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トライアル公演!
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サルバ君のメルカートデビューをマルティノに奪われる、という衝撃的な報告はあったが、当の本人、サルバ君がとても嬉しそうにしているので涙を呑んでここは我慢だ。
それにどうせ同日同時刻、僕は広場に居る。大事な大事な別件で。
その日僕はエヴァとしてメルカートの広場に居た。
いくらこれがイヴァーノの劇団だとて…オーナーと言っても貴族で伯爵夫人のイヴァーノが率先してイベントスタッフ、みたいなマネはできないからだ。
「さっ、みんな!準備は出来た?」
「はい!エヴァさん!」
「出来ました!」
「どうですかこれ?すごくカワイイ♡どっかおかしくないですか?」
「ルーカス、ううん、ルキーナちゃん…良く似合うよ。自信もって!」
「はい♡」
語尾にハートが散りまくるのが最近絶好調のルーカス君。それがまた素でアイドル全開という…このルーカス君と常に一生懸命なロシオ君とが、劇団の双璧をなす人気メンだ。
三つ子は三つ子で、その特殊な三つ子効果で一部マニアックな人気をはくしている。
またジーノ君は見た目だけなら完璧な、それもポヤーっとした小柄で天然系女子なのに、劇団一の大食いで怪力、という大変美味しい属性をお持ちだ。
彼は両親に「お前が上手くやれる未来はあそこにしかない」と言われてやってきた変わり種で、彼のファンは餌付けするのを楽しんでいる。
ギャップのジーノ、女装子ルーカス、そして一見天真爛漫だがどこか陰を感じさせるロシオ、この三人が属するチームこそアスタリア行きの有力チームだ。
今日はこのメルカートに設営された特設ステージで、彼らは初舞台を踏むことになる。
ひとチーム二曲づつの計十二曲。
これは最近貴族街を超え徐々に下々の間でも話題となっているイヴァーノ・モードの宣伝劇団、BKDの庶民街における始披露目とあって、広場は一目見んとする人々でごった返している。
そんな中、今日はディエゴを荷物運び兼お手伝いとして連れてきたのだが…
「イ、エヴァさん」
「ディエゴくん…どうしたの?」
そのディエゴが困惑顔…
因みに彼ら使用人の中でエヴァの正体を知っているのは一番年上のディエゴだけだ。
「あの…あそこでチラシを配ってる人が…。あれって…」
「チラシ…?あっ!」
ニコラじゃん!正確には腕組みしたニコラとチラシを配るニコランんとこの店員じゃん!舐めた真似を…
奴は舎弟ポジ(店舗が)を得て調子に乗っている。乗りまくっている。
「チラシ配るだけならまあ…二コラあれで(男関係以外)無害だから。あ、メルカートのお客様に迷惑かけんなって、それだけは釘刺しといて」
「はい」
ニコラなど所詮お飾りマダム…。あのサロンはがっつりタランティーノ公爵家のお針子が運営しているおかげで、うちと方向性こそ違うものの品質には定評がある。じゃなきゃ『イヴァーノ監修』の文字なんか許さないって!
さて、そろそろ影アナの出番だ!
「メルカートへお越しの皆様。本日はBKDブースへのご来場ありがとうございます。まもなく開演となります。どうぞご立席になってお待ちください」
パチパチパチ…
「なあ、今の声エヴァちゃんに似てなかったか?」
「ばーか!気のせいだろ」
「じゃあみんな!まず僕が前説で出るから煽り方とか目線のやり方とか…色々参考にしてね」
「「「はい!」」」
さあ…エヴァちゃんでいられるのもあと少し…頑張りますか!
あ、そうそう。エヴァが消えたあとはイヴァーノ様直々の派遣によって一人裏方スタッフ増える予定だから。
ショートボブにメガネの似合う、パンツスーツを着たやり手の女性マネージャーがね。それが誰かは…言うまでもないよね?
ザワザワザワ…
「はぁーい☆」
「あ?おあ!エヴァちゃん!」
「おい!エヴァちゃんだ!」
「え?飛び入り?聞いてないよ!」
「だから言ったじゃねーか!」
「みんなー☆元気ですかー?」
「いぇぇぇぇぃ!」
「えー?キコエナーイ。元気ですかー?」
「うぇぇぇぇい!」
「僕への想いはそんな程度?まだまだ出せるよねー?」
「dfghjl;!!!」
「ありがとうー!じゃあ僕からこの公演に先駆けて注意事項ね☆まずどんなに可愛い子がいても押し寄せない!」
「イェーイ!」
「エヴァちゃんよりかわいい子なんて居ないよー!」
「もー!嬉しいけどそんなこと言わないの!メッ☆」
「もっと叱ってー!」
「また今度!じゃあ次ね☆今から色んな子が出てくるけど推しが違ってもファン同士で争わない!いうこと聞ける人ー☆」
「ハーイ!」
「俺も俺も!」
「良く出来ましたー☆じゃあ最後ー!公演中気分が悪くなった人は救護室まできてね☆あ、でも仮病はほんとの病人に迷惑だからやめてねー!」
「分かったよエヴァちゃーん!」
「言う通りにするから投げキッスしてー!」
「もー、しょうがないなぁ」チュッ!
「はうあっ!」
「ふぉぉ!」
「じゃあ拍手で出迎えて!BKD歌劇団が出てくるよー、ミュージック…スタートぉ!!!」
「お!わぁぁぁぁ!」
「出てきたぞー!」
弦楽器隊による生演奏で、本来全編二時間になる演目の、曲だけ抜粋して十二曲、時間にして一時間ほど。
それをほぼロスタイムなしでメドレーのようにバトンタッチしていくライブ。
ジーン…ン…ついにここまできた…
ヒロインは、オペラよりも砕けた歌唱で高らかに歌上げる。彼女らはルックスとスキルを兼ね備えたセンターメン。各チームを引っ張っていく存在であり、顔となるメンバー!
よし!掴みはオッケー!すでに会場は一体。みんなヒロインに目が釘付けじゃないか!
そしてヒロインと掛け合いで歌うのが相手役、背の高い〝お姉さま”だ!その立ち居振る舞い、男歌唱に庶民の女性たちは腰砕けだ。あ、あれはチームイエローの一番カッコいいお姉さま!よしいけ!そこでターン決めてからの…ウインク!
「はぁ~い子猫ちゃん」バチン!
バタバタバタ
「誰か!女性が倒れたぞ!」
マジか!
運ばれる女性客を尻目に舞台はドンドン進む。
遂に登場!思い悩むヒロインを励ます友人!これこそが男の娘!
バッ!「「「ロシーナちゃーん!」」」
ぎょぎょ!いつの間に横断幕が…
チラっとこっちみてフフっと微笑むロシオ君…分かってるじゃん。そう!ファンサは大事!
「見たか!私を見たぞ!」
「あれは私を見たのだ!」
「何だと!」
「何を!」
あっ!トーニオ男爵じゃないか!同担のご友人と一緒か!
「しー、お静かに。ロシオの声が聞こえませんぞ」
アンドレア教授…さすが紳士。
さあラスト!
舞台の関係上、人気上位十名に絞り込まれたメンバーによるラインダンス!
これはちゃーんと下にひざ丈のドロワーズを穿いた〝フレンチカンカン”だ!
「おー!」
「あの子は誰だ!ルキーナちゃんか…覚えたぞ!」
「いや左端もなかなか…ジーナたん…」
大満足の出来。努力はここに花開いた!
「私たちの公演お楽しみいただけましたか?」
「みなさん!またすぐお会いしましょう!」
「本日はありがとうございました!」
「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」
さあこれにて終幕。最後の締めは…やっぱり影アナの出番だ。
「本日はBKDのコンサートにお越しいただきありがとうございました。これにて、終演とさせていただきます。お帰りの際は係員の指示に従いご退場ください」
それにどうせ同日同時刻、僕は広場に居る。大事な大事な別件で。
その日僕はエヴァとしてメルカートの広場に居た。
いくらこれがイヴァーノの劇団だとて…オーナーと言っても貴族で伯爵夫人のイヴァーノが率先してイベントスタッフ、みたいなマネはできないからだ。
「さっ、みんな!準備は出来た?」
「はい!エヴァさん!」
「出来ました!」
「どうですかこれ?すごくカワイイ♡どっかおかしくないですか?」
「ルーカス、ううん、ルキーナちゃん…良く似合うよ。自信もって!」
「はい♡」
語尾にハートが散りまくるのが最近絶好調のルーカス君。それがまた素でアイドル全開という…このルーカス君と常に一生懸命なロシオ君とが、劇団の双璧をなす人気メンだ。
三つ子は三つ子で、その特殊な三つ子効果で一部マニアックな人気をはくしている。
またジーノ君は見た目だけなら完璧な、それもポヤーっとした小柄で天然系女子なのに、劇団一の大食いで怪力、という大変美味しい属性をお持ちだ。
彼は両親に「お前が上手くやれる未来はあそこにしかない」と言われてやってきた変わり種で、彼のファンは餌付けするのを楽しんでいる。
ギャップのジーノ、女装子ルーカス、そして一見天真爛漫だがどこか陰を感じさせるロシオ、この三人が属するチームこそアスタリア行きの有力チームだ。
今日はこのメルカートに設営された特設ステージで、彼らは初舞台を踏むことになる。
ひとチーム二曲づつの計十二曲。
これは最近貴族街を超え徐々に下々の間でも話題となっているイヴァーノ・モードの宣伝劇団、BKDの庶民街における始披露目とあって、広場は一目見んとする人々でごった返している。
そんな中、今日はディエゴを荷物運び兼お手伝いとして連れてきたのだが…
「イ、エヴァさん」
「ディエゴくん…どうしたの?」
そのディエゴが困惑顔…
因みに彼ら使用人の中でエヴァの正体を知っているのは一番年上のディエゴだけだ。
「あの…あそこでチラシを配ってる人が…。あれって…」
「チラシ…?あっ!」
ニコラじゃん!正確には腕組みしたニコラとチラシを配るニコランんとこの店員じゃん!舐めた真似を…
奴は舎弟ポジ(店舗が)を得て調子に乗っている。乗りまくっている。
「チラシ配るだけならまあ…二コラあれで(男関係以外)無害だから。あ、メルカートのお客様に迷惑かけんなって、それだけは釘刺しといて」
「はい」
ニコラなど所詮お飾りマダム…。あのサロンはがっつりタランティーノ公爵家のお針子が運営しているおかげで、うちと方向性こそ違うものの品質には定評がある。じゃなきゃ『イヴァーノ監修』の文字なんか許さないって!
さて、そろそろ影アナの出番だ!
「メルカートへお越しの皆様。本日はBKDブースへのご来場ありがとうございます。まもなく開演となります。どうぞご立席になってお待ちください」
パチパチパチ…
「なあ、今の声エヴァちゃんに似てなかったか?」
「ばーか!気のせいだろ」
「じゃあみんな!まず僕が前説で出るから煽り方とか目線のやり方とか…色々参考にしてね」
「「「はい!」」」
さあ…エヴァちゃんでいられるのもあと少し…頑張りますか!
あ、そうそう。エヴァが消えたあとはイヴァーノ様直々の派遣によって一人裏方スタッフ増える予定だから。
ショートボブにメガネの似合う、パンツスーツを着たやり手の女性マネージャーがね。それが誰かは…言うまでもないよね?
ザワザワザワ…
「はぁーい☆」
「あ?おあ!エヴァちゃん!」
「おい!エヴァちゃんだ!」
「え?飛び入り?聞いてないよ!」
「だから言ったじゃねーか!」
「みんなー☆元気ですかー?」
「いぇぇぇぇぃ!」
「えー?キコエナーイ。元気ですかー?」
「うぇぇぇぇい!」
「僕への想いはそんな程度?まだまだ出せるよねー?」
「dfghjl;!!!」
「ありがとうー!じゃあ僕からこの公演に先駆けて注意事項ね☆まずどんなに可愛い子がいても押し寄せない!」
「イェーイ!」
「エヴァちゃんよりかわいい子なんて居ないよー!」
「もー!嬉しいけどそんなこと言わないの!メッ☆」
「もっと叱ってー!」
「また今度!じゃあ次ね☆今から色んな子が出てくるけど推しが違ってもファン同士で争わない!いうこと聞ける人ー☆」
「ハーイ!」
「俺も俺も!」
「良く出来ましたー☆じゃあ最後ー!公演中気分が悪くなった人は救護室まできてね☆あ、でも仮病はほんとの病人に迷惑だからやめてねー!」
「分かったよエヴァちゃーん!」
「言う通りにするから投げキッスしてー!」
「もー、しょうがないなぁ」チュッ!
「はうあっ!」
「ふぉぉ!」
「じゃあ拍手で出迎えて!BKD歌劇団が出てくるよー、ミュージック…スタートぉ!!!」
「お!わぁぁぁぁ!」
「出てきたぞー!」
弦楽器隊による生演奏で、本来全編二時間になる演目の、曲だけ抜粋して十二曲、時間にして一時間ほど。
それをほぼロスタイムなしでメドレーのようにバトンタッチしていくライブ。
ジーン…ン…ついにここまできた…
ヒロインは、オペラよりも砕けた歌唱で高らかに歌上げる。彼女らはルックスとスキルを兼ね備えたセンターメン。各チームを引っ張っていく存在であり、顔となるメンバー!
よし!掴みはオッケー!すでに会場は一体。みんなヒロインに目が釘付けじゃないか!
そしてヒロインと掛け合いで歌うのが相手役、背の高い〝お姉さま”だ!その立ち居振る舞い、男歌唱に庶民の女性たちは腰砕けだ。あ、あれはチームイエローの一番カッコいいお姉さま!よしいけ!そこでターン決めてからの…ウインク!
「はぁ~い子猫ちゃん」バチン!
バタバタバタ
「誰か!女性が倒れたぞ!」
マジか!
運ばれる女性客を尻目に舞台はドンドン進む。
遂に登場!思い悩むヒロインを励ます友人!これこそが男の娘!
バッ!「「「ロシーナちゃーん!」」」
ぎょぎょ!いつの間に横断幕が…
チラっとこっちみてフフっと微笑むロシオ君…分かってるじゃん。そう!ファンサは大事!
「見たか!私を見たぞ!」
「あれは私を見たのだ!」
「何だと!」
「何を!」
あっ!トーニオ男爵じゃないか!同担のご友人と一緒か!
「しー、お静かに。ロシオの声が聞こえませんぞ」
アンドレア教授…さすが紳士。
さあラスト!
舞台の関係上、人気上位十名に絞り込まれたメンバーによるラインダンス!
これはちゃーんと下にひざ丈のドロワーズを穿いた〝フレンチカンカン”だ!
「おー!」
「あの子は誰だ!ルキーナちゃんか…覚えたぞ!」
「いや左端もなかなか…ジーナたん…」
大満足の出来。努力はここに花開いた!
「私たちの公演お楽しみいただけましたか?」
「みなさん!またすぐお会いしましょう!」
「本日はありがとうございました!」
「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」
さあこれにて終幕。最後の締めは…やっぱり影アナの出番だ。
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