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第十三章
意外な訪問者
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アゼルが逝ってしばらく。
ノアは普通を装ってはいたが、どこか気落ちした雰囲気を隠しきれていなかった。
そんな中。
「よう!」
「どうしましょう、私まで疲れているのかしら。幻覚と幻聴が……」
「おいコラ、人を幻扱いするんじゃねぇ!」
王都の屋敷を訪ねてきた人物が意外すぎて思わず自分の目と耳を疑った私に、アクアが抗議していた。
「え、だって、何で?」
「グレストに呼ばれたんだよ。仕事もあるのにって言ったら親父とお袋が、今はお嬢も忙しい時期なんだし力仕事要員として働いて来いって船に乗せられた」
「え、グレスト、どうして?」
「辛気臭い空気を吹き飛ばすには適任でしょう? アクアも、たまには役に立つこともあるんだと、僕は少しだけ反省したんですよ」
「……って、おい、少しだけなのかよ! もっとちゃんと反省しろよ、ってか、何かあったのか?」
「ええ。ノア様が双子の兄弟を亡くされまして。困った方でしたが、やはり複雑な思いはあるのでしょう。繊細な僕ではどう触ったら良いものかつい迷ってしまって……。その点、君の様な良い意味で無神経に騒がし――ゴホン、もとい明るい人が居れば少しは気も晴れるかと」
「……おい、全然反省なんかしてねぇじゃねぇか。相変わらず酷ぇ言い草だな! まぁ良いや。せっかく王都に来たんだし、適当に案内して貰うかな。おーい、ノアー!」
「えっ、アクア!? 君、何で王都に居るの、仕事は?」
「まー良いから、いーから。ほら、ちょっと王都観光に付き合ってくれよ」
アクアは有無を言わさず強引にノアを連れ出した。
「ああ、それとお嬢様。本日これから、式の後の夜会用のドレス含め、何着かドレスを決めて頂く事になっていますので。早めにお昼済ませちゃってくださいね。あとくれぐれも食べすぎないように、と仰せつかっておりますから」
……はい、影執事さんからですよね?
両親が捕まった今、もう必要は無いはずなんだけど。
仕事を引き継げる人が育つまではもう暫くウチで働いてくれるらしい影執事。
嬉しいような、ありがた迷惑のような……
「お嬢様、何か妙な事をお考えになりませんでした?」
「ひっ、いえ、何も!」
「それにしては随分焦っていませんかねぇ?」
「と、突然現れるからよ!」
うん。
やっぱり一刻も早く人材を育てて、厄介な人にはとっとと出てって貰わなければ。
これまでの恩を忘れるつもりはないけど。
これからの身の安全の為には……ね。
「既に仕立て屋が部屋で準備を始めておりますれば。お嬢様、早く食堂へいらして下さい」
――その後。半日がかりで着せ替え人形にさせられた事は言うまでもなかった。
ノアは普通を装ってはいたが、どこか気落ちした雰囲気を隠しきれていなかった。
そんな中。
「よう!」
「どうしましょう、私まで疲れているのかしら。幻覚と幻聴が……」
「おいコラ、人を幻扱いするんじゃねぇ!」
王都の屋敷を訪ねてきた人物が意外すぎて思わず自分の目と耳を疑った私に、アクアが抗議していた。
「え、だって、何で?」
「グレストに呼ばれたんだよ。仕事もあるのにって言ったら親父とお袋が、今はお嬢も忙しい時期なんだし力仕事要員として働いて来いって船に乗せられた」
「え、グレスト、どうして?」
「辛気臭い空気を吹き飛ばすには適任でしょう? アクアも、たまには役に立つこともあるんだと、僕は少しだけ反省したんですよ」
「……って、おい、少しだけなのかよ! もっとちゃんと反省しろよ、ってか、何かあったのか?」
「ええ。ノア様が双子の兄弟を亡くされまして。困った方でしたが、やはり複雑な思いはあるのでしょう。繊細な僕ではどう触ったら良いものかつい迷ってしまって……。その点、君の様な良い意味で無神経に騒がし――ゴホン、もとい明るい人が居れば少しは気も晴れるかと」
「……おい、全然反省なんかしてねぇじゃねぇか。相変わらず酷ぇ言い草だな! まぁ良いや。せっかく王都に来たんだし、適当に案内して貰うかな。おーい、ノアー!」
「えっ、アクア!? 君、何で王都に居るの、仕事は?」
「まー良いから、いーから。ほら、ちょっと王都観光に付き合ってくれよ」
アクアは有無を言わさず強引にノアを連れ出した。
「ああ、それとお嬢様。本日これから、式の後の夜会用のドレス含め、何着かドレスを決めて頂く事になっていますので。早めにお昼済ませちゃってくださいね。あとくれぐれも食べすぎないように、と仰せつかっておりますから」
……はい、影執事さんからですよね?
両親が捕まった今、もう必要は無いはずなんだけど。
仕事を引き継げる人が育つまではもう暫くウチで働いてくれるらしい影執事。
嬉しいような、ありがた迷惑のような……
「お嬢様、何か妙な事をお考えになりませんでした?」
「ひっ、いえ、何も!」
「それにしては随分焦っていませんかねぇ?」
「と、突然現れるからよ!」
うん。
やっぱり一刻も早く人材を育てて、厄介な人にはとっとと出てって貰わなければ。
これまでの恩を忘れるつもりはないけど。
これからの身の安全の為には……ね。
「既に仕立て屋が部屋で準備を始めておりますれば。お嬢様、早く食堂へいらして下さい」
――その後。半日がかりで着せ替え人形にさせられた事は言うまでもなかった。
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