異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第二章 初学院編

閑話(アースのいない日々1)

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※ キルヴェスター視点


アースが王都を離れてから1週間が過ぎた。そうしてアースのことを考えているうちに、初学院の後期の開始を迎えていた。クラスを超えて学年の間では、アースが領地療養となっていることで話題が持ちきりとなっていた。このことに俺は、ひどく驚いた。あの時兄上は、「アースに罰を与える」といった。ついては、学園中でアースは罰を受けて領地謹慎になったと嘲笑されるものだと思っていた。俺はなんとしてもアースの名誉を守ろうと決意していたのだが、蓋を開けてみると、アースは領地での療養ということになっていた。……一体、どういうことだろうか? 俺は、側近たちに聞いてみた。



「アースは、なぜ自領での療養という扱いになっているんだ? まさか、アースや俺たちに気を使って、そう言ってくれているのか?」


俺の問いに神妙な面持ちで答えたのは、文官のローウェルだった。ローウェルなら、すでに何か、情報を掴んでいるかもしれない。



「いえ、そういう訳ではないと思いますよ、主。皆は、本当にそうだと認識しているのです。おそらく、情報操作がなされているのでしょう。アースの名誉に配慮して、対外的には自領での療養ということになっているようです。」



謹慎が療養に上書きされたわけではなく、最初から療養ということになっているのなら、情報を発信する側が最初から療養という名目にしようと考えていたということだ。ということは、兄上たちは最初から対外的にはアースを療養という名目にするつもりだったということだ。では、なぜ罰という名目にしてアースを領地に送ったのか? 兄上が言っていた、「俺に対するもう1つの罰」というのに関係があるのか? アースの領地行きが罰であると知っているのは、王族と王族関係者。そして、国の上層部だ。意思決定をした、国や上層部は除くとして、そのことを伝えられたのは俺とその側近、そしてタームウェルとその側近たちだ。つまり、俺とウェル、そしてその側近に何かを伝えたかったということだ。

……ということは、その何かを伝えるためにアースは、俺たちの「教材」に使われたわけか。原因が俺にあることはわかっているだけど……気に入らないな。兄上の判断の可能性もあるが、兄上はあの時「国王」の代理といった。つまりは、上層部の意思ということだ。……兄上も賛成しているのだろうか? 


「殿下、具合が悪いッスか?」


急に黙り込んだ俺を心配に思ったのか、ジールが肩を揺すりながら声をかけてくれた。


「いや、大丈夫だ。少し、そのような情報操作がなされた理由を考えていたんだ。……当たっていたら、そういってくれ。アースは、俺たちの教材のために使われたのか?」



俺がそういうと、側近たちはどう答えたものかと、視線を交わし合っていた。側近たちは、俺のもう1つの罰の内容にも気づいていたようだし、すでに大体のことを察しているのだろう。

少し様子を伺っていると、ようやく答えが出たのか、ローウェルがゆっくりと頷いた。


「言い方は少しアレですが、概ねそのとおりかと思います。」


「……そうか。」


俺は心の中でそっと、舌打ちをした。


「キル殿下、今お話ししてもよろしくて?」


すると、マーガレットが俺の顔色を窺うように躊躇いがちに話しかけてきた。マーガレットとは例年、長期休みにお茶会をしているのだが、今年は色々とあったため取りやめとなったのだ。俺はすぐに表情を取り繕って、マーガレットに笑顔を向けた。



「ああ、マーガレット。久しぶりだな。夏休みは、お茶会の時間をとれずにすまなかった。」


「いえ、キル殿下が謝ることは何もありませんわ。この夏は、アーキウェル王国の歴史においても最大級といっていいほどのスタンピードが起こったのですもの。それに、わたくしのことよりも………アース様を含めたキル殿下たちの方が心配ですわ。………アース様のこと、聞きましてよ。魔物の攻撃で、かなりの重傷を負ったそうですわね。お加減はいかがでしょうか?」



「アースは………」



俺はそこまで言って、言葉を区切った。
ここで、「ザール様の血液回復魔法によって完治した」と話せば、アースは一体何を療養するために領地へと向かったのかという話になってしまう。俺はチクリと痛む心を押さえつけて、微笑んだ。



「アースは、命の危機は脱している。ただ、回復魔法でも完治の難しい傷を負ってしまったんだ。だから、療養期間を十分にとるため領地へと向かったんだ。」



「………そうでしたの。アース様の傷は、その………時間が解決してくれるような傷ですの?」


「ああ。貴族院の入学に合わせて、きっと、帰ってくるだろう。」


俺がそういうと、マーガレットとその友人たちは安心した表情を浮かべた。特に、マリア嬢とムンナ嬢は胸の前で手を組んで、大きく息を吐いた。この2人は、アースのことをとりわけ気に入っていたからな………。

そうだ、マリア・テレシ―嬢にはお礼を言わないといけないな。



「テレシ―嬢。グート様を始め、テレシ―侯爵家には大変世話になった。本当にありがとう。」



俺がそういうと、テレシ―嬢は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに淑女らしく微笑んで、左胸に手を当てた。




「光栄にございますわ。キルヴェスター殿下を始め、わたくしたちのご学友の側近の皆様のお役に立つことができたこと、誇りに思いますわ。」


「ああ、本当にありがとう。今度、テレシ―侯爵にも直接お礼を言わせてほしい。」



「承知いたしましたわ、キルヴェスター殿下。」



俺と、テレシ―嬢が話している間、マーガレットたちは特に表情を変えずに穏やかに見守っていた。おそらくテレシ―嬢から事情をきいていたのだろう。

俺とテレシ―嬢の話がひと段落すると、マーガレットが再びゆっくりと口を開いた。


「それにしても、アース様のお怪我の具合が時間がかかるとしても、完治するものときいて本当に安心いたしましたわ。特に、マリア様とムンナ様は、アース様がお怪我をしたと聞いたときにひどく取り乱してしまいまして………。」


マーガレットがそういって、2人を見て「うふふふふ、」とほほ笑むと、2人は顔を赤らめてマーガレットの袖を引きながら、顔を扇子で隠してしまった。


「マ、マーガレット様! お止めくださいまし………。顔から火が出そうなくらい、お恥ずかしいですわ。」



「うふふふふ、ごめんなさいね。少し、からかいすぎてしまいましたわね。」


マーガレットはそういって、2人をなだめた。その後に、再び俺に向き直った。












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