異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
8 / 172
第一章 少年編

7

しおりを挟む
目的地まで近づくと、二人の人影が見えた。
………え、集合時間よりもかなり早いはずだけど、いつからそこで待っていたのだろうか? 俺は手を振って、二人に挨拶をした。キルも一瞬笑顔になったが、俺の後ろにいるマリーに気づいて顔を曇らせた。



「キル、アルフォンスさん、すみません。前回誰にも言わないと約束したのに………。俺の病弱では、長時間外出をすることが難しかったんだ。だけど、約束を破ったのは事実です。もし不快というなら、今すぐ帰るよ。ただこれだけは信じてほしい。ここにいるマリーは、俺が生まれたときから面倒を見てくれていて、俺が病に伏せている時は不眠不休で看病をしてくれるような人なんだ。だから、信じてほしい………。」


俺はそういい終わると、頭を下げた。マリーも俺に合わせて頭を下げてくれたようだった。失望されちゃったかな………。


「………アース、顔を上げてくれ。信じるよ、俺は。俺は悪意には敏感なんだ。彼女からはそれを感じない、だから顔を上げてくれ。アルフォンスもそれでいいな?」


「はい。彼女がアース様を見る目は、ただのメイドのものではありませんでした。生まれたときから一緒にいるということで、ただの使用人という関係ではないのでしょう。それにそのような表情を使用人にさせるアース様、あなたの人格も信用に値すると考えます。」

え? 俺は思わぬ高評価に驚き、顔を上げた。アルフォンスさんは根拠があるようだったけど、キルは信じるって………。まだ会うのは二回目なのに………。


「キル、信じてくれるのはうれしいけど、そんなに人を簡単に信じていたらこの先大変だぞ?」



俺がそういうと、キルはそっぽを向いた。彼は恥ずかしい時や言いにくいことがあるときは、顔をそらす癖があるようだ。


「………今日はたまたまだ。いいから行くぞ。」







――







そうして俺たち四人は、歩き出した。屋敷まで結構距離があるんだよな。前は自分のペースでゆっくり歩いてきたけど、今はキルが先頭でガンガン進んでいっている。このペースは少々きついかもしれない。


「アース様、大丈夫でしょうか? よければ私が、先日のようにお運びいたしますが………。」

俺の息切れに気が付いたアルフォンスさんが、声をかけてくれた。その方がみんなのお荷物にならずに済みそうなのでお願いしたいが、歩けるのに背負われてはさすがに図々しいと思う。


「ありがとうございます。ですが、まだ歩けますので大丈夫ですよ。皆さんのお荷物にならないように頑張りますね!」



アルフォンスさんは、渋々ながら頷いたがやはり心配の様だった。そして、今度は前でガンガンに進んでいるキルに声をかけた。



「キル様、もう少し歩くペースにご配慮ください。お恥ずかしいのはわかりますが、先日の一件を繰り返すおつもりですか?」



アルフォンスさんがそういうとキルはすぐに立ち止まって、拳をわなわなと震わせた。そしてアルフォンスさんにかみついた。


「うるさい! 誰も恥ずかしがってなどいないだろ! ………アース、すまなかった。」


キルはそういうと再び前を向いて、ゆっくりと歩きだした。先日は二人の関係が妙だと思ったが、今回はキルは反抗期の少年で、アルフォンスさんは保護者のような感じがした。アルフォンスさんの真意が何かはわからないけど、キルのことを大切に思っているのは事実だ。それがキルに、十分に伝わっていないのではないだろうか?





そうして三人が俺の歩くペースに合わせてくれたお陰で、俺は何とか屋敷にたどり着くことができた。屋敷にはいって、応接室へと通された。理由はわからないけど、恥ずかしがっていたかもしれないキルはようやく落ち着いたようで、通常運転に戻っていた。


「アース、何かやりたいことはあるか? 俺はその………あまり遊んだことがないんだ。」


やはりそうなのか。うすうす気が付いてはいたけど、キルは人とかかわるのが下手というよりは慣れていない印象を受けた。まあ、高位の貴族なら仕方がないとは思うけど………。


「俺はまったく遊んだことがないよ!」


「あ、ああ………。」


まずい、自信ありげに引きこもり宣言をしてしまった。若干部屋の温度が下がってしまったが、聞きたいことややりたいことはたくさんある。


「やりたいことならあるよ。初学院での学習の範囲を教えてほしい。どこまで進んだとか、歴史や地理の暗記のコツとかあれば教えてほしいかな。あとは、礼儀作法とかの実技系もできれば教えてほしい………って、少し図々しかったかな?」


それに対してキルは首を振って、「全部教えてやる」と言ってくれた。俺はマリーに頼んですぐに教科書を準備した。

「俺も教えるが、アルフォンスも何かあったら言ってくれ。お前、座学も得意だろ?」


座学もということは、実技も完璧なのだろうか? 見た目も能力も完ぺきとは、羨ましい限りである。


「かしこまりました。」


「アースは自習をしていたのか? この教科書は、マクウェル様の教科書だな。その様子だと、まだ家庭教師もいないのだろ?」


「そうだね。自習をしておけば、少しは同年代から遅れずに済むかなと思ってさ。」



すると、俺の自習のあとを見ていたアルフォンスさんが驚きの声を上げた。え、変な落書きでもしていたかな? 不安になって、俺は静かに教科書を覗き込んだ。


「アース様。この算術の教科書ですが、すべてお一人でおやりになられたのですか?」


「はい。一年次にやる内容って結構多いんですね。学年が上がればこの倍くらいになるんでしょうね………。」


まあ精々、小学生の内容が中学生になるくらいだろうと高をくくってはいるけど………。俺は前世ではそれなりに勉強はできて、いい大学と言われるところを卒業している。公式さえ思い出せれば、そうそう苦労することはない。


「いえ、これは一年次から四年次にかけて行う内容です。マクウェル様からお聞きにはなりませんでしたか?」


しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に1話ずつ更新

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

処理中です...