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第十二章
秘密の暴露
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「ノア……?」
影教師に連れられやって来たその部屋の扉の前で、これまた着飾らされたノアが一人で待っていた。
ただでさえ美系の彼が着飾れば、お伽噺から抜け出してきたキラキラ王子様そのものだ。
――が。
今は、その目の前の扉の方が気になって仕方ない。
そこは。
王との謁見の間の扉に比べれば粗末な造り。が、綺羅綺羅しい造りでないだけで、重厚さと言う意味ではこちらの方が上な気もする。
明らかに重要な場所の扉。
「ノア、ここは……」
「ここは、議会室。王と、全貴族当主が集い国の運営について議論を交わす、国の中枢の要の一つだ」
私の問に答えたノアの回答に私はゴクリと唾を飲み込んだ。
そんな場所に、何故私が?
卒業した以上、間もなく襲爵の儀をしなくてはならないのは分かっているけど。少なくとも今この時この瞬間にはまだ正式に当主を継いだ訳でもない小娘が何故そんな場所の前に連れて来られなくてはならないのか。
それは、ノアだって。王子ではあってもこれまで隠されて育てられた王子で、今日まではまだ役職にすら就いていない学生だったのだ。
「王のお召だからね。さぁさ、二人揃って入るんだよ」
ほれ、と無責任に微笑む影に背中を押される形で議会場に放り込まれる。
「なっ、」
しかし、それに講義する間もなく無情にも扉は閉ざされ。
議会場に座る百戦錬磨の貴族家の当主達、王と――その隣に座るのは王太子、だろうか? 彼らの視線が突き刺さった。
逃げ場は――無い。
縋る物は――咄嗟に差し出されたノアの手だけ。それらの視線から庇うように一歩前に出て私を隠してくれる。
少しだけ冷たいノアの手が無ければ私はパニックになりそうな自分を抑えられたか分からない。
「ふむ、では改めて正式に紹介するとするか。この度正式に第三王子に繰り上がったノアだ。先だって修道院入りした側妃の息子である」
ちょっと待て。
先の話ではノアをアゼルと名乗らせる、と。そう聞いていたはずなんだけど? どう言う事?
「既に元第三王子は、精霊姫の婚約者であったが、愚かにも精霊姫を貶め精霊の怒りを買った。その咎で婚約破棄をし、地方で蟄居を命じていた。しかし、この度それを逃れ愚かにも王都の学園に姿を表し精霊姫を殺害せんとし、それを庇ったこれが負傷した。元の身分があろうと看過出来ぬ所業ゆえ、近日中に処刑に処すことをすでに法務大臣と相談の上決定している」
混乱する私の耳に、淡々と語る王の言葉が右から左に流れて行く。
けれど、一つだけ。理解した事は。
アゼルの処刑が確定した、と。
ムカつく男ではあったが、やはり処刑されると聞けば複雑な気分にもなる。ましてやノアにとっては双子の兄弟だ。
私は繋いだノアの手を強く握り返した。
影教師に連れられやって来たその部屋の扉の前で、これまた着飾らされたノアが一人で待っていた。
ただでさえ美系の彼が着飾れば、お伽噺から抜け出してきたキラキラ王子様そのものだ。
――が。
今は、その目の前の扉の方が気になって仕方ない。
そこは。
王との謁見の間の扉に比べれば粗末な造り。が、綺羅綺羅しい造りでないだけで、重厚さと言う意味ではこちらの方が上な気もする。
明らかに重要な場所の扉。
「ノア、ここは……」
「ここは、議会室。王と、全貴族当主が集い国の運営について議論を交わす、国の中枢の要の一つだ」
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そんな場所に、何故私が?
卒業した以上、間もなく襲爵の儀をしなくてはならないのは分かっているけど。少なくとも今この時この瞬間にはまだ正式に当主を継いだ訳でもない小娘が何故そんな場所の前に連れて来られなくてはならないのか。
それは、ノアだって。王子ではあってもこれまで隠されて育てられた王子で、今日まではまだ役職にすら就いていない学生だったのだ。
「王のお召だからね。さぁさ、二人揃って入るんだよ」
ほれ、と無責任に微笑む影に背中を押される形で議会場に放り込まれる。
「なっ、」
しかし、それに講義する間もなく無情にも扉は閉ざされ。
議会場に座る百戦錬磨の貴族家の当主達、王と――その隣に座るのは王太子、だろうか? 彼らの視線が突き刺さった。
逃げ場は――無い。
縋る物は――咄嗟に差し出されたノアの手だけ。それらの視線から庇うように一歩前に出て私を隠してくれる。
少しだけ冷たいノアの手が無ければ私はパニックになりそうな自分を抑えられたか分からない。
「ふむ、では改めて正式に紹介するとするか。この度正式に第三王子に繰り上がったノアだ。先だって修道院入りした側妃の息子である」
ちょっと待て。
先の話ではノアをアゼルと名乗らせる、と。そう聞いていたはずなんだけど? どう言う事?
「既に元第三王子は、精霊姫の婚約者であったが、愚かにも精霊姫を貶め精霊の怒りを買った。その咎で婚約破棄をし、地方で蟄居を命じていた。しかし、この度それを逃れ愚かにも王都の学園に姿を表し精霊姫を殺害せんとし、それを庇ったこれが負傷した。元の身分があろうと看過出来ぬ所業ゆえ、近日中に処刑に処すことをすでに法務大臣と相談の上決定している」
混乱する私の耳に、淡々と語る王の言葉が右から左に流れて行く。
けれど、一つだけ。理解した事は。
アゼルの処刑が確定した、と。
ムカつく男ではあったが、やはり処刑されると聞けば複雑な気分にもなる。ましてやノアにとっては双子の兄弟だ。
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