きちんと調べずに婚約破棄とか言うからこんなことになるんですのよ?

ルー

文字の大きさ
1 / 1

きちんと調べずに婚約破棄とか言うからこんなことになるんですのよ?

しおりを挟む
「リーゼ・オルバス!お前との婚約を破棄する!」
王家主催のパーティーで、両陛下、下の王子二人よりも一足先に会場入りしていた第一王子アイザック・ルスランが自らの婚約者であるリーゼが入場してきたのを確認するとリーゼのもとにとある令嬢をエスコートしてやってきた。そして、罵声を浴びせた。
「・・・まぁ。王命での婚約を王子殿下と言え簡単に破棄できるとお思いですの?こちらは大歓迎ですが、一応理由を聞いてもよろしいですか?」
婚約者であるアイザックがエスコートをさぼっているがために、兄のリヴァエル・オルバスにエスコートしてもらっているリーゼは微笑みを崩すことなく言った。
「お前は私の愛するベリーを虐めた!挙句の果てには殺そうとした!リーゼ、お前は処刑だ!」
アイザックの一言にリヴァエルの額に青筋を浮かべた。
「お兄様、落ち着いてくださいませ。ここは私に任せて早く両陛下を呼んできてくださいませ。」
リーゼは一歩前に出て、小声で後ろにいるリヴァエルに言った。
「・・・分かった。」
リヴァエルはすっと一歩下がると憎々し気にアイザックを睨みつけて、会場を後にした。貴族たちはその様子を興味津々と言ったように見つめている。居心地悪そうにきょろきょろとしているベリーと、不快そうに眉を顰めるアイザックにリーゼはオルバス公爵家の長女としてしっかりと向き合った。
「処刑とおっしゃいますが、王子殿下が勝手に処刑を執り行うことは許されておりませんわ。また、虐めたということですが私とそちらのベリーさんでしたか?彼女と私は初対面ですわ。そもそも虐める理由がありません。」
「父上から許可を得ればいいのだろう?」
簡単そうに言うアイザックにリーゼは冷めた視線を送った。
「お前は私の寵愛を得ているベリーに嫉妬したんだ。お前は私のことを愛しているだろう?」
さも当然と言いたげに自信満々に言い放つアイザックにリーゼは一瞬顔を顰めた。
「・・・冗談は他所で言ってくださる?私が王子殿下のことを好き、ですか?嫌いになることはあっても好きになることはないですね。この際言わせてもらいますが、私は王子殿下のことをこれっぽちも愛していません。政略結婚に愛は必要ありませんわ。だって、そうでしょう?正妃は国王を仕事の面で支えるのが仕事ですわ。子を産む役は側妃ですの。ですから必然と側妃の方の身分も相応の身分と教養が求められます。伯爵家以上の家柄の令嬢に限定されます。私は最初から仕事の面で殿下を支えていくと決めておりましたし、両陛下もご存じです。ですからすでに側妃候補を選定しており、そろそろ殿下にお話しするタイミングだとは思っておりましたが・・・婚約を破棄なさるのでしょう?」
リーゼは笑顔でアイザックを圧する。
「も、もちろんだ!」
「でしたらこちらの書類にサインしてくださいませ。」
リーゼは後ろに現れた従者がさしだした書類をアイザックにペンと一緒に渡した。アイザックは内容も読まずにサインして、返した。
「ありがとうございます。これで私と殿下の婚約は無事殿下の有責で破棄されました。」
リーゼが言うとアイザックは目を剥いて怒鳴った。
「どういうことだ!?」
「あら、内容読まれていないのですか?では読み上げて差し上げますわ。私リーゼ・オルバスはアイザック・ルスラン王子殿下との婚約を王子殿下の有責で破棄します。理由は王子殿下の不貞、国家予算の私的流用です。これらの物的証拠は既に揃っており、両陛下からも承認が降りております。よってオルバス公爵家だけではなく国家の不利益となりかねないアイザック殿下との婚約は考え直させていただきます。これは公爵家の総意です。否定なさる場合、オルバス公爵家はこの国を離れることにいたします。・・・ちなみに両陛下からの印はもらっております。」
そう言ってリーゼは親指で書類の右端を隠すようにもって見せた。
「・・・確かに。し、しかし神殿長の印がなければ受理されないはずだ!」
はっと気づいて叫んだアイザックにリーゼはにっこりとほほ笑んで、右下の端を掴んでいた指をすっとずらした。
「あ・・・あ・・・そんな、馬鹿な・・・。」
茫然としているアイザックにリーゼは言い放った。
「双方からの許可は得ております。」
「あ・・・。」
リーゼは身をひるがえすとその場を去ろうとした。
「・・・すまない遅くなったな。」
その時現れたのは両陛下。その後ろには二人の王子殿下がいる。一番後ろを歩いているのはリヴァエルだ。
「この場で皆に伝えたいことがある。事の仔細はリヴァエルから聞いた。まず、リーゼ、私の馬鹿息子がすまなかった。何度も謝るようだが許してほしい。」
そう言って頭を下げた国王陛下にアイザックは声をあげた。
「父上、なぜそんな女に頭を・・・!!」
「馬鹿者!!お前には何度も言ってきただろう!?オルバス公爵家は皇族だと!」
「そ、それがどうしたんですか?」
本気で意味が分かっていないのかアイザックは混乱したような表情で首をかしげる。
「お前、はっ!!皇族と言えば西の大陸を支配するスミレ帝国しかないだろう!!そんなことも分からないのか!?」
国王は開いた口が塞がらないと言ったように顔を覆った。
「オルバス公爵夫人は、スミレ帝国現皇帝の実の妹で、別名聖女、愛され姫と呼ばれる精霊の愛し子様だぞ。その子であるリヴァエル殿は時期オルバス公爵家当主、リーゼ嬢はスミレ帝国皇太子殿下の妃候補なんだぞ。そこを、なんとか頼み込んで五年間だけ婚約者になってもらったというのに。お前はなんていうことをしてくれたんだ!!」
国王に王妃が耳打ちした。公式の場に側妃は出て来ない。なぜなら、側妃の仕事は子を成すことだからだ。それ以外の余計なことはしてはならないのである。国王はうなづくと言った。
「アイザックよ、そなたの王位継承権を剥奪し、王籍も抜こう。これからは平民として暮らせ。」
顔面蒼白になったアイザックは泣いて国王陛下に縋った。この場には実母である側妃アイリーンの姿はない。それゆえに頼れるのは実の父親である国王のみ。王妃は厳しい人で有名で、アイザックは苦手だった。
「父上!お考え直しを!私がいなくなったら一体誰が第一王子としての仕事をするのですか?」
「なにを言っている!お前は仕事なんてしていなかったではないか!お前の仕事は全てリーゼ嬢がおこなっていたのだぞ。お前の所にまわってくるのは王子としての印が必要な物ばかり。お前は印を押す以外に何か仕事をやったか?」
「・・・やっておりません。」
アイザックは項垂れた。
「やはり、アイザック。お前は女人禁制の男の学園で三年間暮らせ。当然だが王籍は抜くから平民としてそこに行くことになる。お前は顔は良いから可愛がられるだろう。」
その言葉にアイザックはガタガタと震えだした。可愛がられるがどういう意味なのか馬鹿な彼でも理解したようだ。
「そして、素知らぬふりをしているそこの女。名前は何だ?」
国王に声をかけられて、ベリーはびくっと肩を震わせた。
「ベリー・トンです。」
「トン準男爵家の令嬢か・・・。お前が犯した罪は二つある。まず一つ目、時期王太子候補を誑かし、準男爵家の分際で正妃の座を狙ったこと。これは国家転覆罪にあたる。次に二つ目だが。身分が上のリーゼ嬢に冤罪を吹っかけたことだ。リーゼ嬢は常に誰かしら国王派の令嬢たちと行動を共にしていて、彼女らから虐めの話などないと断言された。彼女らは全員が侯爵家以上の家柄で時期側妃候補。嘘は犯罪と教えられてきている彼女らが嘘をつくはずがない、と私は判断したがお前の意見を聞こうか。」
「申し訳ありません!!虐めは本当にあったんです!だけど、私はリーゼ様がやったとは一言も言っておりません。今日の婚約破棄も私は何も聞かされてないです!」
その言葉に国王が眉を顰める。
「・・・アイザックよ。」
おそるおそる顔をあげたアイザックは話し始めた。
「ベリーの言う通りです。ベリーは虐めはうけたと言っていましたが、リーゼがやったとは言っていませんでした。私が勘違いしたんです。嫉妬するなら婚約者のリーゼだろうと。婚約破棄も私の独断です!!」
「アイザック、お前はもうどうしようもないな。」
国王は深いため息をついた。
「してベリーとやら。お前はアイザックのことをどう思っている。単刀直入に言って好きか?」
その問にベリーは勢いよく首をふった。
「そんな!私はただアイザック様に良くしていただいただけで、そんな恋愛感情はこれっぽちもありません!!」
その言葉にアイザックは目を見開いた。
「そんな・・・。」
自分の勘違いに気づき、アイザックは崩れ落ちた。
「嘘だと言ってくれ!」
「嘘じゃないです!なんで、こんな身分違いの恋ができると思ってるんですか?私にとってアイザック様は憧れでかっこいい人で会って好き、というわけではありません。」
その言葉はベリーなりの拒絶の言葉だった。
「あ・・・。」
「これで分かっただろう。ベリー嬢。馬鹿息子が迷惑をかけたな。今回のことはなんらそなたに責は問わない。」
「あ、ありがとうございます!」
ベリーは勢いよく頭を下げた。
「そして、リーゼ嬢よ。長い間縛り付けて申し訳なかった。どうかこれからは自由に生きて欲しい。」
「はい、陛下。」
そして、リーゼは退場しようとしたその時、リーゼの前に誰かが立った。
「やぁ、リーゼ。久しぶりだね。」
「・・・皇太子殿下!!」
リーゼは目を丸くし、すぐにカーテシーをした。
「他人行儀だね。僕のことはアーサーと呼んでと言っているよね?」
「畏れ多いですわ。」
「そうだ、リヴァエル。少しの間リーゼを借りていくから公爵夫妻によろしく言っておいてね。」
そう言うと返事を聞かずにリーゼを抱き上げた。
「きゃっ!皇太子殿下?・・・アーサー様っ。困ります。」
リーゼは小さく悲鳴をあげる。しかし、アーサーはただ微笑むとそのまま転移魔法を使い去って行った。



その後、リーゼはアーサーに一週間もの間ずっと愛を囁かれ続け、ついに折れたとか。婚約破棄から一年後、リーゼは無事アーサーのもとに嫁ぎ皇太子妃となった。ベリーはその騒動の後ずっと好きだったとかいう幼馴染の男爵令息と婚約し、リーゼが結婚してから半年後籍を入れた。アイザックは女人禁制の男の学園に送られ三年間過ごすことになったが、三年後彼の性癖は歪み、逆に出たがらなかったとか。三年間ですっかり染められてしまったようだった。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?

時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。 どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、 その理由は今夜の夜会にて

婚約破棄ですか? では、この家から出て行ってください

八代奏多
恋愛
 伯爵令嬢で次期伯爵になることが決まっているイルシア・グレイヴは、自らが主催したパーティーで婚約破棄を告げられてしまった。  元、婚約者の子爵令息アドルフハークスはイルシアの行動を責め、しまいには家から出て行けと言うが……。  出ていくのは、貴方の方ですわよ? ※カクヨム様でも公開しております。

「つまらない女」を捨ててやったつもりの王子様

七辻ゆゆ
恋愛
「父上! 俺は、あんなつまらない女とは結婚できません!」 婚約は解消になった。相手側からも、王子との相性を不安視して、解消の打診が行われていたのである。 王子はまだ「選ばれなかった」ことに気づいていない。

浪費癖の激しい女は嫌いだと私を捨てた婚約者は、義妹を選びましたが…今では後悔してます。

coco
恋愛
浪費癖を指摘され、婚約者から別れを告げられた私。 そんな彼は、私の義妹を新たな婚約者に迎えるが…?

【完結】あなた方は信用できません

玲羅
恋愛
第一王子から婚約破棄されてしまったラスナンド侯爵家の長女、ファシスディーテ。第一王子に寄り添うはジプソフィル子爵家のトレニア。 第一王子はひどい言いがかりをつけ、ファシスディーテをなじり、断罪する。そこに救いの手がさしのべられて……?

【完結済み】私を裏切って幼馴染と結ばれようなんて、甘いのではありませんか?

法華
恋愛
貴族令嬢のリナは、小さいころに親から言いつけられた婚約者カインから、ずっと執拗な嫌がらせを受けてきた。彼は本当は、幼馴染のナーラと結婚したかったのだ。二人の結婚が済んだ日の夜、カインはリナに失踪するよう迫り、リナも自分の人生のために了承する。しかしカインは約束を破り、姿を消したリナを嘘で徹底的に貶める。一方、リナはすべてを読んでおり......。 ※完結しました!こんなに多くの方に読んでいただけるとは思っておらず、とてもうれしく思っています。また新作を準備していますので、そちらもどうぞよろしくお願いします! 【お詫び】 未完結にもかかわらず、4/23 12:10 ~ 15:40の間完結済み扱いになっていました。誠に申し訳ありません。

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

処理中です...