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第4章 離れたふたり
4-8 すれ違うふたり①
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モーガンが救護室でさわいでいた翌日。
エドワードは、訓練に来るルイーズを待っていたが、昨日と同じく、今日も姿が見えない。
エドワードの父が言った、「おじけづいて訓練に来ない」が理由なのか? と思い込もうとする。
だが、ルイーズに限って、そうは到底思えない。
迎えに行くべきか? いや、そんな必要はない……。
手で顔を覆い思い悩む彼は、何度も同じ否定を繰り返す。
そもそもエドワードは、ルイーズを無理やり訓練に連れてくる必要もなかった。
むしろ、来ないようにするのが目的だった。この状況は丁度良いのだと自分に言い聞かせている。
うつむいたまま休憩室のベンチに座り、もう2時間、エドワードはルイーズを待っていた。
こんなことを考える彼には、時が過ぎる感覚もない。
エドワードは、パトリシアとの約束も忘れ去り、訓練場から動きだせずにいた。
エドワードは、ルイーズを一番知っている自負がある。何せ、少し前まで自分がルイーズだった。どうして来ないのか? それが、納得できない。
……思い悩むエドワードは、今、彼女の身に起きていることは知る由もない。
(俺が回復魔法師だと、ルイーズに気付かせるために、引き出しの書類を入れ替えて細工をしてきた。
彼女は俺がヒーラーだと知っているはずだ。それなのに、俺が、彼女のけがの治療をしなかったから、俺を軽蔑して避けられているのか……)
パトリシア侯爵令嬢との約束を、これっぽっちも覚えていなかったエドワード。
自分の仕事をすべきだと訓練場から出てきたところ、パトリシアから声を掛けられた。
「ルイーズ様、今日もいらっしゃらなかったですね。さあ、出掛けましょう」
「ああ、そうでしたね……」
(……しまった。頭がルイーズのことでいっぱいで、すっかり忘れていた……。さっさとケーキ屋に行って帰ってくるか……)
すっかり気落ちしたエドワードと、パトリシアの間に、もう1人座れるくらいの空間がある。
馬車に2人で乗っているが、彼からパトリシアへ掛けたい言葉は、どうやっても見つからなかった。
「エドワード様は、どうして騎士の訓練に参加されているのですか? いつもルイーズ様と練習されているみたいだし、うわさどおり、女性騎士を目指すための個人指導を引き受けているのですか?」
「俺のこと、そんなうわさになっているのか……。父から言われてルイーズの練習に付き合っているのは間違いないですが」
「そうなんですね。良かった、エドワード様がルイーズ様のことを個人的に気に掛けているのかと勘違いしていました」
「……」
エドワードは、返す言葉も見つからず無言のまま。
気まずい。何を話せばいいんだ。……その沈黙が居心地の悪さを加速する。
パトリシアがエドワードをチラリと見ると、エドワードは面白くなさそうな顔をしている。
訓練場で見ていたエドワードは、表情がころころ変わり、生き生きしていたのだ。
自分といても楽しくないのか? と、焦りの色が顔に出るパトリシア。
そして、馬車の中は、ガタガタと車輪の音だけが響いていた。
居心地の悪そうな彼は、それを誤魔化すためにパトリシアとは反対の車窓から景色を見ていた。
エドワードとパトリシアの2人は、パトリシアが行きたいと言う、最近話題のケーキ屋の前で並ぶ。
ケーキ屋の前には、女性たちばかりが列をなしており、その光景に引いたエドワード。
やはり、これといって、パトリシアと話すこともない彼は、ぼんやりと街並みを見ている。
そこに偶然、彼の目にルイーズの姿が飛び込み、目を見開き激しく動揺する。
(ゲッ、まずい、何だってルイーズがいるんだよ。こんなところを見られたら、あした、ルイーズに馬鹿にされるだろう。あいつ、俺を探して追っかけてきたのか……っなわけないか。訓練サボって何をやっているんだ?)
ベンチに腰掛けたルイーズは、白い布でできた巾着袋の中をのぞいている。彼女はエドワードの姿に、全く気付いていない。
ルイーズは、相当強い視線をエドワードから向けられている。
……けれど、彼女は自分の悩みで手一杯。周囲に気を向ける余裕はなかった。
必死にお金を数えるルイーズは、下を向いたまま。
エドワードには、疲れ切ったルイーズの顔は見えていない。
昨日、ルイーズは町に出てきて往来する人々に声を掛け、修道院がどこにあるのか調べていた。
「知らない」と突き放されることが多かったが、何人かが、「チルベルにある」と同じ地名を言った。
そこに行けば何とかなるかもと、一縷の希望を持っている。
初めて聞いた地名に、ルイーズは及び腰になっていたものの、ここから西へ、馬車で4日かかる田舎であることまでは分かっていた。
今日のルイーズは、チルベルまでの移動手段を調べていたのだ。
そして彼女は、辻馬車の乗車料金を調べるために切符売り場まで辿り着き、ルイーズが持っていた、騎士訓練生の手当の全財産で切符が買えるのかと、お金を数えているところ。
1日1本の馬車は午前11時に出発しており、今日の馬車は既にない。
浮かない表情のルイーズは、もう3回お金を数えている。うー、お金が足りない。カバンを買ったら切符が買えない。
荷物は諦めるしかないか……、でも、それで本当に大丈夫なの? と答えを出せずに悩んでいる。
その姿をエドワードに見られていたのに、自分の考えをまとめることで忙しいルイーズは、全く気付いていない。
エドワードは、訓練に来るルイーズを待っていたが、昨日と同じく、今日も姿が見えない。
エドワードの父が言った、「おじけづいて訓練に来ない」が理由なのか? と思い込もうとする。
だが、ルイーズに限って、そうは到底思えない。
迎えに行くべきか? いや、そんな必要はない……。
手で顔を覆い思い悩む彼は、何度も同じ否定を繰り返す。
そもそもエドワードは、ルイーズを無理やり訓練に連れてくる必要もなかった。
むしろ、来ないようにするのが目的だった。この状況は丁度良いのだと自分に言い聞かせている。
うつむいたまま休憩室のベンチに座り、もう2時間、エドワードはルイーズを待っていた。
こんなことを考える彼には、時が過ぎる感覚もない。
エドワードは、パトリシアとの約束も忘れ去り、訓練場から動きだせずにいた。
エドワードは、ルイーズを一番知っている自負がある。何せ、少し前まで自分がルイーズだった。どうして来ないのか? それが、納得できない。
……思い悩むエドワードは、今、彼女の身に起きていることは知る由もない。
(俺が回復魔法師だと、ルイーズに気付かせるために、引き出しの書類を入れ替えて細工をしてきた。
彼女は俺がヒーラーだと知っているはずだ。それなのに、俺が、彼女のけがの治療をしなかったから、俺を軽蔑して避けられているのか……)
パトリシア侯爵令嬢との約束を、これっぽっちも覚えていなかったエドワード。
自分の仕事をすべきだと訓練場から出てきたところ、パトリシアから声を掛けられた。
「ルイーズ様、今日もいらっしゃらなかったですね。さあ、出掛けましょう」
「ああ、そうでしたね……」
(……しまった。頭がルイーズのことでいっぱいで、すっかり忘れていた……。さっさとケーキ屋に行って帰ってくるか……)
すっかり気落ちしたエドワードと、パトリシアの間に、もう1人座れるくらいの空間がある。
馬車に2人で乗っているが、彼からパトリシアへ掛けたい言葉は、どうやっても見つからなかった。
「エドワード様は、どうして騎士の訓練に参加されているのですか? いつもルイーズ様と練習されているみたいだし、うわさどおり、女性騎士を目指すための個人指導を引き受けているのですか?」
「俺のこと、そんなうわさになっているのか……。父から言われてルイーズの練習に付き合っているのは間違いないですが」
「そうなんですね。良かった、エドワード様がルイーズ様のことを個人的に気に掛けているのかと勘違いしていました」
「……」
エドワードは、返す言葉も見つからず無言のまま。
気まずい。何を話せばいいんだ。……その沈黙が居心地の悪さを加速する。
パトリシアがエドワードをチラリと見ると、エドワードは面白くなさそうな顔をしている。
訓練場で見ていたエドワードは、表情がころころ変わり、生き生きしていたのだ。
自分といても楽しくないのか? と、焦りの色が顔に出るパトリシア。
そして、馬車の中は、ガタガタと車輪の音だけが響いていた。
居心地の悪そうな彼は、それを誤魔化すためにパトリシアとは反対の車窓から景色を見ていた。
エドワードとパトリシアの2人は、パトリシアが行きたいと言う、最近話題のケーキ屋の前で並ぶ。
ケーキ屋の前には、女性たちばかりが列をなしており、その光景に引いたエドワード。
やはり、これといって、パトリシアと話すこともない彼は、ぼんやりと街並みを見ている。
そこに偶然、彼の目にルイーズの姿が飛び込み、目を見開き激しく動揺する。
(ゲッ、まずい、何だってルイーズがいるんだよ。こんなところを見られたら、あした、ルイーズに馬鹿にされるだろう。あいつ、俺を探して追っかけてきたのか……っなわけないか。訓練サボって何をやっているんだ?)
ベンチに腰掛けたルイーズは、白い布でできた巾着袋の中をのぞいている。彼女はエドワードの姿に、全く気付いていない。
ルイーズは、相当強い視線をエドワードから向けられている。
……けれど、彼女は自分の悩みで手一杯。周囲に気を向ける余裕はなかった。
必死にお金を数えるルイーズは、下を向いたまま。
エドワードには、疲れ切ったルイーズの顔は見えていない。
昨日、ルイーズは町に出てきて往来する人々に声を掛け、修道院がどこにあるのか調べていた。
「知らない」と突き放されることが多かったが、何人かが、「チルベルにある」と同じ地名を言った。
そこに行けば何とかなるかもと、一縷の希望を持っている。
初めて聞いた地名に、ルイーズは及び腰になっていたものの、ここから西へ、馬車で4日かかる田舎であることまでは分かっていた。
今日のルイーズは、チルベルまでの移動手段を調べていたのだ。
そして彼女は、辻馬車の乗車料金を調べるために切符売り場まで辿り着き、ルイーズが持っていた、騎士訓練生の手当の全財産で切符が買えるのかと、お金を数えているところ。
1日1本の馬車は午前11時に出発しており、今日の馬車は既にない。
浮かない表情のルイーズは、もう3回お金を数えている。うー、お金が足りない。カバンを買ったら切符が買えない。
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