ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜

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第四章

しばしの別れ

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    「俺?    俺は行かねえよ。行ってもする事ねぇし、俺はこの島の海で漁師の腕を磨くんだ」

    グレストは一緒に行くのだから、と、もう一人の幼馴染みにも声をかけたところ、アクアは一瞬たりとも悩む素振りも見せずにそう言いきった。

    ……まぁ、脳筋だからな。彼から好きに走り回れる野山を奪えば、青菜に塩を振った様になりそうな気すらする。
   「私が学校に行ってる間は、これまでみたくは精霊のご加護が無くなるけど大丈夫?」
   「……影響はそりゃあるだろうけど。精霊姫のお前が居る今の方が本来イレギュラーなんだ。補助なしでどこまてやれるか。まぁ頑張ってみるさ」

    ――との事で。

    王族が帰り、共に来たお偉いさんが島の視察を終えた後、私とグレストは本格的に引っ越しと入学準備を始めた。
    側妃様には「サポートを」と言われたけど、日々の生活にそんなものは必要無い訳で。あの王子様が阿呆な事をしでかさない限りは頼る事もないだろう。
    残念な事に奴がしでかさない保証はなく、むしろ乙女ゲームが始まる事で更なる厄介事の予感しかしないのが憂鬱なんだけど。

   「何で貴族が行く学校は決まってるのかしら。私もグレストが通う職業訓練学校に通いたいわ、土木か食品科辺りに」
   「お嬢様の様な貴族は希ですから。……流石に先日の王子様みたいなのばかりとは思いたくありませんが、それでも普通は貴族と一緒なんて、庶民は胃を痛めますよ」

    ……それもそうか。
    意識的には日本人の元ド庶民な私は今から頭が痛い。

    「あんな奴らばっかの中で勉強とか、俺はやっぱ島で親父に殴られてる方がマシだわ。グレストはまあ適当に頑張れ」
    「適当?    せっかくの機会なんですから全力で学べる事は全部学んで来ますよ。僕の行く学校には貴族は居ませんし。……田舎者と見下す馬鹿など直ぐに見返してやりますよ」
    「黒い!    笑顔が黒い!    お前の本性知らずに虐める奴に俺、今から同情するぜ」

    「僕はともかく、お嬢様が大変ですよね。家とお金のサポートもして貰っている事ですし、僕で出来ることなら可能な限りは力になりますから、頑張りましょう」 
   「うん。本当切実にお願いします……」

   「おおい、お嬢様、そろそろ船が出るぞぉ!」
   「では。行ってきますね」
   「おう」
   「……しばらく留守にするって、精霊達には言ってあるけど。アクア、日々のお祈り欠かすんじゃないよ」
   「分かってるよ」

   「……じゃ、行ってきます」
    帆が風を受けて膨らみ、船がゆっくり港から離れていく。

    これだけなら、いつもの光景だけど、隣に居るのはアクアではなくグレストで。
    次にこの光景を見られるのは何時になる事やら。

    運命の時が、すぐそこまで迫っていた。
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