ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴

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130話 私がお父さんです 1(side藤本要)

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 ポンちゃんを見送りつつ、オレは残りの男たちにお話聞きたいなーとアピール。

 最上級の強さに媚を売ってくる男たちだ。
 その上で、ここに集められた以上それなりの武勇伝も持つはず。

「あ? ちんちくりんに用はねーんだよ」

 しかし、男の一人が言ってはならないことを言った。

 このオレが、ちんちくりんだとぉ?
 確かに胸はない。スタイルだってよくはない。

 だからって言っていいことと悪いことがあることをお母さんから習わなかったのかよ!

 それに着こなせてる自信のあったドレスにケチをつけられたのは心外だ。
 こっちはこれを着るのも結構恥ずかしかったんだが?

「えー、そんなこと言わずに聞かせてよー」

 男の腕をがっちり掴んで拘束、からの微弱な電流を流して麻痺。
 急に立ちくらみを起こした男に水を渡して微笑んでやる。

「ほらほら、お酒飲み過ぎだぞ? 向こうで介抱してあげるから。どうして天下の轟美玲に突っかかったのか、それも含めて教えてよ」

「突っかかったっていうか、普通に挨拶しにきただけだし……」

 男のうちの一人が急に弱気な声をかける。
 ほんとかー?
 あれはあわよくば下心ありきの顔だったぜー?

 有名人に挨拶するのにあんな顔はしないはずだ。
 最悪、その持ち込んだ酒に睡眠薬でも仕込んでて、お持ち帰りするとかの算段でもなきゃ成立しない悪巧みだったじゃんよ。

 つーか、そもそもの話。
 今回の慰労会もわざわざ船上でやるのも意味不明なんだよな。

 この怪しい慰労会は日本政府企画で日本人対象。
 その中に轟美玲も強制参加。

 SSSSランクに対して日本政府にそんな強権は発動できないのに、やたら強気な姿勢での強制執行。

 オレたちも呼ばれたけど、別にこなくてもいいって欠席可能なのにこれはおかしくねーかって卯保津のオッサンが不思議がってたのが事の始まり。

 それとは別件で政府が企画した慰労会で過去に数名行方不明者が出ているという話も出てきた。

 内閣総理大臣にまつわる黒い噂。
 なんでも、今のステータス格差社会を仕掛けた張本人だという。

 その総理が企画した探索者慰労会は何かがおかしいと、ダンジョンセンター内で実しやかに囁かれているのだとかなんとか。

 ただ、失踪しただけなら警察も動き出すんだが、数日後には帰ってくるのでやがて警察は動かなくなった。

 探索者なんて個人事業主だ。
 どこかに旨みのあるダンジョンがあれば仲間に告げずにこもるなどよくあること、なんて警察側で発表されたらもうおしまい。

 仲間側から、帰ってきた仲間が別人のようだと訴えてもそれ以降警察は動かなくなった。

 まるで政府の域がかかったように、その案件はもみ消されるように、迷宮入りするのだ。

 そして今回、ポンちゃんの相棒である轟美玲がターゲットにされた。

 今までの探索者とは比べ物にならない大物。

 それでも仕掛ける目処が立ったのだろう。
 食事やアルコールにそれらしいものは見当たらないが、だとしたら室内に焚かれたアロマなどが怪しいか。

 オレが周囲にわからないように空気洗浄してたのもあり、轟美玲の被害は抑えられた。

 しかしそれを嗅ぎつけるように現れた男三人組。
 こりゃ何かあると接触してみたら、急に弱気になった。

 何かの暗示をかけられて強気になったとかか?

 だとしたらポンちゃんも危ないぜ。

 なお、男たちの武勇伝はダイちゃんの武勇伝と僅差みたいなものだった。

 いや、ダイちゃんもすごいよ?
 うん。
 北海道でのドライビングテクニックは大したものだったさ。

 でもそれ、一般人にしてはって付くけどな?


 男たちを追いアルコール摂取でノックダウンさせて、ポンちゃんと合流を図る。
 こちとら轟美玲を確保したら会場からおさらばする気満々だったからな。

 え? 会場からどうやって逃げるのかって?
 こっちにゃオリンがいるんだぜ。
 あとはジュリか。
 あいつのやらかしでこちとら日本中はたちまちにワープできるって寸法よ。

 しかしそれは契約者であるポンちゃんが居て初めて成立する。
 オレは契約者でもなんでもないからな。
 世知辛いぜ。

 が、ポンちゃんたちの姿が早速見つからない。
 船内は濃いきりで覆われて、一メートル前も定かじゃないほどの濃霧。

 船の中でこんなことってあるかぁ?
 明らかな以上事態だろ、これ。

 これに気づかない乗客ってどんだけ間抜けなんだ?

 念のため持ってきたDフォンでかけたら繋がった。

『ヨッちゃん!』

「おうおう慌てんな。こっちは無事だ。轟美玲の容態は?」

『一体何が起きてるの?』

 電話口から元気な轟美玲の声がする。
 あれからポンちゃんと一緒に船室に入ったはいいが、どうやらそこから出られないとのことだ。

 まるで扉が岩と接着したかのような頑丈さで、脱出ができないのだとか。

 オレはここにきてからの違和感を言葉に出す。

「これは可能性の話だが、もしかしてここ、すでにダンジョンの中じゃないか?」

『ダンジョン? だったらオリンが反応するはず』

 オリンですら反応できない何かがあるってことか?

「ジュリはどうだ?」

『それがジュリと連絡がつかないんだよ』

 なんだって?
 それってジュリを黙らせるほどの権力を持つってことか?

 ってことは日本政府の手にしてる迷宮管理者って……

「君かな、船内に潜り込んだネズミというのは」

 電話先ではない、背後からの呼びかけに振り返ると、そこではにこやかな笑みを浮かべる老紳士が語りかけてきた。

「失礼なことを聞くおっさんだな。こちとらパーティ参加者だが?」

 出席届を出した手紙を見せつける。
 それをばっと見回して「確かに出席者だね、これは失礼した」と先ほどの言葉を取り消した。

「どうかね、私のパーティは楽しんでもらえてるかね?」

「そのことなんだが、二、三演出過剰な部分がある」

「これは手厳しい。ちょっとしたサプライズも探索者からしてみたら過剰と言われてしまうか」

 通話をしたままで、Dフォンをガーターベルトに差し込んだ。

 それよりもこいつ、今なんて言った?
 私のパーティと、そう言ったか?

 つまりはこいつが主催者。
 このパーティの立案者ってところか。

「船内がこうも霧だらけというのもサプライズなのか?」

「ふぅむ、私には霧なんてどこにも見えないけどね」

「え、オレの目の前に……」

 振り返ると先ほどまで周囲一体に沈殿していた濃霧が見事に晴れ渡っている。
 おかしい、オレの魔法でも振り払えなかった強力な濃霧だったのに。

 このオッサンが現れてから突然に景色が変わった。
 それにオレが歩いていたのは船内、ボイラー室だったはず。

 なのに今いるのは甲板だ。
 まるでオレごとフロアを移動したかのようなトリック。

「あんた、何者だ」

「私を知らない? おかしいな。こう見えて教科書にも載るほどの功績を残してるはずなんだが」

「あいにくと学がなくてね」

「生まれは?」

「Fだが? 文句あんのかよ」

「そしてSSにまで上り詰めたか。なるほど」

 待て、なんでこいつオレのステータス詳細を知ってやがる?
 もしかして看破の類か?

 じゃあオレの生まれなんてわかってるだろう。
 それとももっと別の……

「よくぞ私の元まで這い上がってきた、我が娘よ。私が君のお父さんだよ」

「何を言って……」

 理解が及ばない。
 目の前のこいつは何を言ってるんだ?

 誰が、誰の子供だって?

「おっと、そういえば学がないんだったな。改めて自己紹介といこうか。私は金剛満。君たち風に言えば、一番迷宮管理者の、その契約者さ」

「あんたが……どうしてそれをオレに明かす?」

「信用をしてもらいたいからだよ。そして、今までの人生を乗り越えてきた君にならわかるだろう。このステータス格差社会そのものが人類に課せられた試練であったと」

 人類? 最初からこいつはなんの話をしてるんだ?

「我々の敵は異星人だ。この星の侵略を企む異星人から人類を守っている」

 そんな荒唐無稽な話、誰が信じるっていうんだよ。

「創生者、聞き覚えはあるかい?」

 ノーコメントを貫く。

「あれはこの地球に巣食うダンジョンの生みの親だと聞く。いわば侵略戦争を仕掛けてきた張本人だと私は思っている。私は契約してすぐにそれを理解し、同時にダンジョン管理者を支配下に置くアイテムの開発に至った」

 そこには禍々しいほどのオーラを纏う首輪が握られていた。

「これはあいにくと人間には効果がないんだ。けどね、迷宮管理者と、その契約者には効く。私は日本を有し日の姿に戻したいんだ。その契約者を募るため、今日という日を生きてきた」

 だから、協力してくれるね?
 おっさんの言葉は不思議なくらいオレの中で反響した。

 オレは、誰を信じればいいんだ。

 オリンやジュリの言葉か?

 相棒であるポンちゃん?

 それとも育児放棄をしたこのクソ親父の言葉か?

 考えるまでもない。
 答えなんて最初っから一つだろうがよ。
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