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第5章 祝福されるふたり
5-20 不穏な空気③
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2人の結婚式が目前に迫り、ルイーズの心境は揺らいでいる。
ルイーズは、マリッジブルーとは違う、気鬱な感情の中にいた。
彼が、自分を求めてこない。
これまでは毎晩、ルイーズが落ちるように眠っても、エドワードは抱きしめたまま離してくれなかった。
彼とは、朝だって、とろける時間を過ごしていた。
……それなのに突然、触れてこなくなり2週間以上たつ。
最近は、熱いキスのあと、急にそっけなくなるエドワードは、そのまま眠ってしまう。
……どうして? 意味が分からない……。
エドワードに相応しい恋人ができたのか? いや、エドワードに限ってそんなはずはない。
……と、2つの感情が交互にルイーズの頭を駆けめぐる。
(最近のエドワードは、何かが変だわ。うれしそうなのに、何を聞いても一切教えてくれない。……絶対に違って欲しいけど、やっぱり、わたしでは駄目なのかな。何にも知らないわたしより、もっと素敵な令嬢に気持ちが向いてしまったのかもしれない)
これまでのエドワードは、言わなくてもバレないことまで、ルイーズに話していた。
それなのに、何かをひた隠しにする、突然の態度の変わりよう。
ルイーズは、そんなエドワードの感情を理解できず、困惑していた。
エドワードに直接聞いてみるべきだろう。
当然そうしたい。なのに、怖い……。
それを聞くと、ふたりの関係が終わる気がするルイーズは、面と向かって聞けずにいた。
あと数日で結婚なのに、自分らしくない暗い気持ちが心を占める。
これではいけないと思ったルイーズは、甘くて癒やされるチョコレートを食べて、落ち込む気分を晴らそうと試みる。
一つ口に含めば、広がる甘さに思わず、にんまりしてしまう。
口の中で溶けてなくなった名残惜しさで、2つ目を手に取る。
「なぁ、ルイーズに贈られてくるチョコレートは、しばらく控えた方がいい。いつも食べ過ぎだぞ」
「そっ、そんな。まだ、2個目だし」
「食べ始めたら、いつも止まらなくなるだろう」
「だ、大丈夫よ、それは、この前がたまたま……」
「駄目だ。わがままを言うな」
「ぇ……」
ルイーズの心臓が凍り付きそうなほど、ドキリとした。
「わがままを言うな」の一言が、ルイーズが忘れかけていた、伯爵家の食卓を想起させ、体をこわばらせている。
継母や姉から言われても、ルイーズは、どうせいつものことと、さらりと聞き流せていた。
けれど今、その言葉を発したのは、あの2人ではない。
全く予期せぬエドワードから言われたのだ。
それが彼女の心に、ずしりと重くのしかかった。
2週間近く悩み続けていた彼女は、落ち込んでいく気持ちに歯止めがきかない。
何の気なしに、ルイーズを抱き寄せるエドワードの手を受け入れられず、パシンッと音が響き渡る勢いで、ルイーズは払いのけた。
ハッと驚くエドワードの表情を見たルイーズは、これではいけないと首を左右に振る。
(自分の気持ちを適当に誤魔化してはいけない。しっかり向き合わなきゃ。エドワードの隣にいる幸せを、簡単に諦められない)
「ねぇ、何かあったの? わたしに何か隠していない?」
「あ、いや、何も」
目をそらしながら話すエドワードの姿。
それを見たルイーズは愕然とする。明らかに何かを誤魔化した彼へ、疑惑しかない。
「ウソよ、最近のエドワードは、なんだか変だわ」
「そんなことはないだろう。別に俺は何も変わっていないからな」
ムキになってウソを言うエドワード。
それを目の当たりにしたルイーズは、今にも泣きそうだ。
「わたし……、ずっと思っていた……。わたしは、エドワードとは全く釣り合っていないって。結婚する間際になって、慌ててマナーを学ばなきゃいけない妻なんて、恥ずかしいって、そんなの分かっているわ。なのに、どういうわけか、エドワードには何でも打ち明けられて、いつも一緒にいると楽しかった」
「ど、どうしたっ!」
いつもであれば、ルイーズへチョコを食べるなと言ったところで、強気に言い返しているはずだ。
想像していた反応と違うルイーズを見て、エドワードは動揺を隠せず、声が上ずった。
「エドワードに限って、誤魔化すことはないと思っていた。なのに……ひどいわ。別に好きな人ができたなら、正直に言えばいいじゃない。エドワードが言い出せないならわたしが決めるわ、結婚するのはやめましょう」
涙をこらえるルイーズは、エドワードを見ずに言い終え、部屋を飛び出そうとした。
ルイーズは、マリッジブルーとは違う、気鬱な感情の中にいた。
彼が、自分を求めてこない。
これまでは毎晩、ルイーズが落ちるように眠っても、エドワードは抱きしめたまま離してくれなかった。
彼とは、朝だって、とろける時間を過ごしていた。
……それなのに突然、触れてこなくなり2週間以上たつ。
最近は、熱いキスのあと、急にそっけなくなるエドワードは、そのまま眠ってしまう。
……どうして? 意味が分からない……。
エドワードに相応しい恋人ができたのか? いや、エドワードに限ってそんなはずはない。
……と、2つの感情が交互にルイーズの頭を駆けめぐる。
(最近のエドワードは、何かが変だわ。うれしそうなのに、何を聞いても一切教えてくれない。……絶対に違って欲しいけど、やっぱり、わたしでは駄目なのかな。何にも知らないわたしより、もっと素敵な令嬢に気持ちが向いてしまったのかもしれない)
これまでのエドワードは、言わなくてもバレないことまで、ルイーズに話していた。
それなのに、何かをひた隠しにする、突然の態度の変わりよう。
ルイーズは、そんなエドワードの感情を理解できず、困惑していた。
エドワードに直接聞いてみるべきだろう。
当然そうしたい。なのに、怖い……。
それを聞くと、ふたりの関係が終わる気がするルイーズは、面と向かって聞けずにいた。
あと数日で結婚なのに、自分らしくない暗い気持ちが心を占める。
これではいけないと思ったルイーズは、甘くて癒やされるチョコレートを食べて、落ち込む気分を晴らそうと試みる。
一つ口に含めば、広がる甘さに思わず、にんまりしてしまう。
口の中で溶けてなくなった名残惜しさで、2つ目を手に取る。
「なぁ、ルイーズに贈られてくるチョコレートは、しばらく控えた方がいい。いつも食べ過ぎだぞ」
「そっ、そんな。まだ、2個目だし」
「食べ始めたら、いつも止まらなくなるだろう」
「だ、大丈夫よ、それは、この前がたまたま……」
「駄目だ。わがままを言うな」
「ぇ……」
ルイーズの心臓が凍り付きそうなほど、ドキリとした。
「わがままを言うな」の一言が、ルイーズが忘れかけていた、伯爵家の食卓を想起させ、体をこわばらせている。
継母や姉から言われても、ルイーズは、どうせいつものことと、さらりと聞き流せていた。
けれど今、その言葉を発したのは、あの2人ではない。
全く予期せぬエドワードから言われたのだ。
それが彼女の心に、ずしりと重くのしかかった。
2週間近く悩み続けていた彼女は、落ち込んでいく気持ちに歯止めがきかない。
何の気なしに、ルイーズを抱き寄せるエドワードの手を受け入れられず、パシンッと音が響き渡る勢いで、ルイーズは払いのけた。
ハッと驚くエドワードの表情を見たルイーズは、これではいけないと首を左右に振る。
(自分の気持ちを適当に誤魔化してはいけない。しっかり向き合わなきゃ。エドワードの隣にいる幸せを、簡単に諦められない)
「ねぇ、何かあったの? わたしに何か隠していない?」
「あ、いや、何も」
目をそらしながら話すエドワードの姿。
それを見たルイーズは愕然とする。明らかに何かを誤魔化した彼へ、疑惑しかない。
「ウソよ、最近のエドワードは、なんだか変だわ」
「そんなことはないだろう。別に俺は何も変わっていないからな」
ムキになってウソを言うエドワード。
それを目の当たりにしたルイーズは、今にも泣きそうだ。
「わたし……、ずっと思っていた……。わたしは、エドワードとは全く釣り合っていないって。結婚する間際になって、慌ててマナーを学ばなきゃいけない妻なんて、恥ずかしいって、そんなの分かっているわ。なのに、どういうわけか、エドワードには何でも打ち明けられて、いつも一緒にいると楽しかった」
「ど、どうしたっ!」
いつもであれば、ルイーズへチョコを食べるなと言ったところで、強気に言い返しているはずだ。
想像していた反応と違うルイーズを見て、エドワードは動揺を隠せず、声が上ずった。
「エドワードに限って、誤魔化すことはないと思っていた。なのに……ひどいわ。別に好きな人ができたなら、正直に言えばいいじゃない。エドワードが言い出せないならわたしが決めるわ、結婚するのはやめましょう」
涙をこらえるルイーズは、エドワードを見ずに言い終え、部屋を飛び出そうとした。
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