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第一章
団らんの一時
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「おーい、シャリー! 見ろよ、タイコーだぜ!」
うつらうつらしていた私の耳に、ロイスの大声が突き刺さる。
「(タイコー? ……って何? 太閤? 豊臣秀吉がどうかした……? いや、この世界に秀吉は居ないし)」
心地の良い昼寝から現実に引き戻された私は意味の分からないロイスの叫びにはてなマークだらけになった寝起きの頭を働かせる。
「……タイコーではなく太公望だ。
しかもそれは釣り好きの意味だぞ。それもボウズばかりの残念な釣り好きではなく上手い釣り師の代名詞のような称号だ。
確かに初心者にしては上手く釣れていたが、流石にお前がそうと公言すれば本物の太公望達に〆られるぞ。
何というか……一筋縄ではいかない偏屈なのが多いからな、少なくとも俺が知ってる太公望達は」
ああ、なる程太公望……。って、この世界に太公望さんもいらっしゃらないはずなんだけどね。
釣り好きの偉人の話ナシに釣り師の称号だけはあるのか……?
「うっ、そ、そうなのか……? 分かった、気をつける……」
「そうしてくれ。俺も護衛が仕事とはいえ自業自得の失言故のある意味正当な報復からまで庇うのは……な。特にあの連中はとにかく面倒臭いんだ」
「ああ……。俺も気をつけるよ、シャリーにも言っとく」
こら、私まで失言するような言い方をするでない。
イラッとしたのでスッとやつの背後に立ち、
「いてっ!」
ポカリと一発軽く拳骨をやつの頭に落としてやる。
「うん、ロイス。マジで失言には気をつけようね……?」
前世では失言で仕事を失った人も居るんだからね。
「げ、シャリー……。けど、殴る事は無いだろう? お前には今日の分け前やらないぞ!」
「ふーん、それは良いけどアンタそれ調理できるの?」
「……う」
流石に基本の三枚下ろしにはできると思うけど、その後は……
「はいはい、調理してくるからよこしなさいよロイス」
ロイスの持っていた魚で一杯のバケツを奪い、キッチン……というか台所で魚をさばく。
塩焼きにするのに丁度いいサイズの魚には内臓だけ避けて串を打ち、塩を振る。
大きい魚は三枚下ろしにしてアラは鍋の出汁に、身は醤油や味噌等の調味料にそれぞれに漬けて保存する。
あ、でも白身で油乗ってそうなのは鍋の具材に貰う事にして……
「じゃ、ご飯にしようか」
囲炉裏に鍋を吊るしてグツグツ煮込み、その周りに串を並べてじっくりと魚を焼き上げる。
魚からジリジリと脂が垂れていくのを見てたまらないのかロイスがソワソワしだす。
「じゃ、食べようか」
「おう、待ってました!」
その日の食卓は会話も弾み、素敵な団らんの一時となったのだった。
うつらうつらしていた私の耳に、ロイスの大声が突き刺さる。
「(タイコー? ……って何? 太閤? 豊臣秀吉がどうかした……? いや、この世界に秀吉は居ないし)」
心地の良い昼寝から現実に引き戻された私は意味の分からないロイスの叫びにはてなマークだらけになった寝起きの頭を働かせる。
「……タイコーではなく太公望だ。
しかもそれは釣り好きの意味だぞ。それもボウズばかりの残念な釣り好きではなく上手い釣り師の代名詞のような称号だ。
確かに初心者にしては上手く釣れていたが、流石にお前がそうと公言すれば本物の太公望達に〆られるぞ。
何というか……一筋縄ではいかない偏屈なのが多いからな、少なくとも俺が知ってる太公望達は」
ああ、なる程太公望……。って、この世界に太公望さんもいらっしゃらないはずなんだけどね。
釣り好きの偉人の話ナシに釣り師の称号だけはあるのか……?
「うっ、そ、そうなのか……? 分かった、気をつける……」
「そうしてくれ。俺も護衛が仕事とはいえ自業自得の失言故のある意味正当な報復からまで庇うのは……な。特にあの連中はとにかく面倒臭いんだ」
「ああ……。俺も気をつけるよ、シャリーにも言っとく」
こら、私まで失言するような言い方をするでない。
イラッとしたのでスッとやつの背後に立ち、
「いてっ!」
ポカリと一発軽く拳骨をやつの頭に落としてやる。
「うん、ロイス。マジで失言には気をつけようね……?」
前世では失言で仕事を失った人も居るんだからね。
「げ、シャリー……。けど、殴る事は無いだろう? お前には今日の分け前やらないぞ!」
「ふーん、それは良いけどアンタそれ調理できるの?」
「……う」
流石に基本の三枚下ろしにはできると思うけど、その後は……
「はいはい、調理してくるからよこしなさいよロイス」
ロイスの持っていた魚で一杯のバケツを奪い、キッチン……というか台所で魚をさばく。
塩焼きにするのに丁度いいサイズの魚には内臓だけ避けて串を打ち、塩を振る。
大きい魚は三枚下ろしにしてアラは鍋の出汁に、身は醤油や味噌等の調味料にそれぞれに漬けて保存する。
あ、でも白身で油乗ってそうなのは鍋の具材に貰う事にして……
「じゃ、ご飯にしようか」
囲炉裏に鍋を吊るしてグツグツ煮込み、その周りに串を並べてじっくりと魚を焼き上げる。
魚からジリジリと脂が垂れていくのを見てたまらないのかロイスがソワソワしだす。
「じゃ、食べようか」
「おう、待ってました!」
その日の食卓は会話も弾み、素敵な団らんの一時となったのだった。
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