ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。

彩世幻夜

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第十二章

ノアのお披露目

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 「……所で。これまで彼の事を正式に紹介下さらなかった理由は、一体どういったものなのでしょうか? その理由次第では我らはその方の事を信用できませんが」

 王の発言の中、しばし息を継ぐのに言葉を切り――その隙に、議会席に座る貴族達を代表して声を上げた男がこちらを厳しい眼差しで睨む。

 「ああ。……それについては我が王家の血に依る理由があったのだ。我が王家の血の由来を、そなた等は当然知っておろう?」

 王家に吸血鬼の血が入っていることは、少なくともこの議会室に居る者達なら知っていなければならない情報だ。
 当然皆、戸惑いながらも頷く。

 声を上げた当人もまた、
 「末端の貴族や庶民ならともかく、初代から国と王家に忠誠を誓う我がレオニード侯爵家の当主である私が知らぬはずがありますまい」
 と肯定した。

 「このノアは、アゼルと双子として生まれた。それ故か、はたまた別に要因があったのかは未だ分からん。ただ事実として、ノアは歴代稀に見る程の異形の力を受け継ぎ、アゼルはほぼ皆無と言って良い程に受け継がなかった。そして我が王家の血の事は、この場に居る面子はともかく、世間一般にはあまり知られていない。故に、下手にこれを民の前には出せんかった、それが理由だ」

 「では、このタイミングで出した理由は?」

 「アゼルとノアは双子だ。そしてアゼルは不祥事を起こした。そしてその時点で、この精霊姫はノアの事情を知りつつ友人として受け入れてくれていた。故に、ノアにアゼルを名乗らせ事態の収集をつけるつもりだったのだ。が、な……」

 「アゼル王子が更なる醜聞をお作りになった、と」
 「ああ。それも一般の民が多く居る場で、ノアを傷つけた。ヤツは精霊姫を傷つけるつもりであったと騒いでいたが……。それが実現していれば、我が国では当分精霊の恵みが遠ざかる国難に見舞われた事だろう」

 「ノア王子は刺された、とお伺いしていましたが、随分元気そうですね……?」

 それについての答えを、王はノア自らに述べるよう促した。

 「ナイフのような小さな刃物によるものでしたから、傷自体はそう深くはなかったですが、刺された場所が腹だったために出血が多かった。傷は医務室で縫って貰って塞がっていますが、今もかなり痛みますよ、出来れば座る事を許可して頂きたいですね。僕もですが、僕が血を吸ってしまったので、彼女も貧血で辛いはずですから」

 そのノアの答えに議会室はざわめいた。
 王家が吸血鬼の血を引いている事は知っていても、同時に王族が吸血を必要としない事はそれ以上によく知っていたから。
 ……まぁ、王族にレア肉を好む者が多い事実もまたよく知られた事実であったが。

 貴族達の戸惑いの目が一斉に私に突き刺さった。
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