俺を凡の生産職だからと追放したＳ級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ？〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます～

風見　源一郎

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フロストヘイブン

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「ナターシャ、アストリア王国の様子はどうだ？」

　アストリア王国の首都近郊で魔物の大量発生が続く中、遥か北東の地で一人の男が不気味な笑みを浮かべていた。　その場所は、氷霧連邦の首都フロストヘイブン。年中霧に包まれ、氷と雪で作られた建物が立ち並ぶこの都市の中心にある巨大な氷の宮殿。その最上階にある一室で、イヴァン・フロストウルフは窓の外を眺めていた。

　長身の男は筋肉質でありながらも優雅さを保っている。顔立ちは彫刻のように整っており、高い頬骨と鋭い眼光が特徴的だ。髪は肩まで伸びた銀白色で、常に整えられている。髭は短く刈り込まれており、顔の輪郭を引き締めていた。

　彼の背後には、銀髪の美しい女性、ナターシャ・アイスブリンガーが控えていた。

「報告によりますと、王国全土で魔物の大量発生が確認されています。特に首都近郊では大規模な戦闘が発生しており、Ｓ級冒険者たちも対応に追われているそうです」
「ふふっ。なかなかに面白い。あの高慢ちきな国が、こういう目に遭うのはな」
「その中で、例の工房主が大量の武器を生産し、市民たちの抵抗を可能にしているそうです」

　イヴァンの目が一瞬鋭く光った。

「ロアン……想像以上の男だ。元々はヴァルドのやつだけ利用できればよかったが……思わぬ産物だな」

　イヴァンは再び窓の外を見つめた。

「ナターシャ、『プロジェクト・フロストバイト』の進捗はどうだ？」
「順調です、イヴァン様。あと数日で、第一段階が完了する予定です」
「我々の野望も現実味を帯びてきたというわけだ」

　イヴァンはゆっくりとナターシャの方を向いた。

「ナターシャ、アストリア王国に向かう準備をしろ。混乱に乗じて『氷霧の心臓』を取り返してこい。ダンジョンの制御権を再び手に入れるのだ」
「御意に」

　ナターシャは深々と頭を下げる。イヴァンは机の上に置かれた古い羊皮紙の地図を広げた。その地図には、この世界の様々な地域が詳細に記されている。

「人類の歴史は、常に対立と均衡の繰り返しだった。善と悪、光と闇、秩序と混沌。そして、この世界では魔王と勇者がその象徴となってきた」

　魔王討伐後のダンジョンの頻出。出現位置のパターン化。すべては偶然ではない。人々は恐怖に駆られ、より強力な武器や防具を求めるようになる。初期段階では実験程度のつもりだったが、思わぬロールモデルが現れた。イヴァンは赤い印を指した。

「ダンジョンの発生。魔王復活の暗示。そして勇者と呼ばれる存在を作り出す。希望は更なる需要を生み出す」

　イヴァンは地図上の特定の場所を指さした。そこには大きな赤い丸が付けられている。

「『原初のダンジョン』。全てのダンジョンの源流とも言われている。存在するのかどうかもわからぬ地。魔力循環の起点。あるいは、魔界の入口か」

　イヴァンの目が野心に燃えている。

「……ダンジョンは、この世界の経済の要だ。魔石や希少な素材の供給源であり、冒険者たちの訓練の場でもある。そして何より、魔王の力の源泉でもあった。このダンジョンを制御することは、我々が魔王になるのも同義だ」

　イヴァンは机の上に置かれた小さな装置を手に取った。それは、青く光る結晶が埋め込まれた金属製の球体だ。

「ダンジョンの難易度、出現する魔物の種類、そして報酬として得られる魔石や素材の量……コントロールに至るのははるか遠い。接触、出現、いま可能なのはそれのみだ。心臓はもっと可能性を秘めているはず。何が欠けている？　こちらの調査隊では、心臓と共鳴する異空間の存在だけが認められているのみだが……」

　イヴァンは再び窓の外を見つめた。

「現在の世界秩序は、不安定で効率が悪い。国家間の対立、資源の無駄遣い、そして予測不可能な魔物の脅威。これらは全て、世界の発展を阻害している要因だ。我々の計画が成功すれば、これらの問題を全て解決できる。魔王の脅威を適度に維持することで、世界中の国々を団結させることができる。共通の敵の存在は、国家間の対立を減少させ、協力を促進する」

　イヴァンは再び窓の外を見つめた。霧に覆われた街並みが、幻想的な光景を作り出している。氷の尖塔が霧を突き抜け、その先端で青白い光を放っている。街路には、魔法の灯りが幽玄な雰囲気を醸し出し、行き交う人々の姿を朧げに浮かび上がらせていた。

「さあ、新たな時代の幕開けだ。我々の手で、世界を再構築する時が来たのだ」

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本作は応募用のため一旦ここまでになります！　読了ありがとうございました！

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