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しおりを挟む「最近やたらとぼんやりとしてるけど。大丈夫か?」
隣で運転していた多嶋に声をかけられ、睦紀は車窓の外の景色から運転席に視線を向ける。
「ごめん。少し疲れているみたいで」
「頑張るのは良いけど、息抜きも大事にしろよ」
「うん……分かってる」
睦紀はそう口にするも、今は仕事のことよりも春馬との関係性に悩んでいた。
あの日の夜以降も、春馬は睦紀を部屋に呼び出してきた。
涼華の不貞について、今は探偵に依頼しているから待って欲しいとの内容だ。それで話は終わりかに思えたが、春馬は睦紀にまたしても迫ってきた。
拒まなければ――そう思うのに、睦紀はこの間の強烈な快楽を思い出して、熱が込み上げてしまう。
身体と心の相違に戸惑う睦紀に、春馬は囁く。
「涼華にバレたらこう言えば良い。君の調査の為に義兄の言いなりになったんだって」
「そんなこと言えるわけないです」
驚いて睦紀は否定する。全ての罪を春馬になすりつけることなんて出来ない。拒みきれなかった自分にも責はあるのだから。
「睦紀は俺とするのが嫌なんだろう? 脅迫されたと言っても間違いじゃない」
淡々とした口調で春馬は言った。その目はそれが当然だといたように、睦紀をじっと見据えていた。
春馬がどういうつもりで、そういったことを口にするのか分からない。それでも肯定できるほど、睦紀は薄情にはなれなかった。
「そんなことは……ないです」
自分も望んでいると言っているようなものだと分かっていたが、こう答える意外に言葉が見つからなかった。
「――睦紀」
春馬の優しい声と慈しむような眼差し。睦紀は自分の答えが間違っていなかったのだと思えてしまう。
春馬の手が頬に触れる。そのまま顔が近づき、睦紀は目を閉じてそれを受け入れた。
「本当に大丈夫か?」
多嶋に声をかけられ、睦紀はまたしても物思いに耽っていたことに気づく。
「大丈夫」
「何かあるなら言えよ。一人で抱え込んだって、答えはいつまでもでねぇぞ」
「……そうだね」
多嶋の気遣いは嬉しい。でも流石に、義兄と関係を持ってしまったことを話すことは無理だった。
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