僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也

文字の大きさ
23 / 75

23話 お兄ちゃん

しおりを挟む
試験も終わって、夏休み前の宿題と課題。
諸々のセットを貰うと、こっちのがため息が出そう
だった。

受験生にくらい、宿題を減らしてもいいと思う。

今から忙しくなるというのに…。

一式鞄にしまうと、体育館で校長の挨拶を聞いて午
前中には学校を後にしたのだった。

「水城~、ちょっとゲーセン寄ってかね~?」

「いや、今日は図書館でしばらく勉強してくよ。」

「真面目だな~、俺はもう勉強はいいや。補習だけでも
 うんざりだしさ~」

綾野は手近な大学を受けると言っていた。
もし、受からなければ、実家を継ぐ。

酒屋の息子である綾野はどうにも高校卒業して実家を継
ぐか大学まで行ってから実家を継ぐかで暫く親と喧嘩し
た事があるくらいだった。

地元ではそこそこ有名な酒蔵で跡取りは綾野家には長男
と長女の二人しかいないと聞いていた。

綾野自身、酒に興味がなく、跡を継ぐ事に反対だった。
長女はその逆で、すぐにでも継ぎたいと今中学生ながら
にお酒について勉強を始めているときく。

父親がそれを認めるまでは、綾野自身のらり、くらりと
かわすつもりだという。

「本当にそれでいいのか?」

「いいんだよ。俺は別にやりたい事もねーけどさ、あい
 つが継ぎたいっていうなら、それを譲るのが兄っても
 んだろ?」

「そっか…」

「そういえば、水城も兄ちゃんできただろ?俺のよう
 に優しい兄ちゃんか?」

「それはどうかな…変な人だよ。確かに頼りにはなるけど」

「ふ~ん。ま、いいや。じゃ~、またなっ!」

綾野と別れると市の図書館へと向かった。
静かで勉強に向いていた。

前に郁也が言っていた自習室に来ると個室っぽいせいか、
静かで誰も居なく感じて勉強には最適だった。

窓から差し込む光は強い紫外線を帯びていて、カーテンを
締める。

窓はクーラーをつけるよりは自然の風のがいいと思うと少
し開けておく。

「うん、結構快適かも…」

久しぶりに一人で自習している気がした。
家ではなんだかんだと、理由をつけては郁也が側にいたし、
手が止まれば必ずと言っていいほど、歩夢の手元を見て説
明をしてきた。

「本当に、あの人は何がしたいんだろう……」

自分に興味がなさそうな歩夢が気に入らないのだろうか?
妹の美咲は一目で兄の郁也にべったりになったし、街を歩
けば知らない女性から声をかけられていた。

歩夢の存在は珍しく思ったのだろうか?

だったら……そっとしておいて欲しいのに。

あまりに勘違いしそうなほど、じっと見つめられたり、毎
回可愛いなど、男の歩夢には似つかわしくない言葉だった。

それを何度も言われれば流石に恥ずかしくなる。
勘違いだと分かっていても、思い上がりそうになってしま
う。

歩夢自身、人に気持ち悪がられるこの力のせいで誰も信じ
る事ができずにいた。

みんな、嘘ばっかり………。

昔からそう思ってきたのだ。
だから、今は嘘を言われない綾野とつるむ事が多いのだ。

平凡な歩夢には周りからちやほやされる人の気持ちなど分
からなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】恋愛初学者の僕、完璧すぎる幼馴染に「恋」を学ぶ

鳥羽ミワ
BL
志村春希は高校二年生で、同い年の幼馴染・須藤涼太のことが大好き。その仲良しぶりといったら、お互い「リョウちゃん」「ハルくん」と呼び合うほどだ。 勉強が好きな春希には、どうしてもひとつだけ、全く理解できないことがあった。それは、恋心。学年一位の天才でもある涼太にそのもどかしさを愚痴ったら、「恋」を教えようかと提案される。 仮初の恋人になる二人だけど、春希が恋を知ったら、幼馴染の友達同士のままではいられない。慌てる春希に「パラダイムシフトを起こそうよ」と提案する涼太。手を重ねて、耳元で囁く涼太。水族館デートに誘う涼太。あまあまに迫られて、恋愛初学者の春希が陥落しないはずもなく……。 恋を知ったら友達でいられない。でもこの思いは止められない。 葛藤する春希の隣で涼太だけが、この関係は両片思いだと知っていた。 幼馴染の溺愛恋愛ケーススタディ、開幕! 最後はもちろんハッピーエンド! ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうへ投稿しています

小石の恋

キザキ ケイ
BL
やや無口で平凡な男子高校生の律紀は、ひょんなことから学校一の有名人、天道 至先輩と知り合う。 助けてもらったお礼を言って、それで終わりのはずだったのに。 なぜか先輩は律紀にしつこく絡んできて、連れ回されて、平凡な日常がどんどん侵食されていく。 果たして律紀は逃げ切ることができるのか。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。 一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。 ✤✤

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない

豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。 とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ! 神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。 そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。 □チャラ王子攻め □天然おとぼけ受け □ほのぼのスクールBL タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。 ◆…葛西視点 ◇…てっちゃん視点 pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。 所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。

処理中です...