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七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)
75 ロンローン捕獲クエスト
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ロンローンは淡水系の川魚らしい。
クエスト制限は特になく、低ランクから釣りによって捕獲するのが最もポピュラーなのだそうだ。
なので案の定と言うか、クエストを受けずに来る層があまりにも多かった。
クエストは物によっては報酬額が安くなる場合が多く、この町で暮らしてる人から見れば買い叩かれてるように感じるらしい。
なので現地の住民は直接宿屋や串焼き屋と契約を結んで、卸売りする分だけ釣るんだって。
この場合多く持って行き過ぎても売れないから見極めが大変だとも言っていた。
「混雑してるなぁ」
「河原の向こう側まで人がいるよ?」
トラネが木の上から見渡し、遠くを見る。
「こりゃ出遅れたか?」
「まずは言ってみてからだよね」
川に住んでるのさえわかればどうとでもなるはずだ。
僕達にはとっておきの裏技があるからね。
別名:ズル。
人気のない山道までやってくるなり、浮遊で川の水を持ち上げた。
ロンローンが居るのは把握済みだ。
お肉を一回ゴミで拾って、検知させてるからね。
拾わずともこう言うことができるのがゴミ拾いのいいところなのだ。
あとは僕達から逃げようとするロンローンを一匹ずつ『引き寄せ』て、網に入れる。
入れ食いだ。ちょっと多めに釣って、報酬を上乗せしようと企んだところでモンスターが現れた。
僕たちの釣ったお魚、ロンローンが狙いみたいだ。
子供が三人だからって油断したね?
僕達だってロキが居なくても兄さんに負けないところを証明しておかないとね。
現れたのはウルフだった。
青い瞳に青い毛色。バファリンでは見かけないタイプのウルフだ。
「キサム、このタイプ見たことある?」
「いや、ねーな。罠が効きゃいいけど」
「動き止めるね。トラネ、牽制お願い」
「オッケー!」
ザカザカと木の上に登り切り、狙いを定める。
ブルーウルフはトラネを見定め、その場で威嚇。
身を屈めるなる、そのままジャンプしようと飛びかかる。
狙われたらたまらないと判断したのだろう。
「させっかよ! トラップシュート!」
キサムがトラバサミをブーメランのように投げつける。
それがブルーウルフの足にヒットした。
「ナイスキサム! ダブルシュート!」
魔石は赤! 血を抜かれて昏倒したブルーウルフ。
そこにトラネの弓が怯んで丸まった背中に二本刺さる。
ブルーウルフはそれで劣勢と判断してどこかに消えてしまった。
「成敗!」
「ロンローンの魅力にはモンスターも抗えないんだろうね。もしかしたらここは彼らの餌場だったのかもしれない」
「ああ、じゃあ不届きものはあたし達の方だった?」
「かもね」
なんて事を語りながら元の釣り場へと戻った。
お日様が真上に上がる頃には河原の人だかりもまばらになっていた。お昼に出すために一度街に戻ったのかもしれないね。
「俺たちも帰ろうぜ?」
「だねー」
「お昼は何食べようか?」
「あたし蒲焼!」
「じゃあ俺も」
「まずはこれを納品してからだね」
何匹かはロキ達の為に拾っておく。
後で熟成調理に使う為だ。
あれだけロンローンに群がっている以上、あまり乱獲するのも問題だろうと言う気がしていた。
「おかえりなさい、ルーク君。ロンローン捕獲クエスト受けたんですってね?」
いつの間にか復活してたキューテンさんが受付に舞い戻っていた。
「はい。人が多くてゲットするのに結構時間を取られてしまいました」
「仕方ないわ。街中が今てんてこ舞いだもの。数はピッタリね、今査定するわね?」
「よろしくおねがいしまーす」
キューテンさんが奥に引っ込むと、受付にロキぐるみが置かれる。首からは査定中とカードが下げられている。
早速活用してくれてるんだ。
そこへそのぬいぐるみをじっと見つめる人物が現れた。
「これは……精巧だな。一瞬本物かと思ったが、息をしていない」
「あの……」
「ああ、横から割って入って済まない。私はこう言う物だ」
胸につけてる冒険者ライセンス。
そこにはBと大きく記されている。
普通ライセンスは首から下げるのが一般的なのに、珍しいな。
「ダメだ姉御、失敗した。いつもの場所に先客が居てよ」
そこへ背中に傷を受けた青い毛色の二足歩行の獣人が現れた。リカントだ。初めて見た。
ニャンジャーと同様に二足歩行で歩くオオカミ族だ。
冒険者の格好をしてることから、Bランク冒険者のお姉さんの仲間みたいだね。
「むぅ、ロンローンの肉の入手が出来なかったとなるとクエストの依頼主に申し訳が立たない。ベン、ザブロックと共に他の場所を当たってくれないか? クエストの期限は本日限りだ。頼むよ」
「ったくウルフ使いの荒いご主人様だぜ! おら、ザブロック! いつまで寝こけてやがる。行くぞ!」
「ケーン!」
もう一人の相棒はバードタイプのモンスターだ。
こちらも青色の翼をはためかせ、ベンと呼ばれたリカントと一緒にギルドを後にした。
「済まないね、うちの連中はどうもマイペースで。それで坊や達はどんなクエストを受けていたんだい?」
「ロンローンの捕獲クエストですね」
「奇しくも同じクエストか。では今はライバルということになるかな?」
「いえ、クエストは終わって納品してるところですね。なので僕たちは一抜けします」
「は? 地元民でもないのにどうやってこの短時間で釣り上げた?」
お姉さんはびっくりしたように表情を凍り付かせる。
そこへキューテンさんが奥から帰ってきた。
ロキぐるみを鷲掴んで自分の胸元に置くと、そのまま受付業に戻る。定位置そこなんだ?
「お待たせしました。非常に状態の良いロンローンで、これならクエスト発注者もお喜びになられると思います。今回はこの街での初めてのクエストでしたが、兄さん達が絶賛するだけはあります」
「キューテン、この子達は君の知り合いか?」
「あ、ストナさん。私の知り合いというより、兄さん達が贔屓にしてる子達なんですよ。パブロンの毛皮産業を知っていますか?」
「知っている。あの毛皮はすごく貴重な物だ。しかしこの子とどんな関係がある?」
「この子がその毛皮修復師なんですよ。専業は冒険者で、そっちは副業との事です」
「では、君があのルーク氏か!」
「えと、あの! と言われるほどのものじゃありませんが、僕がルークです」
「ファンです!」
「恐縮です」
まさかのファンだった。こうやって表立ってファンだって言われるのは照れるね。
そしてこのギルドで有名な凄腕のテイマーとは彼女のことだそうだ。
「そう、お兄さんが闘技大会にエントリーしてその応援に」
「はい。兄さんから聞きました。ストナさんも出場なさるそうで」
「あはは、まぁ毎回挑んでるんだけど上位陣の層が分厚くてね。結構良いところまで行くんだけど、なかなか難しいのよ」
「ストナさんですら優勝は程遠いと?」
「良いところまでは行くのよ? でも当然、年々ランキングは変動する。私が挑戦し続けてるのはとある夢のためでもあるのよね」
「夢……ですか」
「うん、まぁ良い歳して何言ってるんだかって感じだけどね」
「夢を見るのに年齢は関係ないですよ」
「そう言ってくれたら気が楽になるわ。ありがと」
はにかむストナさんは全然若い。
僕はまだ子供だけで十分魅力的に見えた。
そこへ、
「だーらっしゃーー!! 捕まえてきたぜ姉御!」
「五月蝿いわよ、ベン」
「俺らにだけ働かせていうゴミ分だよなぁ? 坊主もこんな大人になっちゃダメだぞぉー?」
ベンさんが僕の顔を見るなり、何かを思い出したように目を細める。ついでに隣のテーブルで軽食をつまむトラネとキサムに目がいき、そして唐突に指を差す。
「あーーーー! お前ら!」
大声で叫び、ギルド中の注目を集めるベンさんだった。
クエスト制限は特になく、低ランクから釣りによって捕獲するのが最もポピュラーなのだそうだ。
なので案の定と言うか、クエストを受けずに来る層があまりにも多かった。
クエストは物によっては報酬額が安くなる場合が多く、この町で暮らしてる人から見れば買い叩かれてるように感じるらしい。
なので現地の住民は直接宿屋や串焼き屋と契約を結んで、卸売りする分だけ釣るんだって。
この場合多く持って行き過ぎても売れないから見極めが大変だとも言っていた。
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「河原の向こう側まで人がいるよ?」
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「こりゃ出遅れたか?」
「まずは言ってみてからだよね」
川に住んでるのさえわかればどうとでもなるはずだ。
僕達にはとっておきの裏技があるからね。
別名:ズル。
人気のない山道までやってくるなり、浮遊で川の水を持ち上げた。
ロンローンが居るのは把握済みだ。
お肉を一回ゴミで拾って、検知させてるからね。
拾わずともこう言うことができるのがゴミ拾いのいいところなのだ。
あとは僕達から逃げようとするロンローンを一匹ずつ『引き寄せ』て、網に入れる。
入れ食いだ。ちょっと多めに釣って、報酬を上乗せしようと企んだところでモンスターが現れた。
僕たちの釣ったお魚、ロンローンが狙いみたいだ。
子供が三人だからって油断したね?
僕達だってロキが居なくても兄さんに負けないところを証明しておかないとね。
現れたのはウルフだった。
青い瞳に青い毛色。バファリンでは見かけないタイプのウルフだ。
「キサム、このタイプ見たことある?」
「いや、ねーな。罠が効きゃいいけど」
「動き止めるね。トラネ、牽制お願い」
「オッケー!」
ザカザカと木の上に登り切り、狙いを定める。
ブルーウルフはトラネを見定め、その場で威嚇。
身を屈めるなる、そのままジャンプしようと飛びかかる。
狙われたらたまらないと判断したのだろう。
「させっかよ! トラップシュート!」
キサムがトラバサミをブーメランのように投げつける。
それがブルーウルフの足にヒットした。
「ナイスキサム! ダブルシュート!」
魔石は赤! 血を抜かれて昏倒したブルーウルフ。
そこにトラネの弓が怯んで丸まった背中に二本刺さる。
ブルーウルフはそれで劣勢と判断してどこかに消えてしまった。
「成敗!」
「ロンローンの魅力にはモンスターも抗えないんだろうね。もしかしたらここは彼らの餌場だったのかもしれない」
「ああ、じゃあ不届きものはあたし達の方だった?」
「かもね」
なんて事を語りながら元の釣り場へと戻った。
お日様が真上に上がる頃には河原の人だかりもまばらになっていた。お昼に出すために一度街に戻ったのかもしれないね。
「俺たちも帰ろうぜ?」
「だねー」
「お昼は何食べようか?」
「あたし蒲焼!」
「じゃあ俺も」
「まずはこれを納品してからだね」
何匹かはロキ達の為に拾っておく。
後で熟成調理に使う為だ。
あれだけロンローンに群がっている以上、あまり乱獲するのも問題だろうと言う気がしていた。
「おかえりなさい、ルーク君。ロンローン捕獲クエスト受けたんですってね?」
いつの間にか復活してたキューテンさんが受付に舞い戻っていた。
「はい。人が多くてゲットするのに結構時間を取られてしまいました」
「仕方ないわ。街中が今てんてこ舞いだもの。数はピッタリね、今査定するわね?」
「よろしくおねがいしまーす」
キューテンさんが奥に引っ込むと、受付にロキぐるみが置かれる。首からは査定中とカードが下げられている。
早速活用してくれてるんだ。
そこへそのぬいぐるみをじっと見つめる人物が現れた。
「これは……精巧だな。一瞬本物かと思ったが、息をしていない」
「あの……」
「ああ、横から割って入って済まない。私はこう言う物だ」
胸につけてる冒険者ライセンス。
そこにはBと大きく記されている。
普通ライセンスは首から下げるのが一般的なのに、珍しいな。
「ダメだ姉御、失敗した。いつもの場所に先客が居てよ」
そこへ背中に傷を受けた青い毛色の二足歩行の獣人が現れた。リカントだ。初めて見た。
ニャンジャーと同様に二足歩行で歩くオオカミ族だ。
冒険者の格好をしてることから、Bランク冒険者のお姉さんの仲間みたいだね。
「むぅ、ロンローンの肉の入手が出来なかったとなるとクエストの依頼主に申し訳が立たない。ベン、ザブロックと共に他の場所を当たってくれないか? クエストの期限は本日限りだ。頼むよ」
「ったくウルフ使いの荒いご主人様だぜ! おら、ザブロック! いつまで寝こけてやがる。行くぞ!」
「ケーン!」
もう一人の相棒はバードタイプのモンスターだ。
こちらも青色の翼をはためかせ、ベンと呼ばれたリカントと一緒にギルドを後にした。
「済まないね、うちの連中はどうもマイペースで。それで坊や達はどんなクエストを受けていたんだい?」
「ロンローンの捕獲クエストですね」
「奇しくも同じクエストか。では今はライバルということになるかな?」
「いえ、クエストは終わって納品してるところですね。なので僕たちは一抜けします」
「は? 地元民でもないのにどうやってこの短時間で釣り上げた?」
お姉さんはびっくりしたように表情を凍り付かせる。
そこへキューテンさんが奥から帰ってきた。
ロキぐるみを鷲掴んで自分の胸元に置くと、そのまま受付業に戻る。定位置そこなんだ?
「お待たせしました。非常に状態の良いロンローンで、これならクエスト発注者もお喜びになられると思います。今回はこの街での初めてのクエストでしたが、兄さん達が絶賛するだけはあります」
「キューテン、この子達は君の知り合いか?」
「あ、ストナさん。私の知り合いというより、兄さん達が贔屓にしてる子達なんですよ。パブロンの毛皮産業を知っていますか?」
「知っている。あの毛皮はすごく貴重な物だ。しかしこの子とどんな関係がある?」
「この子がその毛皮修復師なんですよ。専業は冒険者で、そっちは副業との事です」
「では、君があのルーク氏か!」
「えと、あの! と言われるほどのものじゃありませんが、僕がルークです」
「ファンです!」
「恐縮です」
まさかのファンだった。こうやって表立ってファンだって言われるのは照れるね。
そしてこのギルドで有名な凄腕のテイマーとは彼女のことだそうだ。
「そう、お兄さんが闘技大会にエントリーしてその応援に」
「はい。兄さんから聞きました。ストナさんも出場なさるそうで」
「あはは、まぁ毎回挑んでるんだけど上位陣の層が分厚くてね。結構良いところまで行くんだけど、なかなか難しいのよ」
「ストナさんですら優勝は程遠いと?」
「良いところまでは行くのよ? でも当然、年々ランキングは変動する。私が挑戦し続けてるのはとある夢のためでもあるのよね」
「夢……ですか」
「うん、まぁ良い歳して何言ってるんだかって感じだけどね」
「夢を見るのに年齢は関係ないですよ」
「そう言ってくれたら気が楽になるわ。ありがと」
はにかむストナさんは全然若い。
僕はまだ子供だけで十分魅力的に見えた。
そこへ、
「だーらっしゃーー!! 捕まえてきたぜ姉御!」
「五月蝿いわよ、ベン」
「俺らにだけ働かせていうゴミ分だよなぁ? 坊主もこんな大人になっちゃダメだぞぉー?」
ベンさんが僕の顔を見るなり、何かを思い出したように目を細める。ついでに隣のテーブルで軽食をつまむトラネとキサムに目がいき、そして唐突に指を差す。
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