【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

文字の大きさ
60 / 88
第4章 離れたふたり

4-15 隠しているエドワードの素性

しおりを挟む
 2人が見つめ合っている、そのときだった。
 エドワードの部屋に、入室を知らせる音が響く。
 ルイーズは自分の気持ちをエドワードに言おうとしていたが、その音を聞き諦めた。

 入室を許可したエドワード。入ってきた人物へ、来るのが分かっていたという顔で、至って冷静に招き入れる。
 だが、入ってきた宰相は、ルイーズの姿を見るなり血相を変え、駆け寄ってきた。

「どうやって入ってきたっ! エドワード様、申し訳ありません。すぐに侵入者を警備へ突き出しますので」
「やめろ、ルイーズは俺がここへ連れてきた。彼女に1度振られたのを口説き落としたばかりなんだ。そういうわけだから、俺、ルイーズと結婚するから」

 呆然ぼうぜんとしている宰相は、返す言葉がなかった。けれど、父親としてどうしても言いたかった。
「いや、だが、どうして。他にもっと……」
 それ以上言うなよと、エドワードは宰相をぎろっとにらむ。
 あっ、まずいと思った宰相は、それ以上話を続けることはない。

「俺にとってはルイーズが特別で、彼女しか受け入れられないからだ。宰相は今、何か余計なことを言いかけてなかったか?」
「気のせいです……」

「スペンサー侯爵家の当主がルイーズを気に入らないと言うなら、俺はあの家を出て、好きに暮らすから、適任の後継者を探しておいた方がいいぞ。あ、それとルイーズと2人で食事にする。ビリング侯爵にそう伝えてくれ」

 その親子の会話を、目を白黒させながら見ていたルイーズは、何が何だか分かっていない。

 入れ替わりから戻った日の朝。
 訓練に向かう直前に、エドワードの父から向けられた視線。それは、何か文句を言いた気な顔だった。
 それなのに今は、当主に向かって啖呵たんかを切っているエドワードの姿。
 なのに何故か、それを言い返すことのない宰相の様子に、ルイーズは呆気あっけに取られている。


 放心状態のルイーズの動揺は置き去りにして、宰相は、ぺこぺことルイーズに礼をしながら立ち去っていた。

「何がどうなっているの……」
「最近俺が仕事をしていなかったから、いちいち確認に来ているだけだ」
「いやいや、違うわよ。お父様にあんな偉そうに話をするなんて、あり得ないでしょう」
「この部屋にいるときは、俺はこの国の回復魔法師ヒーラーだからな。いつものことだ。当主として俺に何か言いたいことがあれば、屋敷に帰ってから言ってくるだろうさ」

 それから少しして、パトリシアの父であるビリング侯爵が、2人の食事を運んできた。
 この救護室を管理しているビリング侯爵は、毎日エドワードと対面している。けれど、パトリシアに関する頼みごとを彼に直接言ってくることはない。

 はっとするエドワードは、思い出したようにビリング侯爵へ伝えた。
「そうだっ。娘のことを俺の父に頼むなよ。俺にはルイーズがいるから話にならないからなっ!」
 それを聞き、ビリング侯爵はゴクリと唾を飲み込む。

「ははっ、そのようですね。スペンサー侯爵夫人でさえエドワード様のことを知らないのに、まさか、ここに女性を連れてくるとは、全くの予想外でした。そのように言われなくても意味は理解しております」
 エドワードに深々と礼をして部屋を後にして行ったビリング侯爵。


 硬直していたルイーズは、王宮の料理を見た途端、飛び跳ねて喜んでいる。
 まさか、誕生日の祝い膳が、誕生日でないのに食べられるのだから。
 その姿を見て、内心くすくすと笑っているエドワード。

「俺はこの後に仕事があるが、終わったらルイーズを伯爵家まで送る。1人で帰すわけにはいかないから、勝手にいなくなるなよ」

 はむはむと食事に夢中のルイーズは、うなずいて返事をしていた。
 が、それを飲み込んだ彼女は、部屋に掛けてある外套がいとうに目が留まり、気になって問い掛けてみた。

「どうして回復魔法師様ヒーラー様って、素性を隠しているの?」

「そんなのがバレたら、まともに暮らせなくなるからだ。高額な治療費を理由に門前払いをしているこの王宮でさえ、毎日、大勢の一般人が情を訴えて治療を求めてくるからな。ヒーラーの素性が分かれば、屋敷まで来るのが現れるだろう。まあ俺の場合は、侯爵家の肩書もあるから、庶民は押し寄せないだろうし、父を脅して俺を従わせるやつはいないだろうけど」


「そっかぁ~。エドワードも色々大変なのね」
 軽くウンウンとうなずいて、あっけらかんと話すルイーズ。
 その姿を見たエドワードは、まずい、何も分かっていないと焦りを募らす。

「……他人事のように言っているが、俺と一緒になればルイーズも巻き込まれる話だからな。いいか、あの扉からは絶対に入ってくるなよ」
 入ってきた扉と反対側にある扉を指さして話すエドワード。

 実際は扉を開けても、さらにもう1部屋、つなぎの空間がある。
 ……けれど、先日その場所にモーガンが入り込んでいたのだ。

「大丈夫、わたし部屋にこもるのは得意だから大人しくしているわね」
「くくっ、そこ、自慢するところか? まあ、いいや」
 そう言ってフードをかぶったエドワード。行ってくるからと、ルイーズの額に軽いキスを落とす。

 ほんわかと幸せな気持ちのルイーズは、ひとり残された、豪華過ぎるその部屋を見回す。
 もしかして、自分は相当な場違いにいるのではないか……と、もやもやした感情がわいてくる。
 
 
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

処理中です...