婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪

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10人目の彼女

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500年の歴史を誇るウクリナ王国の王立学園での卒業パーティー。貴族であることはもちろん、学力も認められなくては入学できないこの学園。次世代の国を担うであろう卒業生たちが学園での最後のときを楽しんでいた。


「アリア、君とは婚約破棄だ。そして俺は愛しいディアナと婚約するぞ」
 頭のイカれた野郎が頭のイカれたことをおっしゃってる。婚約破棄?



 そんなのとっくにしてるわ。





1ヶ月前

 「アリア様、殿下があちらに別の女性といらっしゃいます」
 わたくしはウクリナ王国のラミーリア公爵家の長女。言うまでもなく、この国1番の貴族令嬢になるわね。もちろん婚約者がいるのだけど……。

「エディさまぁー! 今日もすてきですわぁー!!」
「愛しいディアよ、お前の方こそ可愛いぞ」

まあ、どうしたことでしょう。わたくしのコンヤクシャサマが別の女性に愛を囁いていますわ。

「アリア様、あの女性は誰でしょうか?」
「……はぁ、わたくしには関係ないわ」

ウクリナ王国の第2王子エディヤ・ウクリナ、王妃様譲りの輝く金髪、王家の証であるエメラルド色の瞳、真珠のごとく滑らかな肌、すっと通った鼻筋……
本の中から飛び出してきたような美しい王子様に、国王陛下も王妃様も溺愛している。第一王子を退けて王太子にしようとするほどに。

エディヤ殿下は遊び相手としては確かにモテる。そう、「遊び相手」としては……。 
 外見は完璧。しかしそれは外見だけ。
幼少の頃から勉強はもちろん、武術も嫌い一切とりくまなかった。学園には裏口入学をしたのではないかと、思われている。そのようでも、国王陛下と王妃様は甘やかすため、我が儘でプライドだけは高く、ナルシストな王子に育ってしまったのだ。学園に入学してからは、さまざまな令嬢に手を出し遊び歩いている。
見た目は完璧なので恋い慕う令嬢は多いが、付き合えばその性格に幻滅する。
 そのため、一夜限りの遊び相手ぐらいにしておくのが良い、と言われるようになった。


「マリー、彼女は何人目かしら?」
「……10人目です」
「そう」
 一夜だけの女性も多いが、公に付き合う女性もいる。ほとんどが、下級貴族の令嬢たちだった。
 以前わたくしはそのような女性が10人できたら、婚約破棄をします、と5人目の時に国王陛下に申し上げました。残念ながら今回で10人目のようです。いちおう確認しておきましょうか。

 「ごきげんよう、殿下」
「なんだ、アリアか。今俺はディアといるんだ。話しかけるな」
「これは大変失礼いたしましたわ。ですが、ひとつお聞きしても?」
「なんだ?」
「そちらの女性はどなたでしょう。ずいぶんと殿下と親しくされている様子でしたが」
「そんなことか、わかってるだろ。愛しい俺のディアだ」
「まぁ、エディ様! でも、婚約者様の前でそんなこといってもいいのぉ?」
「関係ない。こいつは俺に愛なんてないからな。それに俺が本当に愛してるのはディアだけだ」
「エディ様……。私もですわ」

「アリア様、殺っていいですか?」
「やめておきなさい、マリー」

「アリア様、わたしはエディ様のことを愛しているのです。そして、エディ様もわたしのことを愛しているのです。だから、わたしたちの仲を引き裂こうとしないでください」
この女は、何を言っているのかしら。わたくしとは初対面なのに挨拶もないのね。それにあなたたちの関係のほうがおかしいのだけれど。
「ディアの言う通りだ。俺たちを引き離そうたってそうにはいかないぞ」
「ご安心を。わたくしには関係ありませんわ。それにわたくしは、仲をとがめるために来たのではありませんの。かくにんし「そうか、ついにその気になったのか」
わたくしの言葉を遮って殿下が耳元に近づいた。

「やっと俺に体を捧げる気になったのか。よし、今夜俺の部屋に来い」
「……」
別の女性に手を出しておきながら、何を言っているのでしょう。それに正式に結婚したわけでもないのよ。

「お断りいたします。それでは失礼しますわ」

わたくしはマリーを連れて、殿下の前を後にした。


「アリア様、どちらへ行かれますのですか?」
学園の寮へと続く道を反対に進むわたくしに、マリーが尋ねた。

「家に帰るわ」
「公爵家に? なにか、用事でもありましたか?」

「ええ、大事な用事よ。婚約破棄というね」
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