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149話 お互いの言い分
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「ようやく完成したぞ!」
「お、ついにか!」
ヨッちゃんの合いの手で気分を良くした俺は、それぞ手の丼にぴったりのサイズの乾麺をそれぞれに並べて見せて、そしてよっちゃんに沸かしたお湯を注いでもらう。
右から順にラーメン用細麺、ちぢれ麺、太麺、うどん。
大体小麦で作れるやつだ。
他にも熟成乾燥(弱)などもふいんだんに入れて調整した。
問題はその味なのだが……
「全部一緒だなぁ」
「そりゃ素材は一緒だからな。食感はどうなのよ?」
「付け合わせのスープ次第」
「それもそうか。じゃあラーメン用のスープを投入してみてくれ」
準備したのはドレッシング用のソースポット。
赤、黒、白のラベルが貼り付けられている。
「味は?」
「赤いラベルのがミソ、黒いラベルのが醤油、白いラベルのが塩。それぞれ菊池さんからの提供だ。あの人、普通にラーメンも作れるからな」
「ほんとあの人なんでも作れるな!」
「俺に見せていたのはほんの一面に過ぎなかったっていう生粋の化け物だよ。これは当分ダイちゃんは追いつけない奴だぞ?」
「店にあんまり関係ない裏メニューまでこなそうっていうのか?」
「裏メニュー含めて店の看板なんだよ」
多分な。
俺は菊池さんの店の立ち上げについてほとんど知らない。
けど、少しづつ齧っていくうちに凝り始めて自分の味にしたって言われたら納得できてしまう俺も居る。
料理を始めるのに年齢は関係ないんだって。
モーゼの元オーナーや菊池さんを見るたびに思うんだよな。
俺ももう30を越えて数年経つけど、いまだに自分の限界が見えてこない。
疲れたって感情より、そう来たか!
俺だったらどうする? って常に考えてるからな。
そういう意味でも、自分以外の料理人は常にリスペクトしている。俺はまだまだだ。
その差を埋めるために今の自分ができることは?
それがこの極限環境下での簡易飯の制作。
これが俺の成長に役立ってるって信じながら作ったのがこの乾麺とスープである。
正直、素材をこだわればいくらでもうまいものは作れる。
けど、今の需要はそこじゃない。
日持ち。その一点に特化させたものを作る。
その上でうまければ最高だが、今まで当たり前に使っていた素材を取り上げられた状態で仕上がった料理に対し、俺は新しい答えを出しあぐねていた。
正解はひとつもなく、食べた本人が決める。
今までは作り手である俺が決めてたが、今回のスープはあえて物足りなく調整してある。
その狙いは、食べる人に付け足す楽しみを与えたかったからだ。
何でもかんでも与えすぎると、受け取る側はそこで完結してしまうから。
店としてならそれで正解。
けど今の俺たちがやっていることは生き残りをかけたサバイバル。栄養面に気をつけた食事を課せられていた。
旨みが少ないと感じるのは、きっと病院食と似通ってるからだろう。
「じゃあまずは塩からだ」
ヨッちゃんが俺の狙い通りに茹でた麺にスープを注ぎ、よく絡めて啜り始める。
最初こそは「うっすいなぁ」と目が口ほどにものを言い。
「食べれなくはないけど微妙」という顔をする。
なんだかんだスープまで飲み干したあと、俺は新たな添え物を差し出す。
「次はチャーシューを添えて食ってみてくれ」
ヨッちゃんは俺にジトッとした視線を投げつけた。
「後出しやめろよー! そういうのは最初にくれ!」
「そう言うなって。逆にこれは物足りなさを感じてもらうための作りになってんだから」
「どう言う意味だ?」
「最初口にした時、物足りないって顔したじゃん?」
「袋麺食ってるみてーって思ったな」
「それはわざとだ」
「なんでまたそんな面倒くさいことを?」
「各ダンジョンの状態によっては、そこまで蓄えがないからだな。水が豊富にある場所もあれば、口にできるモンスター食材が豊富な場所もある。ダンジョンによっては、特色はみんな違うだろ?」
「何が言いたいか全然わかんねぇ」
「例えば、今回はチャーシューを添えて食べたが、逆に野菜を盛りつけても上手く食えるように味を調整してあるって言ったらどうする?」
「それは食わなきゃわからないだろ?」
「そう言うと思って作ってある」
「流石!」
薄味とはいえ、三杯目のラーメンに果敢に挑むヨッちゃん。
満腹知らずも良いところだ。
「チャーシュー入りのと違って、こっちはスープに野菜の旨みが溶け込んでうまいな。麺はちぢれ麺か! これはこれで良いな!」
チャーシューを入れたバージョンでは出てこない感想を述べて、ようやく気がついたように言う。
「あ、もしかして。各ダンジョンごとで全く違う味に変化するって言うのか?」
「半分正解」
「もう半分は?」
「各ダンジョンごとで味を追求していってほしいなって思う。俺はあくまで元になるきっかけを与えるだけだよ。街を作るんだ。いつまでも俺たちに負んぶに抱っこってわけにもいかないだろ? 欲しいものは俺たちに頼るんじゃなくて、相手の特色に合わせて、発展していって欲しいなって思うんだ」
「はー、そんな長期的な計画を考えてたのか」
「俺たちも、ずっとダンジョンで暮らせるかわからないからな。どこかで命を落とすことがあった時、ずっと俺たちに頼られてたら、困るじゃん」
「後継者を考える年頃ってか?」
「自称弟子はいっぱいいるけど、まだ俺はこれと言った料理すら作れてない駆け出しだ。でも、肩書きのおかげで過剰に取り上げられてるからさ。保険だよ」
「オレも自炊くらい覚えとくかね」
「ヨッちゃんならすぐできると思うよ?」
「ポンちゃんの感覚を掴むのに10年くらいかかりそう」
大袈裟だなぁ。
それからヨッちゃんはなんだかんだ全部のスープを飲んでみて採点を行う。
味はどれも物足りないが、有り合わせのものを組み合わせた時に化ける、そう言う可能性の意味での点数をつけ始める。
「塩は好き。チャーシューもいいけど豚じゃなく鶏肉なんかも良さげ、野菜も合う。味噌はなー、もやしが断然似合う。多分とうもろこしとも合う。バターも欲しい! このままでも普通にうまいけど、あともう一品欲しいかな? そして醤油! こいつに欠けてるのは背脂だ! もちろん醤油以外にも出汁が複数含まれてるのはわかる! が、何よりもコクが物足りない!」
「全部自分の好みじゃないか」
「そりゃそうだろう。オレの所感だからな!」
「まぁ、受け取り手の判断に委ねるさ」
料理の出来栄えを判断するのは俺たちではなく、それを口に入れる人なのだから。
「こんにちわー、美食倶楽部でーす」
「今日は麺類持ってきたぞー! 皆の者、集まれー」
今日はEランクのダンジョンにやってきた。
Fはもう過剰なくらいに世話したので、どんどんとランクを上げて行っている。
しかしそこでみた光景は、顔見知りが見慣れない相手を大勢で囲っている姿だった。
「おいおいおい、こりゃ一体何事だ?」
「あ、ヨッちゃん! 実はこいつらさぁ」
一触即発といった感じの双方だったが、俺たちの登場で場は一転する。
政府直属の配送業者『ダンジョンデリバリー』
彼らは最初こそ、公平な取引に応じていた。
しかしこちらが下手に出てたのをいいことに、足元を見るような交渉をしてきたのだそうだ。
どこにでもいるんだな、そう言う人って。
全員が全員、そうじゃないとはわかってるけど。
元々同じ立場として、何か言って置きたいが、今は立場も違うし、言って聞いてくれるかどうか。
「チッ、こいつらがシケたポイントにしかならないものをよこさないから悪いんだからな!」
「ポイントってなんだ?」
相手側の要求は、そのポイントの高低にあるみたいだ。
ヨッちゃんが周囲に聞いて回るが、ダンジョン遭難者はよくわからないと述べている。
「君たちの目的はそのポイントになるものってことか?」
「あんた誰だよ!」
「俺は本宝治洋一。君たちと同じ加工スキル持ちの男さ」
「は? あんたなんて知らないが?」
「まぁ、今の俺は探索者だからな。特殊調理スキル持ちだ。君たちの先輩に当たる。それで、ポイントというのは一体何か教えてくれるか。お互いに求めるものがわからない状態じゃ、話は平行線だ」
「チッ……」
同じスキル持ちと話せば、ダンジョンの外まで追いかけてくるかもしれないと諦めて少年たちは訳を話してくれた。
「ふむ、察するに君たちは加工した際に獲得するポイントで競い合ってるのか」
「ああ、そうだ。俺たち後続組は先行組と大差をつけられ、日々惨めな暮らしを送ってる」
「そのポイントを貯めると君たちにどんな恩恵が与えられるんだ?」
「生活基盤の上昇、それともっと効率の良いダンジョンへの入場パスだよ。俺たちはとっととこんなポイントの低いダンジョンとおさらばして、上に行きたいの! 邪魔すんじゃねーよ!」
まるでこちらの言葉なんて聞く気のない少年たちに、俺とヨッちゃんは顔を見合わせて肩をすくめる。
なんというか、自分さえ良ければここの人たちがどうなろうと知ったこっちゃないって感じだ。
流石にこんな対応じゃ、ここで暮らしてる人が怒るのは無理もない。
つまり、上に上に行くように競わせるよう仕向けられてるんだ。
何故?
そこに美味しい報酬を置いたからだろう。
最初こそ加工スキルによるポイント稼ぎ。
しかし競争社会に身を置けば、上へ上へ目指したくなる。
というか、それをされたら困るのはダンジョン遭難者なのだが……
「うーん、君たちの言い分はわかった。正直ポイントというのがよくわからないが、君達がそのポイントをここでも稼げれば問題ない訳だ」
「は? それができないから俺たちは困ってるわけで……」
「ヨッちゃん、俺たちが一丁手を貸すか」
「まぁ、それしかねーわな」
「いいのかい? こんなろくでなしども、わざわざ手助けしてやんなくたっていいのにさ」
「それで困るのはここやもっと低いダンジョンですよ。要は低ランクダンジョンにもうまいポイントがあると教えれば、彼らは自然と集まってくるって事ですよ」
よくわからないが、きっとそうに違いない。
俺たちは彼らの加工スキルをどのように扱っているかを聞き出し、その可能性を広げる手助けをした。
「お、ついにか!」
ヨッちゃんの合いの手で気分を良くした俺は、それぞ手の丼にぴったりのサイズの乾麺をそれぞれに並べて見せて、そしてよっちゃんに沸かしたお湯を注いでもらう。
右から順にラーメン用細麺、ちぢれ麺、太麺、うどん。
大体小麦で作れるやつだ。
他にも熟成乾燥(弱)などもふいんだんに入れて調整した。
問題はその味なのだが……
「全部一緒だなぁ」
「そりゃ素材は一緒だからな。食感はどうなのよ?」
「付け合わせのスープ次第」
「それもそうか。じゃあラーメン用のスープを投入してみてくれ」
準備したのはドレッシング用のソースポット。
赤、黒、白のラベルが貼り付けられている。
「味は?」
「赤いラベルのがミソ、黒いラベルのが醤油、白いラベルのが塩。それぞれ菊池さんからの提供だ。あの人、普通にラーメンも作れるからな」
「ほんとあの人なんでも作れるな!」
「俺に見せていたのはほんの一面に過ぎなかったっていう生粋の化け物だよ。これは当分ダイちゃんは追いつけない奴だぞ?」
「店にあんまり関係ない裏メニューまでこなそうっていうのか?」
「裏メニュー含めて店の看板なんだよ」
多分な。
俺は菊池さんの店の立ち上げについてほとんど知らない。
けど、少しづつ齧っていくうちに凝り始めて自分の味にしたって言われたら納得できてしまう俺も居る。
料理を始めるのに年齢は関係ないんだって。
モーゼの元オーナーや菊池さんを見るたびに思うんだよな。
俺ももう30を越えて数年経つけど、いまだに自分の限界が見えてこない。
疲れたって感情より、そう来たか!
俺だったらどうする? って常に考えてるからな。
そういう意味でも、自分以外の料理人は常にリスペクトしている。俺はまだまだだ。
その差を埋めるために今の自分ができることは?
それがこの極限環境下での簡易飯の制作。
これが俺の成長に役立ってるって信じながら作ったのがこの乾麺とスープである。
正直、素材をこだわればいくらでもうまいものは作れる。
けど、今の需要はそこじゃない。
日持ち。その一点に特化させたものを作る。
その上でうまければ最高だが、今まで当たり前に使っていた素材を取り上げられた状態で仕上がった料理に対し、俺は新しい答えを出しあぐねていた。
正解はひとつもなく、食べた本人が決める。
今までは作り手である俺が決めてたが、今回のスープはあえて物足りなく調整してある。
その狙いは、食べる人に付け足す楽しみを与えたかったからだ。
何でもかんでも与えすぎると、受け取る側はそこで完結してしまうから。
店としてならそれで正解。
けど今の俺たちがやっていることは生き残りをかけたサバイバル。栄養面に気をつけた食事を課せられていた。
旨みが少ないと感じるのは、きっと病院食と似通ってるからだろう。
「じゃあまずは塩からだ」
ヨッちゃんが俺の狙い通りに茹でた麺にスープを注ぎ、よく絡めて啜り始める。
最初こそは「うっすいなぁ」と目が口ほどにものを言い。
「食べれなくはないけど微妙」という顔をする。
なんだかんだスープまで飲み干したあと、俺は新たな添え物を差し出す。
「次はチャーシューを添えて食ってみてくれ」
ヨッちゃんは俺にジトッとした視線を投げつけた。
「後出しやめろよー! そういうのは最初にくれ!」
「そう言うなって。逆にこれは物足りなさを感じてもらうための作りになってんだから」
「どう言う意味だ?」
「最初口にした時、物足りないって顔したじゃん?」
「袋麺食ってるみてーって思ったな」
「それはわざとだ」
「なんでまたそんな面倒くさいことを?」
「各ダンジョンの状態によっては、そこまで蓄えがないからだな。水が豊富にある場所もあれば、口にできるモンスター食材が豊富な場所もある。ダンジョンによっては、特色はみんな違うだろ?」
「何が言いたいか全然わかんねぇ」
「例えば、今回はチャーシューを添えて食べたが、逆に野菜を盛りつけても上手く食えるように味を調整してあるって言ったらどうする?」
「それは食わなきゃわからないだろ?」
「そう言うと思って作ってある」
「流石!」
薄味とはいえ、三杯目のラーメンに果敢に挑むヨッちゃん。
満腹知らずも良いところだ。
「チャーシュー入りのと違って、こっちはスープに野菜の旨みが溶け込んでうまいな。麺はちぢれ麺か! これはこれで良いな!」
チャーシューを入れたバージョンでは出てこない感想を述べて、ようやく気がついたように言う。
「あ、もしかして。各ダンジョンごとで全く違う味に変化するって言うのか?」
「半分正解」
「もう半分は?」
「各ダンジョンごとで味を追求していってほしいなって思う。俺はあくまで元になるきっかけを与えるだけだよ。街を作るんだ。いつまでも俺たちに負んぶに抱っこってわけにもいかないだろ? 欲しいものは俺たちに頼るんじゃなくて、相手の特色に合わせて、発展していって欲しいなって思うんだ」
「はー、そんな長期的な計画を考えてたのか」
「俺たちも、ずっとダンジョンで暮らせるかわからないからな。どこかで命を落とすことがあった時、ずっと俺たちに頼られてたら、困るじゃん」
「後継者を考える年頃ってか?」
「自称弟子はいっぱいいるけど、まだ俺はこれと言った料理すら作れてない駆け出しだ。でも、肩書きのおかげで過剰に取り上げられてるからさ。保険だよ」
「オレも自炊くらい覚えとくかね」
「ヨッちゃんならすぐできると思うよ?」
「ポンちゃんの感覚を掴むのに10年くらいかかりそう」
大袈裟だなぁ。
それからヨッちゃんはなんだかんだ全部のスープを飲んでみて採点を行う。
味はどれも物足りないが、有り合わせのものを組み合わせた時に化ける、そう言う可能性の意味での点数をつけ始める。
「塩は好き。チャーシューもいいけど豚じゃなく鶏肉なんかも良さげ、野菜も合う。味噌はなー、もやしが断然似合う。多分とうもろこしとも合う。バターも欲しい! このままでも普通にうまいけど、あともう一品欲しいかな? そして醤油! こいつに欠けてるのは背脂だ! もちろん醤油以外にも出汁が複数含まれてるのはわかる! が、何よりもコクが物足りない!」
「全部自分の好みじゃないか」
「そりゃそうだろう。オレの所感だからな!」
「まぁ、受け取り手の判断に委ねるさ」
料理の出来栄えを判断するのは俺たちではなく、それを口に入れる人なのだから。
「こんにちわー、美食倶楽部でーす」
「今日は麺類持ってきたぞー! 皆の者、集まれー」
今日はEランクのダンジョンにやってきた。
Fはもう過剰なくらいに世話したので、どんどんとランクを上げて行っている。
しかしそこでみた光景は、顔見知りが見慣れない相手を大勢で囲っている姿だった。
「おいおいおい、こりゃ一体何事だ?」
「あ、ヨッちゃん! 実はこいつらさぁ」
一触即発といった感じの双方だったが、俺たちの登場で場は一転する。
政府直属の配送業者『ダンジョンデリバリー』
彼らは最初こそ、公平な取引に応じていた。
しかしこちらが下手に出てたのをいいことに、足元を見るような交渉をしてきたのだそうだ。
どこにでもいるんだな、そう言う人って。
全員が全員、そうじゃないとはわかってるけど。
元々同じ立場として、何か言って置きたいが、今は立場も違うし、言って聞いてくれるかどうか。
「チッ、こいつらがシケたポイントにしかならないものをよこさないから悪いんだからな!」
「ポイントってなんだ?」
相手側の要求は、そのポイントの高低にあるみたいだ。
ヨッちゃんが周囲に聞いて回るが、ダンジョン遭難者はよくわからないと述べている。
「君たちの目的はそのポイントになるものってことか?」
「あんた誰だよ!」
「俺は本宝治洋一。君たちと同じ加工スキル持ちの男さ」
「は? あんたなんて知らないが?」
「まぁ、今の俺は探索者だからな。特殊調理スキル持ちだ。君たちの先輩に当たる。それで、ポイントというのは一体何か教えてくれるか。お互いに求めるものがわからない状態じゃ、話は平行線だ」
「チッ……」
同じスキル持ちと話せば、ダンジョンの外まで追いかけてくるかもしれないと諦めて少年たちは訳を話してくれた。
「ふむ、察するに君たちは加工した際に獲得するポイントで競い合ってるのか」
「ああ、そうだ。俺たち後続組は先行組と大差をつけられ、日々惨めな暮らしを送ってる」
「そのポイントを貯めると君たちにどんな恩恵が与えられるんだ?」
「生活基盤の上昇、それともっと効率の良いダンジョンへの入場パスだよ。俺たちはとっととこんなポイントの低いダンジョンとおさらばして、上に行きたいの! 邪魔すんじゃねーよ!」
まるでこちらの言葉なんて聞く気のない少年たちに、俺とヨッちゃんは顔を見合わせて肩をすくめる。
なんというか、自分さえ良ければここの人たちがどうなろうと知ったこっちゃないって感じだ。
流石にこんな対応じゃ、ここで暮らしてる人が怒るのは無理もない。
つまり、上に上に行くように競わせるよう仕向けられてるんだ。
何故?
そこに美味しい報酬を置いたからだろう。
最初こそ加工スキルによるポイント稼ぎ。
しかし競争社会に身を置けば、上へ上へ目指したくなる。
というか、それをされたら困るのはダンジョン遭難者なのだが……
「うーん、君たちの言い分はわかった。正直ポイントというのがよくわからないが、君達がそのポイントをここでも稼げれば問題ない訳だ」
「は? それができないから俺たちは困ってるわけで……」
「ヨッちゃん、俺たちが一丁手を貸すか」
「まぁ、それしかねーわな」
「いいのかい? こんなろくでなしども、わざわざ手助けしてやんなくたっていいのにさ」
「それで困るのはここやもっと低いダンジョンですよ。要は低ランクダンジョンにもうまいポイントがあると教えれば、彼らは自然と集まってくるって事ですよ」
よくわからないが、きっとそうに違いない。
俺たちは彼らの加工スキルをどのように扱っているかを聞き出し、その可能性を広げる手助けをした。
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