拾われ子のスイ

蒼居 夜燈

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第二章 中央大陸

拾われ子とザクロ

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 ザクロに請われ、門を抜けて王都の外に出る。
 東街道はハルピュイアやブラッドクロウのように東大陸からモンスターが移動してくる事を考え、現在は封鎖されて厳戒体制となっているので王都から少し離れた平原で足を止めた。

『此処で良い?』

「ンー……ン!」

 きょろきょろと見回していたザクロは、羽をばさりと広げてコハクの背から飛び上がった。向かっていく先を眼で追う。

『オオスズメ?』

《プレイリーラビットもいるぞ》

 あまり離れないようにと小走りで追いかけると、ザクロが羽を目一杯広げた。ザクロの周囲に魔力とは異なる感覚が広がったのをスイとコハクは同時に察知する。

『!?』

《何だ!?》

「ピュルルル!!」

 ザクロから放たれた炎がオオスズメに当たり、火達磨にした。それを見て逃げ出したプレイリーラビットに、ザクロは複数の火の玉を放つ。
 追尾する火の玉は、左右に飛び跳ねて逃げるプレイリーラビットをも燃やし尽くした。

『……メッセージバードが火魔法……? いや、今のは……』

《精霊術か? でも、近いけど何か違う感じもしたぞ》

 呆然とするスイに、ザクロははしゃぎながら降りてくる。

「ゴ主人! ザクロ、モンスター倒セル! コレデザクロモ連レテ行ケル!」

『……連れていきたいけど、その前にシンシア様に相談かな……』

《そうだな》

「エッ」

 苦笑いを浮かべるスイを、ザクロが呆然と見上げた。
 シンシアの家に戻ったスイは、リビングでクロエの淹れた紅茶を飲みながら平原であった事を話す。

『……という事なんですが、メッセージバードって火魔法を使えるんですか?』

「……聞いた事はありませんね」

「私も存じ上げません」

「…………ピッ」

 スイの質問に、シンシアもクロエも同じ答えを返した。コハクの背に乗るザクロの身体はいつもより小さく見える。

《……本当にメッセージバードなんだよな?》

「外見だけ見ればそうですね。ただ、魔法、或いは精霊術が使えるとなると別の可能性も考えなければなりませんが……実際に見た方が良いですね」

 シンシアがロングスタッフで床を二度叩いた。リビングを何かが覆ったのをスイとコハクは感じ取る。

『これは……?』

「結界です。ザクロ、スイ達に見せたものを私達にも見せてくれませんか?」

「…………」

 沈んだ顔で恐る恐るスイを見上げるザクロに、スイは目線を合わせた。

『もう一回、やってもらえる?』

「……ザクロ……」

『?』

「ザクロ、旅ニ連レテッテモラエナイ? 普通ジャナイザクロハ、捨テラレル……?」

 スイはザクロの心境を理解した。
 ザクロは、自身が普通のメッセージバードから大きく外れている事を以前から自覚していた。
 旅に連れて行ってもらいたくてスイ達に見せたのに、返ってきたのは困惑とメッセージバードなのか疑う反応。不安になるのも無理はない。
 スイはザクロを両手で掬うようにして持ち上げ、眼を合わせる。

『不安にさせてごめんね。びっくりしたんだ』

「ウン……」

『旅に連れて行くかは、正直に言うとまだ決められない。北大陸のモンスターは中央大陸よりもずっと強いから』

「…………」

『でも、ザクロを捨てたりはしないよ。それは約束する』

「……本当ニ?」

『うん。絶対』

「……ヨカッタ」

 スイの眼を見て、ザクロは羽を動かした。身体の大きさが少しだけ戻る。

『シンシア様とクロエさんにも、さっきのを見せてくれる?』

「ウン」

 スイの手から飛び立ったザクロは、何も無い所に向けて火の玉を飛ばした。火の玉は結界に触れて消える。
 ザクロはゆっくりと降下してくると、コハクの背に降りた。豊かな被毛が心地好いのか、コハクの背や頭はザクロのお気に入りの場所となっている。

「どちらかと言えば精霊術に近いですが……どう見ますか、クロエ」

「恐らくシンシア様と同じ考えです。本来、メッセージバードは教えられた言葉や聞いた事のある言葉しか発せない筈ですし。本人、いえ、本鳥は自覚が無さそうですが……少々特殊な状態なので致し方無いのかもしれません」

「精霊のあなたがそう言うのであれば、可能性は高そうですね」

 二人の間で結論が出た様だが、何の事か見当がつかないスイは首を傾げるしかない。

「ザクロ、ひとつだけ教えてください。あなたは今のよりも強い炎を出せますね?」

「……ウン」

「ありがとうございます。スイ」

『はい』

「倒せるか否かで言えば、ザクロは北大陸のモンスターを倒せます。恐らく、今のままでもランクCくらいまでは」

『そんなに……!?』

 ランクCは大陸の端側だ。西大陸で言う所の、西の果ての森の東側に生息するモンスターと同等の強さにまで対応出来る事を意味する。

「ですが、北大陸はザクロにとって属性的に危険ですし、戦闘経験はあなたやコハクよりも圧倒的に劣ります。旅に連れて行くのが困難な事に変わりはありません」

『……はい』

「それでもザクロが着いていきたいと願い、あなたも連れていきたいと思うならば、ザクロも修行に参加させましょう。どうしますか?」

『…………!』

「ヤルッ!」

 ばさばさと羽をバタつかせてザクロがやる気を見せる。

『お願いします』

「では明日からザクロも修行に連れて行きましょう。場所は研究所ではなく外の方が良いですね。クロエもその方が都合が良いでしょう?」

「はい」

《…………!》

 コハクを一瞥したクロエ。それを見て察するものがあったのか、コハクがやる気を見せた。

「スイとコハクの状態を見ると、修行期間はあと一ヶ月か一ヶ月半くらいでしょうか。その辺りで修了試験をしましょう」

『! 解りました』

「残りの時間、今まで以上に厳しくします。合格出来ない内は旅に送り出せませんから、全力で取り組んでくださいね」

 これまでも手を抜いてはいなかったが、更に本気になれと言う。スイとコハクは僅かに慄きながらも、覚悟を決めて頷いた。

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