【完結】突然の変わり身「俺に惚れるな」と、言っていたのは誰ですか⁉ ~脱走令嬢は、素性を隠した俺様令息に捕獲される~

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!

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第5章 祝福されるふたり

5-21 不穏な空気④

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 エドワードにとって全く予期していなかった、「結婚はやめましょう」の言葉。

 激しく混乱するエドワードは、慌ててルイーズを抱き止める。

「待て。その理由では、ルイーズを手放せるわけないだろう。ルイーズ以外にいとしい人はいない。これから他に現れても、一番はルイーズって決まっているからな」

「信じられない……。エドワードは愛人を作る前提で考えているの……。ひどいわ、わたしなら、何も言わない……。ううん、言えないと思っているの……」
 愛人を作ることを不誠実だと思いつつも、自分の生い立ちのせいで、それを否定しきれず、唇をかむルイーズ。

「違うから、落ち着けって」
「無理よ。姉だって……何年も昔に、わたしに甘いもの禁じてから、色んなことが始まったもの。ここでも、そうなることが分かって、見て見ぬふりで結婚したら、後悔するから」

 当時の面影もなく、今では健康的になったルイーズ。
 その彼女がいつも横にいるため、エドワードの中ですっかり薄れかけていた、ルイーズのかつての境遇。
 自分の気遣いが裏目に出た。何をやっているのだと、エドワードは自分を責めるように目を強くつぶった。
 そして、ゆっくりと申しわけなさ気に話し始める。

「悪い……、おなかに子どもがいるときに、チョコレートは食べ過ぎると良くないって聞いたからそれで、つい止めただけだ」

「ふーん、そう……。はぁぁーっ! ……って、どういうことっ!」

 初めは他人事のように、ルイーズは話を受け止めた。
 ……けれど、エドワードの言っているおなかは、自分の体を指すと気付き、ルイーズは目を丸くしていた。

「前に言っただろう。俺はのぞく気はなくても、素手で触れれば、相手の体の外側も内側も分かる。だから治療ができるんだ。いつだったか、その前の夜は感じなかったのに、朝になったらルイーズの中に何かがあって、少し考えてから意味が分かった。俺が先に知っているのは順番が逆だろうし、まだ、心臓の拍動もはっきりと感じる前だからルイーズには黙っていた」

「えっ、えっ、そうなの? エドワードは、ほかに好きな人ができたんじゃないの?」

「っな、わけあるかよ……、本当にあほだな。言っているだろう俺はルイーズしか心がかれないし興味はない。だけど、俺みたいな特異な男が怖くなって……、嫌になれば……、そのときは止めないが」

 首をかしげるルイーズは、きょとんとしている。
 真面目な顔で言い切る話が、まるで意味が分からない。まさかの妊娠。……自覚は一切ない。

 それよりも、出会ったばかりのエドワードは、自信たっぷりだった。
 なのに、どうしてそんなに弱気なのか、不思議でならない。

「エドワードのことは少しも怖くないけど、おなかに子どもって、全くそんな感じがしないわ。普通、気持ちが悪くなるんじゃないの」
「間違いない……。そのうちルイーズも何か感じるんだろう。ルイーズが気付くのを待っていたんだが、話がややこしくなった」

 エドワードは、頭をポリポリとかいて、決まりが悪そうにている。
 ここ最近のエドワードが、うれしそうにしていた理由が2人の子ども。
 ルイーズは、それなら早く言うべきだ。悩んでいた時間を返して欲しいとエドワードを責め立てる。

「もーう! わたしに思ったまんまのことを伝えるのがエドワードでしょう。突然、隠しごとをするから、おかしくなるのよ」

「ルイーズが俺のことを、デリカシーがないって言うからだろう。自分の口から俺に報告したいんじゃないかと思って、気遣っただけだ」
 いつもの強気な口調で、はっきりと言い切ったエドワード。
 それを聞いたルイーズは、エドワードの不可解な態度の理由が分かりホッとして、力が抜けた。

「なんだ……良かった。もう、嫌われたのかと思った……」

 エドワードは全身でルイーズを包み込むと、より一層、愛おしそうに抱きしめる。
「俺の気持ちを疑うなんて、本当に馬鹿だなルイーズは……。俺とルイーズは一緒だろう」

「……何が」
「ルイーズは、何も持っていない、ルイーズの中の俺を好きになってくれたんだろう。宰相の息子でも、ヒーラ-でもない俺のことを……」
 ルイーズは、こくんと小さくうなずいた。

「その2つがなければ、正直、俺なんかのどこが良いのか分からない。……むしろ何でも見透かす嫌な男じゃないかと、……不安でたまらない。……俺が好きになったルイーズは、俺の名前で群がっていた令嬢たちとは違うからな。嫌われないように、良い男に見せたかった。俺が見えを張ったせいで、ルイーズを不安にさせて、ごめんな」

「エドワードでも、弱気なことを言うのね。見えなんか張らなくてもいいのに。わたしは、そのままのエドワードが大好きだから」
「俺も……、あほのルイーズが、かわいくて仕方ないから、そのままでいい」
「はぁぁーっ! 聞き捨てならないわ」

 まだ、悪阻つわりのないルイーズは、何となく他人事のように、自分の妊娠を知らされた。
 いよいよ、2人の結婚式……。

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