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第二章 初学院編
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俺達はしばらく無言で歩いていた。後ろから距離をとってついてきてくれている護衛騎士が、俺たちの様子がおかしいことに気が付いて声をかけてくれたけど、俺から「大丈夫だ」と伝えた。
それにしても、ローウェルは家の中で大変な目に遭っていたりはしないのだろうか? 魔力量が絶対だという考えの持ち主の父親が、魔力がギリギリかつ魔力回路を自身で傷つけてしまったローウェルに対して、きつく当たっていても不思議ではない。
「………ローウェル、家の中で辛い目にあってはいない? 父親の権力は家の中で強いから、ローウェルの立場が心配だよ。」
「………兄上が俺に配慮してくださっているから、生活はできているよ。だけど、父上は俺のことをもういない者として扱っている。母上もそんな感じだ。昔は厳しかったが、訓練をしてくださっていたんだけどな………。」
家の中では空気として扱われているということか………。暴力などをふるわれていないことには安心したけど、無視されているのだと思うと心が痛い。だけど、お兄さんが優しい方でよかった。俺が知っている兄という存在は変な人が多いけれど、優しい人が多い。ローウェルのお兄さんもそのような人物で安心した。
ただ、昔は訓練をしてくれていた、か………。属性判定前で魔力量がわかっていなかったからかもしれないけど、事故を起こす前までということは一年次辺りまで父親は訓練をしてくれていたということになる。魔力量がギリギリにもかかわらず、魔力量絶対主義の父親がローウェルの訓練をみていたのには何か事情があるのだろうか?
「お父上は、魔力量が絶対だと考えているにもかかわらずその………ローウェルの訓練をみてくれていたの?」
「ああ。俺の属性は火属性と無属性だ。無属性の内容は、影属性だ。魔力量は少なかったけど、珍しい属性に目を付けたんだよ、父上は。」
影属性。自身の影や周りの影を操ることができる属性。攻撃面では威力はないけれど、拘束や攪乱が得意だ。さらに、影に潜伏しながらの奇襲や情報収集という面においては特に秀でている。文官の技量も合わせれば、かなりの使い手になることは間違いない。そればかりに、魔力回路が破壊されてしまったことが惜しまれる………。
そういえば以前、カーナイト様がおっしゃっていたな。「高め合えるライバルは大切にしなさい。まあ、もう一人いるようですけどまだその時ではないようですね」、と。俺たちの周りでジールと一緒に考えてみたけど、該当する人物は思い浮かばなかった。これから貴族院で出会う人なのかと思っていたけど、もしかしてカーナイト様が言っていたもう一人とは………。だけど、回復魔法でも魔力回路が治らなかったのだ。普通に考えれば、ローウェルの魔導士復帰はまず考えられないし、変に期待を持たせるようなことは言いたくない。だけど、何か可能性があるなら………。俺がチラチラとローウェルの様子をうかがっていると、ローウェルは困ったような笑顔で俺の話を促した。
「どうした? 何かあるなら、遠慮なく言ってくれて構わないぜ。俺はもう、踏ん切りがついているからな。」
「以前カーナイト様が、俺とジールがライバルになるという場面でもう一人いるとおっしゃったんだ。まだその時ではないとも、おっしゃっていたけど………。俺達には心当たりがなかったけど、もしかしてローウェルのことではないかと思って………。」
俺がそういうと、ローウェルは「カーナイト様がそんなことを………」と言いながら何かを考えこんでいるようだった。しかし、首をゆっくりと横に振って俺の方を見た。
「俺のことではないだろうな。魔力回路が回復魔法で治癒しないことは、魔導士団団長だったカーナイト様がよく理解なさっていることだろ? それでも何かあるのだとすれば………アース、お前の回復魔法だろうな。」
俺の回復魔法………? 確かに俺は清属性という、しばらく現れていない属性を授かった。水と光の性質を持ち合わせているから、回復魔法を使うことはできるだろう。今はまだ、従来とは異なる清属性での回復魔法の使い方をカーナイト様と模索している段階だけど、清属性での回復が魔力回路の治療に有効だとしたら………。
「ローウェル、俺が清属性での回復魔法を操れるようになるまで待っていてほしい。確証は全くないけど、それでも試してみたいんだ。」
「………アースのことは信頼しているし、頼りにしている。だけど、期待しないで待っているよ。アースの回復魔法でも駄目だとわかった時、再び絶望するのが怖いからさ………。」
ローウェルはそういうと、力のない笑顔でわらった。ローウェルの言うことはまさしくその通りだ。今は、俺が確証のない希望を示してしまっている状態だ。だけど、そうさせないためにも、俺が清属性での回復魔法をマスターしなければ………。
その後は、ローウェルが「楽しい話をしよーぜ!」と空気を明るくしてくれた。俺たちは色々話をしながら、頂上までの道を確実に進んでいった。
――
頂上が近づくころには日が暮れ始めていた。こんな長い時間、俺のペースに付き合ってくれたローウェルには本当に感謝している。
「さあ、もうすぐ頂上だな。アースもお腹すいているだろ? この時間だとすぐに夕食の時間になるだろうから、もう少し頑張ろーぜ。」
「うん! ホテルの食事は美味しいらしいから、楽しみだね。」
ローウェルは俺を励ますように、背中をポンッと叩いてから俺を頂上まで先導してくれた。頂上からはホテルの光と思われる眩しい光が降り注いでいる。高級ホテルに泊まる機会なんて、前世には全くなかった。お風呂は温泉なのかな、それとも個室のお風呂なのだろうか? 俺的には顔面偏差値の高いこの世界で温泉なんて入ると、昇天してしまうと思うので、個室にお風呂があるならそちらに入るつもりだ。長い時間歩いたからゆっくりしたいと言えば、そんなに変ではないだろう。ない時は………空を眺めながら入るとしよう。
後は、キャンプファイヤーの時に行われるダンスだけど………結局俺は十人以上のご令嬢からお誘いいただいた。だけど、全員と踊れるほどの時間があるのだろうか? 俺のダンススキルについては皆から合格点をもらえているから、粗相をするようなことはないと思う。
さあ、もうすぐだ。ローウェルも支えてくれるし、最後まで頑張ろう。
それにしても、ローウェルは家の中で大変な目に遭っていたりはしないのだろうか? 魔力量が絶対だという考えの持ち主の父親が、魔力がギリギリかつ魔力回路を自身で傷つけてしまったローウェルに対して、きつく当たっていても不思議ではない。
「………ローウェル、家の中で辛い目にあってはいない? 父親の権力は家の中で強いから、ローウェルの立場が心配だよ。」
「………兄上が俺に配慮してくださっているから、生活はできているよ。だけど、父上は俺のことをもういない者として扱っている。母上もそんな感じだ。昔は厳しかったが、訓練をしてくださっていたんだけどな………。」
家の中では空気として扱われているということか………。暴力などをふるわれていないことには安心したけど、無視されているのだと思うと心が痛い。だけど、お兄さんが優しい方でよかった。俺が知っている兄という存在は変な人が多いけれど、優しい人が多い。ローウェルのお兄さんもそのような人物で安心した。
ただ、昔は訓練をしてくれていた、か………。属性判定前で魔力量がわかっていなかったからかもしれないけど、事故を起こす前までということは一年次辺りまで父親は訓練をしてくれていたということになる。魔力量がギリギリにもかかわらず、魔力量絶対主義の父親がローウェルの訓練をみていたのには何か事情があるのだろうか?
「お父上は、魔力量が絶対だと考えているにもかかわらずその………ローウェルの訓練をみてくれていたの?」
「ああ。俺の属性は火属性と無属性だ。無属性の内容は、影属性だ。魔力量は少なかったけど、珍しい属性に目を付けたんだよ、父上は。」
影属性。自身の影や周りの影を操ることができる属性。攻撃面では威力はないけれど、拘束や攪乱が得意だ。さらに、影に潜伏しながらの奇襲や情報収集という面においては特に秀でている。文官の技量も合わせれば、かなりの使い手になることは間違いない。そればかりに、魔力回路が破壊されてしまったことが惜しまれる………。
そういえば以前、カーナイト様がおっしゃっていたな。「高め合えるライバルは大切にしなさい。まあ、もう一人いるようですけどまだその時ではないようですね」、と。俺たちの周りでジールと一緒に考えてみたけど、該当する人物は思い浮かばなかった。これから貴族院で出会う人なのかと思っていたけど、もしかしてカーナイト様が言っていたもう一人とは………。だけど、回復魔法でも魔力回路が治らなかったのだ。普通に考えれば、ローウェルの魔導士復帰はまず考えられないし、変に期待を持たせるようなことは言いたくない。だけど、何か可能性があるなら………。俺がチラチラとローウェルの様子をうかがっていると、ローウェルは困ったような笑顔で俺の話を促した。
「どうした? 何かあるなら、遠慮なく言ってくれて構わないぜ。俺はもう、踏ん切りがついているからな。」
「以前カーナイト様が、俺とジールがライバルになるという場面でもう一人いるとおっしゃったんだ。まだその時ではないとも、おっしゃっていたけど………。俺達には心当たりがなかったけど、もしかしてローウェルのことではないかと思って………。」
俺がそういうと、ローウェルは「カーナイト様がそんなことを………」と言いながら何かを考えこんでいるようだった。しかし、首をゆっくりと横に振って俺の方を見た。
「俺のことではないだろうな。魔力回路が回復魔法で治癒しないことは、魔導士団団長だったカーナイト様がよく理解なさっていることだろ? それでも何かあるのだとすれば………アース、お前の回復魔法だろうな。」
俺の回復魔法………? 確かに俺は清属性という、しばらく現れていない属性を授かった。水と光の性質を持ち合わせているから、回復魔法を使うことはできるだろう。今はまだ、従来とは異なる清属性での回復魔法の使い方をカーナイト様と模索している段階だけど、清属性での回復が魔力回路の治療に有効だとしたら………。
「ローウェル、俺が清属性での回復魔法を操れるようになるまで待っていてほしい。確証は全くないけど、それでも試してみたいんだ。」
「………アースのことは信頼しているし、頼りにしている。だけど、期待しないで待っているよ。アースの回復魔法でも駄目だとわかった時、再び絶望するのが怖いからさ………。」
ローウェルはそういうと、力のない笑顔でわらった。ローウェルの言うことはまさしくその通りだ。今は、俺が確証のない希望を示してしまっている状態だ。だけど、そうさせないためにも、俺が清属性での回復魔法をマスターしなければ………。
その後は、ローウェルが「楽しい話をしよーぜ!」と空気を明るくしてくれた。俺たちは色々話をしながら、頂上までの道を確実に進んでいった。
――
頂上が近づくころには日が暮れ始めていた。こんな長い時間、俺のペースに付き合ってくれたローウェルには本当に感謝している。
「さあ、もうすぐ頂上だな。アースもお腹すいているだろ? この時間だとすぐに夕食の時間になるだろうから、もう少し頑張ろーぜ。」
「うん! ホテルの食事は美味しいらしいから、楽しみだね。」
ローウェルは俺を励ますように、背中をポンッと叩いてから俺を頂上まで先導してくれた。頂上からはホテルの光と思われる眩しい光が降り注いでいる。高級ホテルに泊まる機会なんて、前世には全くなかった。お風呂は温泉なのかな、それとも個室のお風呂なのだろうか? 俺的には顔面偏差値の高いこの世界で温泉なんて入ると、昇天してしまうと思うので、個室にお風呂があるならそちらに入るつもりだ。長い時間歩いたからゆっくりしたいと言えば、そんなに変ではないだろう。ない時は………空を眺めながら入るとしよう。
後は、キャンプファイヤーの時に行われるダンスだけど………結局俺は十人以上のご令嬢からお誘いいただいた。だけど、全員と踊れるほどの時間があるのだろうか? 俺のダンススキルについては皆から合格点をもらえているから、粗相をするようなことはないと思う。
さあ、もうすぐだ。ローウェルも支えてくれるし、最後まで頑張ろう。
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