もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴

文字の大きさ
30 / 88
二章 ゴミ拾いともふもふ生活

30 新しい家族

しおりを挟む
ブラッシングをしている。
先日ロキから新しく舎弟にしたモンスターが居ると夜分遅くに叩き起こされて保護されたモンスターだ。
真っ赤なたてがみを持つ双頭の獅子。
今は僕の腕の中で温めたミルクをちゅうちゅう吸っている。

頭が二つある以外は猫のようだ。
ブラッシングしてやれば気持ちよさそうにくぁーっっとあくびした。手足をバタバタさせて身じろぎした後、ケプッとゲップした。

見上げるほどの巨体も、僕の『伸縮』で一抱え出来るほどのサイズとなった。
新しい子の名前はプロフェンとした。
ソニンを姉と慕う、甘えん坊だ。
普段は図体がでかいが、ここでは小さくしたので新しい境地に至ってるらしい。
生まれながらに大きかったから、小さい自分が新鮮なようだ。

僕からブラッシングを奪った相手としてプロフェンに嫉妬むき出しだ。近づくなりポフポフとしたパンチや蹴り、頭突きなどを喰らわしている。若干浮遊させてるので踏ん張りが効かず、本来の力を出せずにいる。
意外なところで役に立ったな、浮遊。

「兄さん、ソニンのブラッシングしてあげて。僕はプロフェンのお世話してあげなくちゃいけないから」
「それはクエストか?」

兄さんがいつになく真面目な顔で聞いてくる。
確かに僕は今兄さんに物のついでのように任せようとした。
しかし兄さんはタダでやると仕事がハンパになる。
世話するならしっかりしたい。しかし本格的にやるなら資金投資が必要だ。だから任せるならクエストを挟んでくれと言った。

「うん、夕飯は僕が奢るよ。だからお願い」
「聞いたか? ミキリー」
「ああ、ばっちりさ」

兄さんがニンマリと笑い、手をワキワキとさせる。
ミキリーさんに至ってはブラシと毛玉を入れておく桶を用意している。すっかりあやす気満々だ。

「そうやって。本当はお世話したくてたまらなかったくせに。無償でやってあげたらいいじゃないですか」
「ばかやろー、ストックお前。確かにオレたちはお世話したくて仕方なかった。そうさ、ずっとソニンを抱っこさせてもらいたかったよ。でもなぁ、お世話に夢中になりすぎて仕事が手につかなくなる! だが、それを仕事にしちまえば両得だろうが!」
「威張ることですか?」

ストックさんのツッコミは華麗にスルーされた。
そして当のソニンと言えば、

『暑苦しい』

兄さん達からの熱量がすごいと、落ち着かないようだ。





「これはどう見てもツインヘッドベヒーモスだが、相違ないか?」

ギルドマスターさんが新しい獣魔契約の際に、プロフェンに向かってそう尋ねた。
その真っ赤なたてがみは珍しいが、双頭の時点で隠しきれない大物オーラが出てるらしい。

本来は山林に収まる図体ではないのだが……と僕の手の中でミルクを吸う姿を見てすっかり厳つい表情を崩している。

「僕の新しい獣魔にするには無理がありましたか?」
「くぅん?」
「見た目は子犬みたいだな。サイズが小さくなると何とも可愛らしくなるモノだ」
「実際は見上げるほどの巨体ですね。しゃがんでも森の木より大きいです」
「だろうな」

ギルドマスターさんが眉間を揉み込み、僕の護衛を買って出てくれているオレノーさんへ目配せする。

「一度ハンターラビットを見逃してる。だがこれは流石に見過ごせないよな?」
「珍しいたてがみ。欲しがるコレクターはいくらでもいるでしょう」
「討伐隊を出せと言っても何人死ぬか分からんぞ?」
「じゃあ、見なかったことにしましょう」

オレノーさんは両手を上げた。
ギルドマスターさんは役に立たん奴め、と第二王子を扱き下ろす。

「どちらにせよ、見なかったことにすれば面倒ごとにならなくて済むか。日中はそのサイズで過ごしてくれるのか?」
「それは、はい。ソニンと一緒にバスケットで寝てもらいます」
「ちなみに坊やのスキルの範囲は?」
「今ですと、このギルドの中くらいならギリギリ効果は届きます」
「持ち出されたらアウト、か。オレノー、引き続き頼めるか?」
「護衛対象がどっちか分からなくなるが、引き受けよう。その代わりバレたら一蓮托生だぜ?」
「分かってる。はぁ、次から次へと面倒ごとが舞い込んできて頭が痛くなるな」
「そう言うな。坊やのお陰で大事にならずにすんでるんだ」
「その坊やがいちばんの頭痛の種なんだがな」
「そこは大人が責任を取ればいいのさ」
「それもそうだ」

オレノーさんとギルドマスターさんがすっかり話し込んでしまった。
僕としても迷惑かけるつもりはないので、新しいマスコットとしてプロフェンを売り出して行かなきゃね。

さぁて、忙しくなるぞー。
談話室からプロフェンを連れて戻ると、ソニンをお世話してる兄さん達を囲うように冒険者達が賑わっていた。
兄さんの腕の中で満更でもなさそうにニンジンを与えられている。

良かったね、ソニン。みんなから愛されて。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

【完結】そうは聖女が許さない〜魔女だと追放された伝説の聖女、神獣フェンリルとスローライフを送りたい……けど【聖水チート】で世界を浄化する〜

阿納あざみ
ファンタジー
光輝くの玉座に座るのは、嘘で塗り固められた偽りの救世主。 辺境の地に追いやられたのは、『国崩しの魔女』の烙印を押された、本物の奇跡。 滅びゆく王国に召喚されたのは、二人の女子高生。 一人は、そのカリスマ性で人々を魅了するクラスの女王。 もう一人は、その影で虐げられてきた私。 偽りの救世主は、巧みな嘘で王国の実権を掌握すると、私に宿る“本当の力”を恐れるがゆえに大罪を着せ、瘴気の魔獣が跋扈する禁忌の地――辺境へと追放した。 だが、全てを失った絶望の地でこそ、物語は真の幕を開けるのだった。 △▼△▼△▼△▼△ 女性HOTランキング5位ありがとうございます!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

処理中です...