にいられない。
 訓練開始時刻が差し迫っているのだ。互いの空気を読みながら、じれじれの2人は剣を持って訓練場へ向かおうとする。
 そんなルイーズエドワードの体は、剣を持った瞬間、おかしな感覚にとらわれる。
 ……どうしてだろうと、こてんと首をかしげた。

「ねえ、今日の剣は何か違うのかしら? すごく軽いんだけど」

 ルイーズの発言にエドワードルイーズの体は、口を開けてあきれている。だが、彼に笑う余裕はない。むしろ焦っているようだ。
 青い顔をしているエドワードルイーズの体は、冷や汗をかいている。

「お前、本当に馬鹿だな。それは俺の体だからだ。俺には、馬鹿みたいに重く感じる。よくこんなんで、お前は毎日訓練に来ていたな。悪いが今日は剣を振るな。ここに立っているだけで、やり過ごすぞ」

 そう言って、教官たちの目がある中、剣を下に向けたまま2人は会話を始めていた。


「体を動かしているなら、もっと食べろ。あの出されている食事の量では筋肉が付くどころか、運動で消費したエネルギーが足りずに痩せるだけだ。どうりでな、おかしいと思っていた。3か月もたてばそろそろ体が仕上がってくる頃なのに、一向に細いのはそのせいだろう」

「エドワードは、どんなときでもわたしの悪口ばっかりね。どんな猫をかぶったら、パトリシア様が、あなたなんかを良いって言うのか、さっぱり分からないわ」

「はぁぁーっ、俺はいつだってこうだ。お前の方が猫をかぶっているだろう。さっき、カーティスからドレスを贈るから舞踏会のパートナーに誘われた。カーティスのために、しっかり断ってやったぞ」

 エドワードの勝手な行動に、耳を疑うルイーズ。「ドレスを贈ってくれる!」そんなウソのような申し出は、願ってもいない。まさに奇跡。
 それを断るとは、容認できない。エドワードにじれていた気持ちはどこかへ消え去り、彼に真っすぐ視線を向ける。

「はぁぁーっ、なんでそんな勝手なことをしているのよ。その日はわたしも出席する予定なのに、パートナーがいなくて困っていたんだから、カーティスと一緒に行くわよ。あー良かった、助かったわ」
 ルイーズエドワードの体は、最近の大きな悩みだったドレス問題に希望が出てきて、うれしさのあまり小さく飛び跳ねていた。

「お前はどうしてそんなに尻軽なんだ?」
 エドワードルイーズの顔は、ムッとしていて、明らかに不機嫌になっている。
 
 一方のルイーズは、エドワードの発した「尻軽」。その単語から、何かを思い出したようで、エドワードルイーズの顔を真剣に見つめる。
「そんなんじゃないわよ。ねぇ、それよりわたし、昨日大事なことを伝え忘れていたの」
「ん? なんだ」

「わたしの体を必要以上に触らないでね。ただでさえ、関係ないエドワードに体を見られるのは恥ずかしいのに」
 虫の居所が悪くなった彼は、隠そうか悩んでいたはずのことを打ち明ければ、ルイーズがどんな反応をするのか楽しみになり、悪い顔を浮かべている。

「くくっ、こんな貧相な体の持ち主がよく言う。残念だったな、昨日のうちに細部まで全部確認した。頼むのが遅いから俺は悪くないぞ。だからのろまなんだ、お前は」
 焦るルイーズエドワードの体は、エドワードルイーズの体の両肩をグッとつかんで、言い寄った。
 嫌な予感がする。そう思えば、うまく言葉も出てこない。

「ちょっ、ちょっ、何を確認したのよ!」
「体の構造と感覚もろもろだ。女の体について、よく分かって助かった。お前の体のお陰で、この先色々役に立つだろうな」
 乙女の体で何をしてくれている! と、ルイーズエドワードの顔は真っ赤になった。
 それと同時に、あっけらかんと、悪びれる様子のないエドワードにブチ切れる。

「はぁぁーっ、何やっているのよ」
「くくっ、まあ怒るなって。悩む俺への人助けだと思えよ」
「何が人助けよ! 結局わたしたち戻っていないでしょう。わたしの体に何したのよ!」
「何をしたか教えて欲しいなら、俺の部屋で見せてやる。今日は、俺の屋敷へ行った後、着替えてすぐに町へ出掛ける。お前も付き合え」
「見せるって! エドワードって、本当にデリカシーがないわ」
「はぁぁーっ、お前、何を想像しているんだよ、馬鹿」
「えっ、違うの。あ、いや」
「違わない。しない方がよっぽどおかしいだろう。くくっ」
 エドワードに見られた。いや、そもそも見るくらいは当たり前だ。自分だってエドワードの大事なところを……。
 
 ハッと何かを思い出したルイーズは、彼と帰るのを躊躇ためらった。
「わたし、救護室へ行きたいから、一緒に帰るのはちょっと困る……」

 耳を疑うエドワードルイーズの体。まさか、エドワードの体で救護室に入ろうとしている。それは、超絶まずい。
 ルイーズの発言に鳥肌が立つエドワードルイーズの体。動揺しつつも、俺の体に何かあったのかと、心臓をバクバクさせながら詰め寄る。
(このあほが、のほほんと間違って足を踏み入れれば、大ピンチだ)

「おいっ馬鹿! なんだって救護室へ行こうとしているんだ。絶対に駄目だ。何故行こうとしているか、言えっ」
 鬼気迫るエドワードルイーズの体の様子に、ルイーズは観念した。言いにくいルイーズは、ボソボソと話し始める。できるだけ弯曲わんきょくに。

「相談したいことがあって……。だって、病気かも知れないから」
「はぁぁーっ、どういうことだ! 俺の体に何をしたっ!」
「昨日、化粧室へ行くのを我慢していたら、今朝、エドワードの大事なところが大きく腫れていて……。どうしよう……」
 へっ? と、拍子抜けしたようなエドワード。だが、次の瞬間大きな声を上げる。

「あはははっ」

 ルイーズエドワードの顔があまりに深刻な顔をしているから、おかしくなり、おなかを抱えて大笑いを始める。ルイーズはまだ、何が何だか分かっておらず、きょとんとしている。

 ……その後、エドワードから揶揄からかわれるようにルイーズは理由を聞かされた。
 その瞬間、ボッと全身に火が付いたように熱くなる。あまりの熱気に、頭から湯気が出ているかもしれない。

 
 周囲の人物たちには、あのエドワードが耳まで真っ赤になり、ルイーズに何か強く訴えている姿が見えている。
 彼の瞳は潤んでいるが、それまでは見えていない。


 エドワードに熱烈な視線を送る令嬢たちに、どよめきが起きているのは、当の2人は知るわけもない。
 入れ替わり中の2人は、エドワードルイーズの体が笑い転げ、ぷりぷり怒るルイーズエドワードの体の、2人きりの楽しい世界を作っているのだ。

 訓練の時間中、エドワードがルイーズの肩に手を置き、時々激しくルイーズの肩を揺さぶりながら会話をしていた。
 それをカーティスとパトリシアが見て、焦りを募らせている。

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