ヒロイン？ 玉の輿？ 興味ありませんわ！ お嬢様はお仕事がしたい様です。

第十章

苦楽の苦楽

　始業式の翌日より早速授業が始まるとの事で、始業式の後私だけ残され急遽時間割設定が行われた。
　馬鹿正直に、進級及び卒業に必要な単位だけを取るつもりなら時間割は３分の１が黒くなるだけだ。

　……この学校の授業では宿題も課題も容赦なく出るし、予習と復習しなければあっという間に授業について行けなくなり、結果試験で悲惨な点を取って結局単位を落とす結果になりかねない。
　それを考えたらその量でもひぃひぃ言う者も居るだろうけど。せっかくこの学校に通えるからには学びたい事は山とある。
　最低限の単位だけで良いという考え方の者も、もしもを考え他にも幾つか授業をとって単位に余裕を持たせるのが普通だ。……ギリギリで取っててうっかり単位を落として進級や卒業出来なかったら恥ずかしいからねぇ。

　必修単位と選択単位、それその授業の行われる曜日と時限を確認しながら時間割を組んでいくと、９割以上が黒くなった時間割が完成した。

　――結果。

　最初の一週間が終わった週末。
　「う～、流石に疲れたよ……」
　毎日大量の宿題と課題、そして予習復習にと勉強三昧の平日を過ごし、今もまだ机にかじりついている。

　「まぁ、楽しいから良いんだけど。けど、疲れる……」
　いやいやまぁ、あの問題児に無意味に疲れさせられるよりは心地の良い疲れであるし、これは自分で望んだ事なんだから逃げ出したいとは思わないけどね。

　これまで忙しいと言ってもそっちの意味では暇してたから。それがきっちり反転して、まだそれに頭と体が慣れきらないからこそ今は“辛い疲労”の気がしてるだけだって、分かってはいるんだけどね……。

　向こうは楽だったけど辛かった。
　こちらでは、辛いけど楽しい。
　似ている様で大違いのこの違い。

　今週はまだ辛いと感じる割合が大きいけど、幸い体力はある方だしすぐ慣れるよね……？

　「明日の放課後は図書館に行きたいな」
　結局中途半端に抜けてしまった貴族学校の図書館委員。委員はともかく図書館の設備、あれだけは良かっただけに、こちらの図書館が気になる。
　実用書の蔵書量の話だけならこちらに軍配が上がる事は事前に分かっているけど。

　「あ。それとご報告です。例のタピオカの食事メニュー、なかなか好調な滑り出しだと。あの様子で分かってはいましたが、具体的な数字で裏付けが取れました。その流れでこれまで評判の良いタピオカ料理を出していた店にも客足が増えているとか。逆に不味い店には元々鳴いていた閑古鳥が断末魔を上げているとか。潰れるのはもう時間の問題でしょうね」

　――新たな日々の始まりとしてはどうやら上々の滑り出しの様だった。