もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴

文字の大きさ
75 / 88
七章 もふもふファミリーと闘技大会(本編)

75 ロンローン捕獲クエスト

しおりを挟む
ロンローンは淡水系の川魚らしい。
クエスト制限は特になく、低ランクから釣りによって捕獲するのが最もポピュラーなのだそうだ。

なので案の定と言うか、クエストを受けずに来る層があまりにも多かった。
クエストは物によっては報酬額が安くなる場合が多く、この町で暮らしてる人から見れば買い叩かれてるように感じるらしい。

なので現地の住民は直接宿屋や串焼き屋と契約を結んで、卸売りする分だけ釣るんだって。
この場合多く持って行き過ぎても売れないから見極めが大変だとも言っていた。

「混雑してるなぁ」
「河原の向こう側まで人がいるよ?」

トラネが木の上から見渡し、遠くを見る。

「こりゃ出遅れたか?」
「まずは言ってみてからだよね」

川に住んでるのさえわかればどうとでもなるはずだ。
僕達にはとっておきの裏技があるからね。
別名:ズル。
人気のない山道までやってくるなり、浮遊で川の水を持ち上げた。
ロンローンが居るのは把握済みだ。
お肉を一回ゴミで拾って、検知させてるからね。
拾わずともこう言うことができるのがゴミ拾いのいいところなのだ。

あとは僕達から逃げようとするロンローンを一匹ずつ『引き寄せ』て、網に入れる。
入れ食いだ。ちょっと多めに釣って、報酬を上乗せしようと企んだところでモンスターが現れた。

僕たちの釣ったお魚、ロンローンが狙いみたいだ。
子供が三人だからって油断したね?

僕達だってロキが居なくても兄さんに負けないところを証明しておかないとね。

現れたのはウルフだった。
青い瞳に青い毛色。バファリンでは見かけないタイプのウルフだ。

「キサム、このタイプ見たことある?」
「いや、ねーな。罠が効きゃいいけど」
「動き止めるね。トラネ、牽制お願い」
「オッケー!」

ザカザカと木の上に登り切り、狙いを定める。
ブルーウルフはトラネを見定め、その場で威嚇。
身を屈めるなる、そのままジャンプしようと飛びかかる。
狙われたらたまらないと判断したのだろう。

「させっかよ! トラップシュート!」

キサムがトラバサミをブーメランのように投げつける。
それがブルーウルフの足にヒットした。

「ナイスキサム! ダブルシュート!」

魔石は赤! 血を抜かれて昏倒したブルーウルフ。
そこにトラネの弓が怯んで丸まった背中に二本刺さる。
ブルーウルフはそれで劣勢と判断してどこかに消えてしまった。

「成敗!」
「ロンローンの魅力にはモンスターも抗えないんだろうね。もしかしたらここは彼らの餌場だったのかもしれない」
「ああ、じゃあ不届きものはあたし達の方だった?」
「かもね」

なんて事を語りながら元の釣り場へと戻った。
お日様が真上に上がる頃には河原の人だかりもまばらになっていた。お昼に出すために一度街に戻ったのかもしれないね。

「俺たちも帰ろうぜ?」
「だねー」
「お昼は何食べようか?」
「あたし蒲焼!」
「じゃあ俺も」
「まずはこれを納品してからだね」

何匹かはロキ達の為に拾っておく。
後で熟成調理に使う為だ。
あれだけロンローンに群がっている以上、あまり乱獲するのも問題だろうと言う気がしていた。

「おかえりなさい、ルーク君。ロンローン捕獲クエスト受けたんですってね?」

いつの間にか復活してたキューテンさんが受付に舞い戻っていた。

「はい。人が多くてゲットするのに結構時間を取られてしまいました」
「仕方ないわ。街中が今てんてこ舞いだもの。数はピッタリね、今査定するわね?」
「よろしくおねがいしまーす」

キューテンさんが奥に引っ込むと、受付にロキぐるみが置かれる。首からは査定中とカードが下げられている。
早速活用してくれてるんだ。

そこへそのぬいぐるみをじっと見つめる人物が現れた。

「これは……精巧だな。一瞬本物かと思ったが、息をしていない」
「あの……」
「ああ、横から割って入って済まない。私はこう言う物だ」

胸につけてる冒険者ライセンス。
そこにはBと大きく記されている。
普通ライセンスは首から下げるのが一般的なのに、珍しいな。

「ダメだ姉御、失敗した。いつもの場所に先客が居てよ」

そこへ背中に傷を受けた青い毛色の二足歩行の獣人が現れた。リカントだ。初めて見た。
ニャンジャーと同様に二足歩行で歩くオオカミ族だ。
冒険者の格好をしてることから、Bランク冒険者のお姉さんの仲間みたいだね。

「むぅ、ロンローンの肉の入手が出来なかったとなるとクエストの依頼主に申し訳が立たない。ベン、ザブロックと共に他の場所を当たってくれないか? クエストの期限は本日限りだ。頼むよ」
「ったくウルフ使いの荒いご主人様だぜ! おら、ザブロック! いつまで寝こけてやがる。行くぞ!」
「ケーン!」

もう一人の相棒はバードタイプのモンスターだ。
こちらも青色の翼をはためかせ、ベンと呼ばれたリカントと一緒にギルドを後にした。

「済まないね、うちの連中はどうもマイペースで。それで坊や達はどんなクエストを受けていたんだい?」
「ロンローンの捕獲クエストですね」
「奇しくも同じクエストか。では今はライバルということになるかな?」
「いえ、クエストは終わって納品してるところですね。なので僕たちは一抜けします」
「は? 地元民でもないのにどうやってこの短時間で釣り上げた?」

お姉さんはびっくりしたように表情を凍り付かせる。
そこへキューテンさんが奥から帰ってきた。
ロキぐるみを鷲掴んで自分の胸元に置くと、そのまま受付業に戻る。定位置そこなんだ?

「お待たせしました。非常に状態の良いロンローンで、これならクエスト発注者もお喜びになられると思います。今回はこの街での初めてのクエストでしたが、兄さん達が絶賛するだけはあります」
「キューテン、この子達は君の知り合いか?」
「あ、ストナさん。私の知り合いというより、兄さん達が贔屓にしてる子達なんですよ。パブロンの毛皮産業を知っていますか?」
「知っている。あの毛皮はすごく貴重な物だ。しかしこの子とどんな関係がある?」
「この子がその毛皮修復師なんですよ。専業は冒険者で、そっちは副業との事です」
「では、君があのルーク氏か!」
「えと、あの! と言われるほどのものじゃありませんが、僕がルークです」
「ファンです!」
「恐縮です」

まさかのファンだった。こうやって表立ってファンだって言われるのは照れるね。
そしてこのギルドで有名な凄腕のテイマーとは彼女のことだそうだ。

「そう、お兄さんが闘技大会にエントリーしてその応援に」
「はい。兄さんから聞きました。ストナさんも出場なさるそうで」
「あはは、まぁ毎回挑んでるんだけど上位陣の層が分厚くてね。結構良いところまで行くんだけど、なかなか難しいのよ」
「ストナさんですら優勝は程遠いと?」
「良いところまでは行くのよ? でも当然、年々ランキングは変動する。私が挑戦し続けてるのはとある夢のためでもあるのよね」
「夢……ですか」
「うん、まぁ良い歳して何言ってるんだかって感じだけどね」
「夢を見るのに年齢は関係ないですよ」
「そう言ってくれたら気が楽になるわ。ありがと」

はにかむストナさんは全然若い。
僕はまだ子供だけで十分魅力的に見えた。
そこへ、

「だーらっしゃーー!! 捕まえてきたぜ姉御!」
「五月蝿いわよ、ベン」
「俺らにだけ働かせていうゴミ分だよなぁ? 坊主もこんな大人になっちゃダメだぞぉー?」

ベンさんが僕の顔を見るなり、何かを思い出したように目を細める。ついでに隣のテーブルで軽食をつまむトラネとキサムに目がいき、そして唐突に指を差す。

「あーーーー! お前ら!」

大声で叫び、ギルド中の注目を集めるベンさんだった。
しおりを挟む
感想 52

あなたにおすすめの小説

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

【完結】そうは聖女が許さない〜魔女だと追放された伝説の聖女、神獣フェンリルとスローライフを送りたい……けど【聖水チート】で世界を浄化する〜

阿納あざみ
ファンタジー
光輝くの玉座に座るのは、嘘で塗り固められた偽りの救世主。 辺境の地に追いやられたのは、『国崩しの魔女』の烙印を押された、本物の奇跡。 滅びゆく王国に召喚されたのは、二人の女子高生。 一人は、そのカリスマ性で人々を魅了するクラスの女王。 もう一人は、その影で虐げられてきた私。 偽りの救世主は、巧みな嘘で王国の実権を掌握すると、私に宿る“本当の力”を恐れるがゆえに大罪を着せ、瘴気の魔獣が跋扈する禁忌の地――辺境へと追放した。 だが、全てを失った絶望の地でこそ、物語は真の幕を開けるのだった。 △▼△▼△▼△▼△ 女性HOTランキング5位ありがとうございます!

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

処理中です...