異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

文字の大きさ
57 / 172
第二章 初学院編

56

しおりを挟む

「タームウェル、俺の側近を勝手に誘うな。お茶会に誘いたいなら、俺に一言声をかけるのが筋だろ?」



俺がキルに聞かないとわからないと思っていたところで、キルがさっそうと現れた。ウェルとは、タームウェルの愛称だったのか………。



「失礼いたしました、キル兄上。つい、アースさんに会えてはしゃいでしまいました。何せ、「側近の件で」いいお返事をいただけましたからね。」



ウェル殿下、それは言い方があれだと思うんだけど………。その言い方だと、俺がウェル殿下の側近に誘われてOKを出したみたいに聞こえるんだけど………。キルとウェル殿下の距離感がわからないけど、キルの反応はどうだろうか?


すると、キルはウェル殿下の頭を笑顔で鷲掴みにした。おっと、これは結構仲いい感じなのかな?




「痛い、痛いですよ!」




ウェル殿下はそういいながらキルの手を振り払うと、痛そうに頭をさすりながら俺の後ろに隠れた。そして、再び撫でてほしそうに俺に頭を傾けてきた。

う~ん、だんだんかわいくなってきたな。前にキルは犬みたいだと思ったけど、ウェル殿下は子犬みたいだ。俺は先ほどのようにきれいな桜色の髪をなでた。



「キル、ウェル殿下は魔導士志望なんだから、少しは手加減しないとだめだよ。ウェル殿下の綺麗な髪が痛んでしまうよ。」


「そうですよ、キル兄上!」



俺に合わせて、ウェル殿下がキルをキャンキャンと非難した。うーんこれは、末っ子のウェル殿下がいい感じにキルに構ってほしいのだろうな。年齢的にも性格的にも、アルベルト殿下では少々難しいだろうから。アルベルト殿下が本気で構うと、対象が死にかねないからね。



「………はー。お前たち、いつの間に知り合いになったんだ? 俺の認識では、お前たちは初対面のはずだが?」


「最後にキルたちの訓練を王城に見に行ったあの時だよ。裏から音がすると思ってこっそり見に行った時に、ウェル殿下と出会ったんだ。ウェル殿下が殿下だと知ったのは、ついさっきだけどね。」


俺がそういうと、キルは「あー、あのときか………」と頷いた。まだ会うのは二回目だけど、ウェル殿下が人に甘えるのがお上手なようなので、結構親しく見えたのだろう。




「キル兄上、僕は「アースのさんの側近の件で、いいお返事をいただけた」と言ったのに、それについて何もコメントがないのですか!」



キルが俺たちのことを半目で見ながら納得していると、ウェル殿下が不服そうにキル突っかかった。うーん、多分さっきの会話が聞こえていたのでは?



「………コメントも何も、先程の二人の会話から事情はなんとなく分かっている。俺をからかったつもりだろうが、残念だったな。」


キルはそういうと、からかうようにウェル殿下に笑いかけた。すると、ウェル殿下は悔しそうに頬を膨らませた。この二人のやり取りを見ているとなんだか癒されるような気がする。兄弟ものに目覚めてしまうかもしれない。



「それなら、僕がアースさんを側近に誘ってもよろしいですか? 年齢的にも二つしか離れておりませんし、アースさんは様々な面で優秀です。それに………アースさんは側近側にも主を選ぶ自由があるとおっしゃっていました。僕が選択肢を与えるくらい、キル兄上は構いませんよね?」



ウェル殿下がそういうと、キルの余裕そうな笑みが若干崩れて片眉が動いたのがわかった。ウェル殿下、キルは俺たち側近を大切にしてくれているからそれはからかうのを通り越して、喧嘩を売るみたいになるのではないかな………。

しかしキルは、ウェル殿下に反論するかと思ったけど、予想に反して首を縦に振った。え、キルは俺がよそに行ってもいいと考えているのだろうか?


「俺の側近たちは全員有能だ。だから、他から勧誘があることは当然のことだ。もし仮に本人が俺の側近を辞したいと申し出たならば、本人の意思を尊重したいと考えている。もちろん、その時は引き止めるけどな。だが、俺はこいつらの主としてふさわしい努力を続けていく。側近たちに見捨てられないようにな。ウェル、アースが欲しければ勧誘するといい。俺は誰にも負けるつもりはないし、誰も渡すつもりもない。」



キルがそういうと、ウェル殿下はことのほかまじめな返答がきて少々面食らったようだった。少しからかうつもりが、まじめに返されてしまったのだ。しかしすぐに、俺から離れてキルの前に立った。



「キル兄上、僕は優秀な魔導士が好きです。白銀の狼と呼ばれるアースさん、魔導士家系でアースさんのライバルのジールさん、お二人とも僕が欲しい人材です。冗談ではなく、欲しい時は本当にお誘いしてもよろしいのですね?」



ウェル殿下がそういうと、キルはやる気に満ちた笑みでうなずいた。俺とジールはどう反応すればいいのかわからずに、互いに見合った後に苦笑いを浮かべた。



「わかりました、キル兄上と遊びながら僕のことをお二人に知ってもらいましょう。ということで、アースさんジールさん、お茶会に招待してもよろしいですか? よろしいですよね、キル兄上?」


「アースたちとの個人的なお茶会なら、本人たちが望むのならもちろん許可は出す。だが、俺も参加することが条件だけどな。」


「キル兄上とはほぼいつでも遊べるので、結構です。」


「結構かどうかは俺が決めることだ。それから、俺はお前と遊んでいられるほど暇ではない。………それがのめないのなら、アースたちとのお茶会はあきらめろ。」



キルがそういうと、ウェル殿下は「ぐぬぬぬぬ」と少し悩んだ後、「背に腹は代えられないですね」といいキルの参加を渋々ながら了承した。

だけど、どうしよう。俺は、多分ジールもキル以外の主に仕える気はないと思う。無駄に期待だけさせるのはあれだし、先に言っておいた方が良いよね………。



「ウェル殿下、私はキルヴェスター殿下以外にお仕えする気は………」



俺がそこまで言うと、ウェル殿下は笑顔で首を横に振った。



「アースさん、先程のやり取りは半分売り言葉に買い言葉のようなものです。キル兄上とはいつもこのような感じなのです。僕は純粋に、優秀な魔導士見習のお二人と親交を深めたいと考えています。………ご迷惑でなければ、これからもお話させていただけませんか?」



………そのような捨てられた子犬のような目で見られたら、否とは言えないよ。まあ純粋に親交を深めたいというのなら断る理由は無いし、俺自身も王族の魔導士志望のウェル殿下とお話しできるのは非常に有意義だと思う。



「迷惑ではありませんよ、ウェル殿下。ウェル殿下とお話しできるのは私としましても、大変魅力的です。私でよろしければお願い致します。」


「俺も光栄ッスよ、タームウェル殿下。」



俺達がそういうと、ウェル殿下嬉しそうに頷いた。そして、「準備ができたらお誘いします」と言って帰ろうとした。その際に、「もしかすると、キル兄上をお誘いすることを忘れるかもしれません」と小声で言ったかと思うと、深い笑みを浮かべたキルに再び頭を鷲掴みされていた。すぐにキルの腕を引きはがして若干半泣きになった後、ウェル殿下は急いで戻っていった。





その後の昼休み、ザルケを行うためグラウンド移動する際に、キルが小声で「行きたかったか?」と尋ねてきた。先ほどまであんなに強気だったのに、内心は………と思うと愛おしくなると同時に、キルが安心できるような言動ができていなかったと反省した。

俺は袖をまくって、キルからもらった腕時計をなでた。


「俺はこの腕時計をものすごく気に入っているよ。だから、この腕時計を自分から外そうとは思わない。」


俺がそういうとキルは、「………そうか」といいながらそっぽを向いた。これで少しは安心してくれたかな? これからも安心させることができるように、言動には注意していきたい。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に1話ずつ更新

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

処理中です...