ヒロイン？ 玉の輿？ 興味ありませんわ！ お嬢様はお仕事がしたい様です。

第三章

ナタデココ革命

    儲けた。

    タピオカブームの影でついでにアピールしていたウチの特産にもスポットが当たり、広めたレシピも人気になって商品の売れ行きが明らかに良くなった。

    そして。
    待ちに待った報告が上がってきた。

    「こちら、ナタデココの完成品です。ご試食下さい」

    幸い、この島には“発酵”を利用して作る加工品は結構色々あり、その概念は元々浸透していた。
    だから、菌さえ見つかれば後は簡単。……その菌を発見するのが一番難しいのだが、そこは私の精霊姫として、精霊達に聞いてみた。

    そうして聞き出した候補からグレスト主導で実験を繰り返し――今に至る。
    見覚えのある、濁りのある白っぽい透明の、正方形のそれ。
    まず一つ指で摘まんで口に放り込む。

    ――寒天とはまた異なる、あの独特の食感。ココナッツの微かな甘味。

    「うん、美味しいわ。特に食感は百点満点ね。味は……基本シロップに漬けてヨーグルトやゼリーと食べるものだから素だとこんなものかしらね？」

    その後、ヨーグルトやゼリーに入れたナタデココをアクアやグレストと共に頬張った。

   「うお、なんだこれ、このナタデココ？    ってのがシロップ吸ってて噛むと甘い汁が出てくる。こんにゃくとも寒天とも違う歯ごたえも面白いし、これうめぇ！」
    グレストに鍛え直されて、アクアもしっかりした食レポが出来るようになっていた。

    ……そして。
    島で売り出したところ、たちまち行列の出来る人気商品となった。
    その勢いでタピオカと共にデザートとして大陸で出したら、タピオカを遥かに上回る勢いでブームが巻き起こり、島のココナッツだけでは足りず、他所からココナッツを輸入し、出来たナタデココを輸出する流れに落ち着くまで結構大変だった。

    けど、お陰で一緒に売り出したヨーグルトとアロエも普及し、この辺境伯領は甘味で有名な領地になりつつあった。

    何もない田舎領地に来たがる貴族なんて、これまで居なかった――というか当主すら戻って来ない領地に来たいと言い出す貴族がぽつぽつ現れだしていた。

    「なら、無人島一つリゾートとして開発するか」
    流石に他所のお貴族様を島の領民の生活圏に入れる訳にはいかないからね。

    「ですが、工事費用は……」
    渋る家令を説き伏せる。
    「流石に建物はプロに頼む必要があるけど、整地は私が魔法でやるからノープロブレムよ。計画段階ではプロの意見も聞くけど」

    島一つ使ったリゾート計画が始動する。

    「その暇があるならもう少し勉強にお時間を裂いてもよろしいのでは？」
    「あら、最低限はちゃんとこなしてるわよ。お勉強ばかりしていても仕方ないもの。それに実践して初めて身に付くものだってあるはずよ」
    丸一日屋敷で勉強とか冗談じゃない！

   「リゾート計画に必要な知識の勉強って言うなら別だけど、王子の嫁になる為の勉強なんて最低限で十分よ」