俺がモテない理由

秋元智也

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第四十六話 勇者である事

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いつも女性達に囲まれても、顔色ひとつ変えない
誠治が真っ赤になって照れるなんて、これほど面
白い事はなかった。

冷静で落ち着きがあって、大人なイメージがあっ
た。

それに比べて、俺はいつも誠治と比較対象にされ
ていた。

背も高くないし、目つきも悪い。
口の開けば、悪態をついてしまう。

別に好きで言ってるわけではない。
ただ素直になれないだけなのだ。

俺が好きになった女性はいつも知的で可愛かった。

だが、例外なく彼女達は皆、誠治に近ずきたくて
俺に寄ってくる奴しかいなかったのだった。


前から情報屋との橋渡し役の人間が歩いてきた。

「王の拘束と、周りの騎士の排除は終わったぞ」
「心得たと。そして……こちらへ」

案内の為に来た青年についていくと、古びた屋敷
についた。

陸と誠治は当たり前のように窓から入る。
そして、長い夜が訪れたのだった。

いつもどこからこんな屋敷を見つけてくるのだろ
うと思うほど、古びており誰も近寄らない。
だからこそいいのかもしれないが、探す方は結構
大変だったりする。

「なぁ~、誠治は勇者辞めたくならねーのか?」
「どうしたの?陸は辞めたいの?」
「いや。俺は……、誠治がどう思ってんのかなっ
 てさ、1箇所にとどまって、女作って、ここで
 幸せに暮らすって方法もあるだろ?」
「ないよ。僕には大事な人がいるから、その人以
 外を好きになるなんてありえないよ」
「お……おう…………」

いつも女性にチヤホヤされていた誠治が真面目な
顔で、そんな言葉を言うとは思わなかった。

「でもさ、元の世界に帰れないかもしれないんだ
 ぞ?それでも………」
「それは勇者として魔王を討伐してからでも遅く
 ないんじゃない?」
「違うっ、そうじゃなくてだな……実は…」

言いかけて前の少年の足を止めた。

「こちらです。どうぞ、お入りください」
「おぉ…」
「案内ありがとう」

ぶっきらぼうな言い方の俺と、しっかりお礼をい
う誠治。
こんな誠実な奴に思われたとしたら……きっと、
大事にされるんだろうなぁ~と考えてしまう。

情報屋トーテンは、長い髪の女性だった。
綺麗な澄み切った声は、まるで精霊でも宿してい
るかと思えるほど美しく感じた。
顔が見えたわけではないけれど、綺麗だと思える
のは不思議だった。

「魔王城の位置ですが……こちらの地図をお持ち
 ください。それと、この先にある街ですが……」
「結構距離があるんですね…」
「問題がありまして…」

言葉を切ると、一呼吸してから地図に指を指す。

「今、ここには半数の人間と魔族が一緒に暮らし
 て居ます。ただ、仲良くと言うわけではなく…」
「サキュバスの魅了にかかってるって事か?」
「えぇ、そうです。もうご存知でしたか!さすが
 勇者様一行です。そうなのです。前はこんな事
 はなかったのですが、サキュバス達が人間達を
 魅了にかけて思い通りにさせているのです」

いきなり言い出した俺に誠治は驚いていた。
それもそうだろう。
サキュバス達が街を襲って、完全に占拠している
という情報はここで初めて聞く事になるのだから。

街の人達を助けるべく、向かうというのが過去の
旅のルートだった。

だが、そのせいでサキュバスを全滅させる事にな
ってしまう。
なぜなら、サキュバス達が人間達を次から次へと
殺してしまうからだった。
それは、勇者達である俺たちに抵抗したからに過
ぎないのだが……。

最後は街ごと燃やし尽くし、誰一人助からないと
いうのが、実際にあった事だった。

だが、それは魔王を護る為であって、実は魔王が、
争いを好まず、平和的に解決したいと思っている
事など、誰もしらない。

魔王に会った者だけが、知っている事なのだ。

下っ端の方は、勇者を倒して魔王様に褒めてもら
おうと思っている魔族ばかりだったからだ。

ここでナオの両親は死ぬ事となったのだ。

ネロは確か、今は魔王の使いでよその国の偵察を
任されていたはずだ。

後に、サキュバスで生き残ったのはネロとナオだ
けとなったのだった。

「陸…陸ってばっ!聞いてる?」
「あぁ!なんだった?」
「やっぱり聞いてないよね?もう、陸は色々知っ
 てるみたいだけど、どこで聞いたの?ずっと僕
 と一緒にいたのに?」
「秘密だ。それよりも魔王の目的は何だと思う?」

いきなりの俺の質問に誠治もトーテンも不思議そ
うに首を傾げた。

「聞くところによると、魔族領は作物が育ちにく
 い環境だとか。そこで人間達の住む村や街を襲
 い領土を拡大しているのだとか……」
「そうだな~、昔からお互いに領土問題で揉めて
 るって言ってたから積年の恨みみたいなことか
 な?」

やっぱり情報屋でもそれ以上は知らないらしい。

「土地は、土地改良して、魔法の土魔法で土壌を
 変える事はできるし、作物も苗を流通させれば
 問題は解決するだろう?それに……恨みと言っ
 ても、それは勇者が召喚される度に攻めていく
 んだから、それが問題なんじゃねーの?」

俺はぶっきらぼうに話すと、情報屋のトーテンが
いきなり笑いだしたのだった。

「面白い考えを持っておるものだ。さて、それで
 は聞くが魔王を倒さずして平和がくるとでも?」
「来るね、魔王と和解すればいい。話せば分かる
 って言うだろ?誰だって相手を傷つけるよりも
 話し合いで解決できるならその方がいいんじゃ
 ねーのか?」
「それはいい。そんな事が実際できればどんなに
 いいか」

挑発するようにトーテンが言うが、俺は至って真
面目だった。
未来はそうなるのだから、間違っては居ないのだ。



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