ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜

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第十章

ライバルと切磋琢磨

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 「……ねぇ、あれは何?」

 それは、学校が始まってそろそろ一月が経とうかというある日の事。
 前の授業が選択授業で別教室での講義、そして次は自分達の教室での必修授業、その為に戻って来たんだが……。これは……。

 私の視線の先、教室の中で繰り広げられる光景に私はとてもコメントに困っていた。
 そこに居るのはグレストと“アーク”。

 それは、良い。クラスメイトなんだから居て当たり前だしね。……揃って見えない炎をまとって闘争心も顕にピリピリしていなかったらね?

 「フッ、君にこれが出来るかい?」
 とアーク――もといノアがグレストに見せ付ける様に縦笛を吹き鳴らす。……リコーダーによく似たその楽器、その音階の穴を、よくぞそれだけ機敏に手指が動くものだと感心する様な、早弾き(笛だから早吹きとでも言うのか……知らんけど)を披露する。

 するとグレストも不敵で挑戦的な微笑みを浮かべ、それをそっくり真似て見せる。
 「簡単ですね。貴方こそ、これについて来れますか?」
 と挑発する。

 「やるね、けど舐めるなよ。その位は楽勝だよ」

 ――そんなやり取りを繰り返しながら、笛を吹き鳴らしつつ熱気とピリピリ感を音と共に教室に撒き散らしているのだ。

 「ああ、うん。前の授業が音楽だったんだよ、あの二人。で、今はあの楽器の練習が課題な訳。授業取ってる子は皆必死に練習してたんだけどさ、アーク君は経験があるのか他より上手くて、出来ない子にアドバイスとかくれてたんだ」

 ……まあね。彼はここでは隠しているけど王子様だからね。楽器の嗜みの一つや二つはそりゃああるだろうね。

 「グレスト君は、楽器に触るのも初めてみたいだったのに、すぐに上手に吹けて皆に凄いって言われてて」
 まあ、田舎の平民だからね。お祭りで打楽器や横笛に触る事は無いに等しい。
 けど彼は頭が良いだけじゃなく小器用な所があるから……。
 それが楽器の才能に繋がるとは思わなかったけど。

 いや、器用だけ言ったらアクアも不器用ではないんだけどね。なんせ奴は脳筋であるからして、身体で覚えさせないといけないんだよな……。

 いや、それは今は良いんだ。
 「それでどうしてあんな事に……」
 「そこがよく分かんないんだけど、あの二人、仲が悪い訳じゃないんだけどさ、他の課題とかでも何かと競争してるから。今日のもその延長戦じゃないかと……」

 ライバル同士の切磋琢磨は悪い事じゃないんだけど。
 ……仕方ないな。

 「アーク、グレスト! いい加減にしなさい!」
 結局私が仲裁に入る結果となったのだった。
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