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90話 ダンジョンブレイク【登別】2
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あんな大きなものがどうやって雲の上から現れたのか。
北海道の山岳クラスの巨大南瓜が雲の上からこぼれ落ちようとしてる事態に俺たちは気を引き締める。あんなもの、落ちてきたら登別地区が壊滅してしまう。
なんせこぼれようとしてる巨大南瓜は一つじゃないからだ。
「場所はどこだ?」
「急げダイちゃん!」
「正気か? 車で追いつける距離じゃねぇって」
「近づいてくれるだけでいい」
「わかったよ! ヨッちゃんカボチャに向かって足場作成! できるか?」
「アタボウよ」
「っしゃぁ! 覚悟決めるぜ」
ダイちゃんの車に乗り込み、俺たちは空に向けて一直線に車を走らせた。
急勾配の登り道を駆け登り、巨大カボチャの真横まで。
「オリン!」
「キュ(任せよ!)」
横合いからの吸い込みによって巨大南瓜は無事収穫。二つ目と三つめも収穫して、どうにか胸を撫で下ろそうとした時だ。
「やべぇ、ガソリンが無くなりそうだ!」
何度も無茶な走行をしてきたのもあり、これ以上の走行ができないと言われた。
「緊急脱出! オリン、屋台出してくれ」
もはや阿吽の呼吸で屋台が出現。
俺たちは車から外に出て、車をオリンに吸わせる。
そして屋台の中から一時的に長岡に戻った。
「悪いな、ちょいとガソリン入れてくらぁ」
それだけいって、場面は長岡へ。
「すいません、菊池さんガソリン入れてきてもらっていいですか?」
「それぐらいかまわねぇが、お前も無茶したなぁ。無茶な要求に応えた倅もだけどよ」
「人命がかかってましたので」
「ありゃあ、災害そのものだろうがよ」
「それでも、なんとかできるんなら、なんとかしようとするのが探索者ですよ」
「そうか。で、現場に戻るんだろ?」
「そうですね、俺たちは今落下中ですから」
「落下した後に戻ってもいいんじゃねぇのか?」
「ダイちゃんのマイカーも大事ですけど、あの屋台にも思い入れがあるんです。俺の出発の印ですから」
「なら、取り戻しに行かなきゃな。引き留めやしねぇよ、行ってこい。大輝は留守番だ」
「おいおいおいおい親父、そりゃねぇぜ!」
ダイちゃんはここで一時脱落。やっぱり高所からの墜落に子供は巻き込めないよね。
それ以前に、気分がハイになってどこかでなんちおかなると思い込んでる節がある。
「いやぁ、実は俺も魔法があとちょっとしか打てなくてさ。親父さんナイスアドバイスだったぜ」
菊池さんはいつでも周囲を見てる人だった。
連続で魔法を行使してるヨッチャンを気遣ってのことだったと知ったのは、登別上空に戻ってからのことだった。
オリンに屋台を片付けてもらい、足元に向けて水魔法と風魔法の複合で安全に大地に降り立つ。
「俺も今のでガス欠だ」
「お疲れ、相棒」
<コメント>
:お疲れヨッちゃん
:お疲れ様ー
:《登別探索者》ありがとう! 登別地域はこれで救われたっす
:そもそもあの雲なんなんだろうな? モンスター生み出したり
:絶対自然のやつじゃないよな
:あれ自体がモンスターだったり?
その可能性もあるか。
野菜型モンスターを生み出し続ける霧型の魔物?
そんなもの聞いたこともない。
だが実際に見た。あんなものが人々の頭の上に存在するなど認めたくない。
これがダンジョンブレイクによって現れる異常現象か。
「キュ(迷宮崩壊は一時的にこちら側の世界を未急化させるからな。自然現象を捻じ曲げたり、不可能を可能にすることが多いんじゃ。本当はよそのダンジョンの育成方針にケチをつけるのは御法度なのじゃが、あの方は育成すらまともにしないで眠りこけておるからの。妾が厳しく指導する必要があるのじゃ)」
ダンジョンブレイクそのものの情報は一切くれないオリン。
あまり俺たちに運営手段を明かすつもりはないようだ。
それで過去に面倒になったとか? あり得そうである。
「と、いうことで足がなくなり、お腹が空いたんで一旦ここを野営地とします」
「飯食ったらすぐ豊浦行くから待っててな?」
見上げる空に雲は一つもない。
晴れ渡っていく空には夕陽が差し掛かっていた。
暗くなるまでにはなんとか豊浦に辿り着けるだろうか。
札幌は翌日までに着けばいいや。
オリンに手を伸ばして先ほどの牛蒡、蓮根、南瓜の一部を熟成乾燥させてからのミンサー、腸詰め。
残りの部位を鍋にぶち込んで茹で上げていく。
「腹減ってきちまったよ」
「もうちょい待ってなー」
今回はヨッちゃんに頼らない炭火での調理がメイン。
火の入りが遅いのが問題点か。
「スープが煮立つまで、串いっとくか?」
「空ウツボを希望します」
「オーク肉で我慢しとけ」
「そんなー」
<コメント>
:ヨッちゃん舌が贅沢になってきたな
:オーク肉も高級食材なんよな
:地域モンスターも普通にユニークじゃね?
:それ考えたら部位は食い切らないでダンジョンセンターに納品案件なんじゃ?
「え、そうなの?」
<コメント>
:《函館市民一同》美味しく食べちゃったぁああ!
:《函館市民一同》鍋空っぽですよ!? もっと早く言って欲しかった
:草
:ポンちゃんの手にかかればなぁ
:ゴブリンやラット、リビングアーマーすら食材になるから
最近ヨッちゃんの魔法での仕込みばかりだから、こうやって自然の力を借りての調理は久しぶりだ。
誰にも急かされずに、じっくり調理できるのって案外大事なことなんだなって今になって思う。
俺もどこかで疲れてたのかな?
肉体は健康そのものだったが、メンタルが少し弱っていたような気がする。
炭火の上で串を回しながら、煙を浴びての調理は懐かしさに涙が出る。
ヨッちゃんには煙でむせたかって揶揄われたが、そんなもんだと返していた。
まだFだった頃。
ヨッちゃんに誘われて始めたダンチューブ活動。
あの日から随分と遠くまできたような気がする。
気持ちはあの時のままなのに、環境だけが目まぐるしく変わっていって、今の俺は過去に思い描いた通りに生きているのだろうかって、そんなことを少しだけ思う。
「ずいぶんじっくり焼くな」
「炭火はね、見た目上焦げやすいんだ。けど、こうやってタレに漬け込んで焼き上げて温度を調整、下味をつけながら焼き上げるさ。ほい、豚串一丁」
「ヒョー。これこれ!」
程よく油を落としてシェイプアップした串をヨッちゃんが嬉しそうに頬張る。
ここ最近は忙しさのついでに掻き込むような食事が多かった。
こうやってゆっくり味わう時間は、俺たちには必要なのかもしれないな。
見てたら俺も腹が減ってもう一本を頬張った。
「うん、うまい」
「あー、オレの串!」
「俺も腹減ってんだよ。菊池さんはそれも見抜いてたんだと思うな」
「だからダイちゃんを引き留めたのか?」
「6時間以上運転しっぱなしだ。腹も減るさ」
「オレだって6時間以上魔法を酷使してたってことだぞ?」
「メーターの大きさが違うんだよ」
「そう言われたら悪い気はしねぇな」
こっちは燃費が良いと捉えれば、ヨッちゃんはたちまち上機嫌になった。チョロい。
何本か串を仕上げてるうちに、スープの方も茹で上がってくる。
「はいよー、出前一丁」
なぜかダイちゃんが屋台の奥から注文をしてない料理を追加しにくる。
「親父から。お通しとビールを労いでもらったぜ」
「アルコールきた!」
「まだ全てを救出しきれてないのに飲んじゃっていいのか?」
「俺は運転手だから飲めないが、世の中にはノンアルコールビールというものがある。俺はこいつでいただくぜ。それじゃあ二人とも、準備はいいか?」
グラスになみなみ注がれたビールを空中に掲げ、俺たちは儀式の祝詞『乾杯』と共に打ち鳴らした。
疲れ切った臓腑にビールが染み渡っていく。
くぅー! と叫ぶほどの爽快感が体を突き抜けた。
断酒明けのビールは極上の味だった。
そこにタレが染み込んだ豚串が程よく体に満たされていく。
今なら何本でも食えそうだ。
「焼き番、変わるぜ? ポンちゃんも食うのに集中しててくれよ」
「いいのか?」
「俺は修行中の身だぜ? 焼き上げの評価もして欲しいんだが?」
「悪いな、じゃぁ頼む」
そう言って空腹のヨッちゃんの相手をダイちゃんに任せる。
お通しの塩辛がなんともまぁお酒を勧めるのだ。
ベストマッチは日本酒だが、ビールも問題なく進む。
それだけ完成された味だった。
「それと親父が宿題の答えを持ってけって」
「これは?」
「親父流、空ウツボの肝よせ」
「食う食う!」
名前を聞いてヨッちゃんが涎を垂らした。
名前を聞く前から気になってた感じだ。
ヨッちゃんは途中で記憶を失ったのか、俺の肝寄せどこ? と周囲を探してたが、間違いなく自分で食べてたぞ?
俺もいただいたが、この目まぐるしい数日を無かったことにするかのような情報量が一気に流れ込んできた。
なんというか、俺の仕込みとは次元が違う。
しかもこれを店で出せるように安く抑えたというのだから驚きだ。
目を瞑って味の構造を頭の中で巡らせる。
食うだけで笑みが溢れる。
次々と口の中へ頬張りたくなる。
肝の旨みや苦味を一切邪魔することなく、生臭さを完全に消し去ってる。
これに使われてるのはなんだ?
「ポンちゃん、楽しそうな顔してる」
「え、そうか?」
味の構成を探ってた時、横合いからヨッちゃんの声で意識を戻した。
「まぁ、ここ数日張り詰めた事態だったからな、しょうがないとはいえ少しばかり休息も必要だよ。Aランク序列一位だって人間なんだぜ? 機械じゃねぇんだからさ。休息入れようや」
ダイちゃんに言われて、そうかもなとその時はたくさん飲んで新しいレシピの構築を考えてゆっくり休んだ。
あとは俺に任せな、と力強く訴えかけるダイちゃんに運転を任せて俺たちは仮眠に入った。
北海道の山岳クラスの巨大南瓜が雲の上からこぼれ落ちようとしてる事態に俺たちは気を引き締める。あんなもの、落ちてきたら登別地区が壊滅してしまう。
なんせこぼれようとしてる巨大南瓜は一つじゃないからだ。
「場所はどこだ?」
「急げダイちゃん!」
「正気か? 車で追いつける距離じゃねぇって」
「近づいてくれるだけでいい」
「わかったよ! ヨッちゃんカボチャに向かって足場作成! できるか?」
「アタボウよ」
「っしゃぁ! 覚悟決めるぜ」
ダイちゃんの車に乗り込み、俺たちは空に向けて一直線に車を走らせた。
急勾配の登り道を駆け登り、巨大カボチャの真横まで。
「オリン!」
「キュ(任せよ!)」
横合いからの吸い込みによって巨大南瓜は無事収穫。二つ目と三つめも収穫して、どうにか胸を撫で下ろそうとした時だ。
「やべぇ、ガソリンが無くなりそうだ!」
何度も無茶な走行をしてきたのもあり、これ以上の走行ができないと言われた。
「緊急脱出! オリン、屋台出してくれ」
もはや阿吽の呼吸で屋台が出現。
俺たちは車から外に出て、車をオリンに吸わせる。
そして屋台の中から一時的に長岡に戻った。
「悪いな、ちょいとガソリン入れてくらぁ」
それだけいって、場面は長岡へ。
「すいません、菊池さんガソリン入れてきてもらっていいですか?」
「それぐらいかまわねぇが、お前も無茶したなぁ。無茶な要求に応えた倅もだけどよ」
「人命がかかってましたので」
「ありゃあ、災害そのものだろうがよ」
「それでも、なんとかできるんなら、なんとかしようとするのが探索者ですよ」
「そうか。で、現場に戻るんだろ?」
「そうですね、俺たちは今落下中ですから」
「落下した後に戻ってもいいんじゃねぇのか?」
「ダイちゃんのマイカーも大事ですけど、あの屋台にも思い入れがあるんです。俺の出発の印ですから」
「なら、取り戻しに行かなきゃな。引き留めやしねぇよ、行ってこい。大輝は留守番だ」
「おいおいおいおい親父、そりゃねぇぜ!」
ダイちゃんはここで一時脱落。やっぱり高所からの墜落に子供は巻き込めないよね。
それ以前に、気分がハイになってどこかでなんちおかなると思い込んでる節がある。
「いやぁ、実は俺も魔法があとちょっとしか打てなくてさ。親父さんナイスアドバイスだったぜ」
菊池さんはいつでも周囲を見てる人だった。
連続で魔法を行使してるヨッチャンを気遣ってのことだったと知ったのは、登別上空に戻ってからのことだった。
オリンに屋台を片付けてもらい、足元に向けて水魔法と風魔法の複合で安全に大地に降り立つ。
「俺も今のでガス欠だ」
「お疲れ、相棒」
<コメント>
:お疲れヨッちゃん
:お疲れ様ー
:《登別探索者》ありがとう! 登別地域はこれで救われたっす
:そもそもあの雲なんなんだろうな? モンスター生み出したり
:絶対自然のやつじゃないよな
:あれ自体がモンスターだったり?
その可能性もあるか。
野菜型モンスターを生み出し続ける霧型の魔物?
そんなもの聞いたこともない。
だが実際に見た。あんなものが人々の頭の上に存在するなど認めたくない。
これがダンジョンブレイクによって現れる異常現象か。
「キュ(迷宮崩壊は一時的にこちら側の世界を未急化させるからな。自然現象を捻じ曲げたり、不可能を可能にすることが多いんじゃ。本当はよそのダンジョンの育成方針にケチをつけるのは御法度なのじゃが、あの方は育成すらまともにしないで眠りこけておるからの。妾が厳しく指導する必要があるのじゃ)」
ダンジョンブレイクそのものの情報は一切くれないオリン。
あまり俺たちに運営手段を明かすつもりはないようだ。
それで過去に面倒になったとか? あり得そうである。
「と、いうことで足がなくなり、お腹が空いたんで一旦ここを野営地とします」
「飯食ったらすぐ豊浦行くから待っててな?」
見上げる空に雲は一つもない。
晴れ渡っていく空には夕陽が差し掛かっていた。
暗くなるまでにはなんとか豊浦に辿り着けるだろうか。
札幌は翌日までに着けばいいや。
オリンに手を伸ばして先ほどの牛蒡、蓮根、南瓜の一部を熟成乾燥させてからのミンサー、腸詰め。
残りの部位を鍋にぶち込んで茹で上げていく。
「腹減ってきちまったよ」
「もうちょい待ってなー」
今回はヨッちゃんに頼らない炭火での調理がメイン。
火の入りが遅いのが問題点か。
「スープが煮立つまで、串いっとくか?」
「空ウツボを希望します」
「オーク肉で我慢しとけ」
「そんなー」
<コメント>
:ヨッちゃん舌が贅沢になってきたな
:オーク肉も高級食材なんよな
:地域モンスターも普通にユニークじゃね?
:それ考えたら部位は食い切らないでダンジョンセンターに納品案件なんじゃ?
「え、そうなの?」
<コメント>
:《函館市民一同》美味しく食べちゃったぁああ!
:《函館市民一同》鍋空っぽですよ!? もっと早く言って欲しかった
:草
:ポンちゃんの手にかかればなぁ
:ゴブリンやラット、リビングアーマーすら食材になるから
最近ヨッちゃんの魔法での仕込みばかりだから、こうやって自然の力を借りての調理は久しぶりだ。
誰にも急かされずに、じっくり調理できるのって案外大事なことなんだなって今になって思う。
俺もどこかで疲れてたのかな?
肉体は健康そのものだったが、メンタルが少し弱っていたような気がする。
炭火の上で串を回しながら、煙を浴びての調理は懐かしさに涙が出る。
ヨッちゃんには煙でむせたかって揶揄われたが、そんなもんだと返していた。
まだFだった頃。
ヨッちゃんに誘われて始めたダンチューブ活動。
あの日から随分と遠くまできたような気がする。
気持ちはあの時のままなのに、環境だけが目まぐるしく変わっていって、今の俺は過去に思い描いた通りに生きているのだろうかって、そんなことを少しだけ思う。
「ずいぶんじっくり焼くな」
「炭火はね、見た目上焦げやすいんだ。けど、こうやってタレに漬け込んで焼き上げて温度を調整、下味をつけながら焼き上げるさ。ほい、豚串一丁」
「ヒョー。これこれ!」
程よく油を落としてシェイプアップした串をヨッちゃんが嬉しそうに頬張る。
ここ最近は忙しさのついでに掻き込むような食事が多かった。
こうやってゆっくり味わう時間は、俺たちには必要なのかもしれないな。
見てたら俺も腹が減ってもう一本を頬張った。
「うん、うまい」
「あー、オレの串!」
「俺も腹減ってんだよ。菊池さんはそれも見抜いてたんだと思うな」
「だからダイちゃんを引き留めたのか?」
「6時間以上運転しっぱなしだ。腹も減るさ」
「オレだって6時間以上魔法を酷使してたってことだぞ?」
「メーターの大きさが違うんだよ」
「そう言われたら悪い気はしねぇな」
こっちは燃費が良いと捉えれば、ヨッちゃんはたちまち上機嫌になった。チョロい。
何本か串を仕上げてるうちに、スープの方も茹で上がってくる。
「はいよー、出前一丁」
なぜかダイちゃんが屋台の奥から注文をしてない料理を追加しにくる。
「親父から。お通しとビールを労いでもらったぜ」
「アルコールきた!」
「まだ全てを救出しきれてないのに飲んじゃっていいのか?」
「俺は運転手だから飲めないが、世の中にはノンアルコールビールというものがある。俺はこいつでいただくぜ。それじゃあ二人とも、準備はいいか?」
グラスになみなみ注がれたビールを空中に掲げ、俺たちは儀式の祝詞『乾杯』と共に打ち鳴らした。
疲れ切った臓腑にビールが染み渡っていく。
くぅー! と叫ぶほどの爽快感が体を突き抜けた。
断酒明けのビールは極上の味だった。
そこにタレが染み込んだ豚串が程よく体に満たされていく。
今なら何本でも食えそうだ。
「焼き番、変わるぜ? ポンちゃんも食うのに集中しててくれよ」
「いいのか?」
「俺は修行中の身だぜ? 焼き上げの評価もして欲しいんだが?」
「悪いな、じゃぁ頼む」
そう言って空腹のヨッちゃんの相手をダイちゃんに任せる。
お通しの塩辛がなんともまぁお酒を勧めるのだ。
ベストマッチは日本酒だが、ビールも問題なく進む。
それだけ完成された味だった。
「それと親父が宿題の答えを持ってけって」
「これは?」
「親父流、空ウツボの肝よせ」
「食う食う!」
名前を聞いてヨッちゃんが涎を垂らした。
名前を聞く前から気になってた感じだ。
ヨッちゃんは途中で記憶を失ったのか、俺の肝寄せどこ? と周囲を探してたが、間違いなく自分で食べてたぞ?
俺もいただいたが、この目まぐるしい数日を無かったことにするかのような情報量が一気に流れ込んできた。
なんというか、俺の仕込みとは次元が違う。
しかもこれを店で出せるように安く抑えたというのだから驚きだ。
目を瞑って味の構造を頭の中で巡らせる。
食うだけで笑みが溢れる。
次々と口の中へ頬張りたくなる。
肝の旨みや苦味を一切邪魔することなく、生臭さを完全に消し去ってる。
これに使われてるのはなんだ?
「ポンちゃん、楽しそうな顔してる」
「え、そうか?」
味の構成を探ってた時、横合いからヨッちゃんの声で意識を戻した。
「まぁ、ここ数日張り詰めた事態だったからな、しょうがないとはいえ少しばかり休息も必要だよ。Aランク序列一位だって人間なんだぜ? 機械じゃねぇんだからさ。休息入れようや」
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