ヒロイン？ 玉の輿？ 興味ありませんわ！ お嬢様はお仕事がしたい様です。

第六章

作戦会議

    「お願いします、協力して下さい！」

    通常授業第一回目が一通り終了した、その週末に。
    私はグレスト経由でアークノアにお誘いの手紙を渡し、少し高級なカフェの個室を予約し貸し切った――その部屋で。
    只今土下座中にございます☆

   「え、ちょっと、やめてよ！」
   慌てるアークノア。
   ノーコメントで一人紅茶を啜るグレスト。

   「実はかくかくしかじかでしてね……」
    先週、普通にしてれば良いよと彼は言ってくれましたけど、そうも言っていられない事情をブッ込まれた事を説明。
   「と、言う訳で。アレの攻略法……というか大人しくさせつつあまり深く関わらない方法を考えたけど、一人で考えても迷走するばっかりでね……」

    この一週間、勿論奴は大人しくなどしていなかった。
    私が授業中に教師に当てられ答えたのを誉められれば憎々しげに睨み付け、その直後の休み時間に「いい気になるなよ！」と一々ケチをつけに来る。
    それを見ている悪役令嬢、ハルク家のご令嬢がまたギラギラ憎々しげに私を睨み付けてくるという……。

    受け答えだって、別に「悔しかったらアンタも勉強したら？」等と嫌みったらしく言うでもなく、「王子として目立っているのだから、周囲に少し譲ることも大事ですよ」とかわしてみたけど……。
    こんなの口説いてる内に入らないよね？
    これで睨まれるんだよ？

   「と、言う訳で。一緒に作戦を考えて下さい、お願いします！」

   「俺は貴族の事――お嬢様や商売に絡まない社交の事とかあまりよく分かりませんが、お力になれる事があるなら、いくらでも協力しますよ」
    グレストは即座に請け負ってくれた。

   「ぼ、僕もっ！    ……迷惑かけてるのは僕の身内だし、その関係者なんだし当然力を貸すよ」

    心強い味方を得たところで、甘いものをいただきながら早速作戦会議を始める。

    ああ、ナタデココ入りあんみつうまうま。
    はい、ここウチの系列店です。お陰さまでナタデココ、一時のブームは沈静化したけれど、既に定番商品として馴染んで良く売れています。ありがとうございます。

    ちなみにグレストはナタデココヨーグルト、アークノアはタピオカ入りパフェを食しております。

    「あいつはねぇ、基本甘やかされの我が儘坊やだから。流石に王や兄上の前では取り繕うけど、上から押さえ付けられるのが大嫌いでね。けど煽てりゃ豚も木に登るって言うけど、耳障りの良い言葉は大好きでね。簡単に登れる木ならいくらでもするする登る。けど、自分の能力が足りなくて登れないと分かったら途端に癇癪を起こすんだよ。本当に困った奴だよねぇ？」

    ……ああ、流石兄弟。
   やはり彼を呼んで正解だったな。