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第十一章
優秀過ぎる右腕
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コイツ、デキる……!
「この書類、これはどう処理する?」
初めて見る書類は勝手に判断したりせず、まず私に見せて質問して来る。
二度目は基本その指示通りにこなして、その後私に確認を取る。
「この書類はこれで良かったかい?」
そして三度目以降はほぼ完璧に、場合によっては「これはこうした方が良いんじゃないかな?」と、提案までしてくる。
それに対して、私が反対しても、その理由が納得いくものであれば「成る程、確かにそうだね」と素直に引き下がる。
納得がいかなければ納得出来るまで議論する。
結果、却下した物もあったけれど、それについても一度納得できれば後からごちゃごちゃ言う事も無い。
そして、そうして却下したのは大抵がこの島ならではの理由があるものばかりで、それ以外については大変有用な意見で、次回よりやり方が変わった物も多々あって。
「嘘でしょ……。あの山脈が、あとこの富士山一つなんて……」
たった一日の成果としては信じられないペースで仕事が片付いた。私一人でやってたら、少なく見積もっても明後日までかかってまだ半分山脈が削れただけだったろうに。
グレストも頭は良かったけれど、彼に領政の書類を任せる訳にはいかなかったから。
そしてここにあるのは家令であっても手の出せない、領主一族の実印が必要な書類。
最後の判押しは勿論私がしたけど、その直前までああも見事に書類を纏めてくれるとは。
影執事は家令の仕事以外にも掛け持ちしてるし、そもそも家令って仕事自体多忙なものだから、そうホイホイ頼れなかったし……。
「こんな楽をしたの、仕事を始めてから初めての事だわ」
うーん、と椅子に腰掛けたまま伸びをする。
「このペースなら明日の午前中に終わりそう。おかげで今年のお正月は机に残した大量の書類に急かされて、ご馳走を楽しむ余裕もなく……って事態は免れたわ」
これは、グレストもアクアも知らない事実。
流石に大人達は察してるだろうけど。
だってこれ、本来なら当主の仕事。或いは跡継ぎの仕事。……私も跡継ぎっちゃあ跡継ぎだからこうして仕事をしてるんだけど。
普通はお祖父様かお父様がやらなきゃいけない仕事で、学生の私がやる仕事じゃないんだ。
「……酷いのは知ってたけど、まさかここまでとはね。今頃城では新年会の準備が着々と進んでるけど、当然彼らもそこに出席して、また悪評を撒き散らすんだ。君が、こんなにも必死になって仕事をした成果を踏みにじって」
だけど、そんな風に言ってくれたのは――彼が、初めてだった。
「この書類、これはどう処理する?」
初めて見る書類は勝手に判断したりせず、まず私に見せて質問して来る。
二度目は基本その指示通りにこなして、その後私に確認を取る。
「この書類はこれで良かったかい?」
そして三度目以降はほぼ完璧に、場合によっては「これはこうした方が良いんじゃないかな?」と、提案までしてくる。
それに対して、私が反対しても、その理由が納得いくものであれば「成る程、確かにそうだね」と素直に引き下がる。
納得がいかなければ納得出来るまで議論する。
結果、却下した物もあったけれど、それについても一度納得できれば後からごちゃごちゃ言う事も無い。
そして、そうして却下したのは大抵がこの島ならではの理由があるものばかりで、それ以外については大変有用な意見で、次回よりやり方が変わった物も多々あって。
「嘘でしょ……。あの山脈が、あとこの富士山一つなんて……」
たった一日の成果としては信じられないペースで仕事が片付いた。私一人でやってたら、少なく見積もっても明後日までかかってまだ半分山脈が削れただけだったろうに。
グレストも頭は良かったけれど、彼に領政の書類を任せる訳にはいかなかったから。
そしてここにあるのは家令であっても手の出せない、領主一族の実印が必要な書類。
最後の判押しは勿論私がしたけど、その直前までああも見事に書類を纏めてくれるとは。
影執事は家令の仕事以外にも掛け持ちしてるし、そもそも家令って仕事自体多忙なものだから、そうホイホイ頼れなかったし……。
「こんな楽をしたの、仕事を始めてから初めての事だわ」
うーん、と椅子に腰掛けたまま伸びをする。
「このペースなら明日の午前中に終わりそう。おかげで今年のお正月は机に残した大量の書類に急かされて、ご馳走を楽しむ余裕もなく……って事態は免れたわ」
これは、グレストもアクアも知らない事実。
流石に大人達は察してるだろうけど。
だってこれ、本来なら当主の仕事。或いは跡継ぎの仕事。……私も跡継ぎっちゃあ跡継ぎだからこうして仕事をしてるんだけど。
普通はお祖父様かお父様がやらなきゃいけない仕事で、学生の私がやる仕事じゃないんだ。
「……酷いのは知ってたけど、まさかここまでとはね。今頃城では新年会の準備が着々と進んでるけど、当然彼らもそこに出席して、また悪評を撒き散らすんだ。君が、こんなにも必死になって仕事をした成果を踏みにじって」
だけど、そんな風に言ってくれたのは――彼が、初めてだった。
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