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第三章 ウェルカムキャンプ編
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俺が一つ息を吐くと、ジールが盛大にため息をついた。
「アース、登校初日からトラブルに巻き込まれてどうするんッスか?」
「いや、あれは不可抗力で………。ジールだって、見て見ぬふりをして通り抜けられないでしょ?」
「ま、まあ………俺も門の所から見えていたッスから、同じ状況だったら助けに出たッスよ。とはいっても、初日から………。」
「あははははは………。」
俺はとりあえず、笑顔でジールの肩をたたいた。
すると、後方から、2人の少年が走り寄ってきた。
「オ、オルト! 大丈夫か?」
「ごめん。僕たち、また見ていることしかできなくて………。」
「いいや、仕方がないよ。相手は、侯爵家だからさ………。助けようとしてくれて、ありがとう。」
友人が近くにいたのか。今まで出て来なかったのは、単純に身分差があるゆえにか、それとも助ける気がなかったのか………。
2人の顔を見る限り、本当に心配し、助けられなかったことを悔いているように見える。前者だな。
「3人とも、成り上がり貴族の息子っすね。だけど、下級貴族にもかかわらずAクラスになったッス。そこら辺の貴族の子女より、よほど優秀ッスね。(小声)」
ジールはそっと、耳打ちをしてくれた。
アーキウェル王国貴族院のクラス分けは成績順で、そこに身分の忖度はない。学年ごとに20人ずつの3クラスがあり、一番成績のいいクラスがAクラスだ。
この3人は、学習環境があまりよくない下級貴族でありながら、Aクラスに入学したのだ。よっぽど、優秀ということだろう。
だけど、それと引き替えに色々とやっかみがあるということか………。
「友人が一緒なら、もう大丈夫かな。せっかく案内を引き受けてくれたけど、ジールにやってもらうよ。君………オルト様、また後でね。」
「あ、ありがとうございました。何かお礼を………。」
「このくらい構わないよ。じゃあ、教室で!」
俺はオルト様からのお礼を丁重に断って、ジールと共に貴族院の扉へと向かって歩き始めた。
ーー
「お願いなしで、教室への案内を頼んでしまってごめんね。」
「そんなこと、別に気にしていないッスよ。もともとそのつもりだったッスから。」
「うん、ありがとう。じゃあ、早速教室に………それより先に、先生に挨拶しに行った方が良いかな? ということで、先生の所に案内してもらってもいい?」
「そ、そうっスね………。アースに来てほしいところがあったッスけど、確かにそっちの方が先ッスね。じゃあ、行くッスよ。」
「急用ならジールの用事からでも………。」
「うーん、多分大丈夫ッス。先生の所に行って手続きをしたり、説明を受けたりしないと貴族院生活がスタートしないッスからね。」
「そうか………。了解、じゃあ案内よろしくね。」
ジールのいきたいところはすごく気になるけど、先生の所に行かないと貴族院生活が始まらないのは事実だ。
ここは、職員室に向かうとしよう。まあ本音を言うと、先にキルや側近のみんなに挨拶をしたかったけれど………。
俺はジールの案内に従って、貴族院の中へと足を踏み入れた。
貴族院の内部は、大理石をふんだんに用いた白を基調としたものだ。なんというか、高級感がすごい。このレベルなら寮は、寮ではなく高級ホテルのような感じかもしれないな。
「ジール、みんなは元気?」
「元気ッスよ。キースなんか、背がとても伸びて同い年とは思えないくらい成長してるッスね。もちろん騎士としても成長していて、兄上のアルフォンス様には4割で勝てるようになっているッス。ローウェルは俺の父上に師事して、外交に力を入れているッス。文官としても、腹黒く………とても頼りになるッスよ!」
なるほど。2人ともとても成長しているらしい。成長具合で負けていないよな? 俺だけ足を引っ張るのだけは悲しすぎるからな。
って、あれ………。
「キルは?」
俺がそういうと、ジールは笑顔のまま固まってしまった。
なんだろう? キルに何かあったのだろうか?
「ジール? キルに何かあったの?」
「いや、何かあったかというとそういうわけではないんッスけど………。殿下もマクウェル様やアルフォンス様とは互角に戦えるほど力を伸ばしているッス。だけど、どうしてもアルベルト殿下には勝てないようで………。ここ1年は、朝から晩まで時間があれば剣を握っているッス。まあこの1週間が1番ひどいッスけどね………。」
兄上やアルフォンスさんとは互角に戦える、だけどアルベルト殿下には勝てないか………。アルベルト殿下に勝つために、なりふり構わず剣を握っている。つまりは………
「つまり、オーバーワークということ?」
「そうッスね………。何度も訓練時間を減らすように言っているッスけど、受け流されてしまうッス。これは俺の想像ッスけど、殿下は焦っているんだと思うッスよ。アルベルト殿下に勝てないようでは、何も守ることはできないのだと。だから、無理をしてでも剣を握っているんだと思うッス。」
何も守ることができない。
つまり、俺達を守れなかったあの時の記憶がキルを焦らせているのだろう。
あれはキルだけの力不足のせいではなく、俺達全員の力不足が原因だ。だけど、キルは、主として俺たち側近の誰よりも責任を感じているのだろう。
………そうキルに感じさせているのは、俺がけがをしてしまったことが大きな要因となっていると思う。その原因の俺が、「訓練時間を減らして」といったら、キルはどう思うだろうか。キルの今までの努力を否定することになってしまうかもしれない。
だけど、ジールたちが心配するほどのオーバーワークだ。どうにかして、訓練のし過ぎを止めなくてはいけない。
「キルが焦っている原因の1つは、とういか大部分は、俺が怪我をしたことだと思う。原因の俺が、「訓練時間を減らして」と言うのは、キルにとって残酷なことかな………。」
俺がそういうと、ジールは何かを考えるように立ち止まってうつむいてしまった。
「アース、登校初日からトラブルに巻き込まれてどうするんッスか?」
「いや、あれは不可抗力で………。ジールだって、見て見ぬふりをして通り抜けられないでしょ?」
「ま、まあ………俺も門の所から見えていたッスから、同じ状況だったら助けに出たッスよ。とはいっても、初日から………。」
「あははははは………。」
俺はとりあえず、笑顔でジールの肩をたたいた。
すると、後方から、2人の少年が走り寄ってきた。
「オ、オルト! 大丈夫か?」
「ごめん。僕たち、また見ていることしかできなくて………。」
「いいや、仕方がないよ。相手は、侯爵家だからさ………。助けようとしてくれて、ありがとう。」
友人が近くにいたのか。今まで出て来なかったのは、単純に身分差があるゆえにか、それとも助ける気がなかったのか………。
2人の顔を見る限り、本当に心配し、助けられなかったことを悔いているように見える。前者だな。
「3人とも、成り上がり貴族の息子っすね。だけど、下級貴族にもかかわらずAクラスになったッス。そこら辺の貴族の子女より、よほど優秀ッスね。(小声)」
ジールはそっと、耳打ちをしてくれた。
アーキウェル王国貴族院のクラス分けは成績順で、そこに身分の忖度はない。学年ごとに20人ずつの3クラスがあり、一番成績のいいクラスがAクラスだ。
この3人は、学習環境があまりよくない下級貴族でありながら、Aクラスに入学したのだ。よっぽど、優秀ということだろう。
だけど、それと引き替えに色々とやっかみがあるということか………。
「友人が一緒なら、もう大丈夫かな。せっかく案内を引き受けてくれたけど、ジールにやってもらうよ。君………オルト様、また後でね。」
「あ、ありがとうございました。何かお礼を………。」
「このくらい構わないよ。じゃあ、教室で!」
俺はオルト様からのお礼を丁重に断って、ジールと共に貴族院の扉へと向かって歩き始めた。
ーー
「お願いなしで、教室への案内を頼んでしまってごめんね。」
「そんなこと、別に気にしていないッスよ。もともとそのつもりだったッスから。」
「うん、ありがとう。じゃあ、早速教室に………それより先に、先生に挨拶しに行った方が良いかな? ということで、先生の所に案内してもらってもいい?」
「そ、そうっスね………。アースに来てほしいところがあったッスけど、確かにそっちの方が先ッスね。じゃあ、行くッスよ。」
「急用ならジールの用事からでも………。」
「うーん、多分大丈夫ッス。先生の所に行って手続きをしたり、説明を受けたりしないと貴族院生活がスタートしないッスからね。」
「そうか………。了解、じゃあ案内よろしくね。」
ジールのいきたいところはすごく気になるけど、先生の所に行かないと貴族院生活が始まらないのは事実だ。
ここは、職員室に向かうとしよう。まあ本音を言うと、先にキルや側近のみんなに挨拶をしたかったけれど………。
俺はジールの案内に従って、貴族院の中へと足を踏み入れた。
貴族院の内部は、大理石をふんだんに用いた白を基調としたものだ。なんというか、高級感がすごい。このレベルなら寮は、寮ではなく高級ホテルのような感じかもしれないな。
「ジール、みんなは元気?」
「元気ッスよ。キースなんか、背がとても伸びて同い年とは思えないくらい成長してるッスね。もちろん騎士としても成長していて、兄上のアルフォンス様には4割で勝てるようになっているッス。ローウェルは俺の父上に師事して、外交に力を入れているッス。文官としても、腹黒く………とても頼りになるッスよ!」
なるほど。2人ともとても成長しているらしい。成長具合で負けていないよな? 俺だけ足を引っ張るのだけは悲しすぎるからな。
って、あれ………。
「キルは?」
俺がそういうと、ジールは笑顔のまま固まってしまった。
なんだろう? キルに何かあったのだろうか?
「ジール? キルに何かあったの?」
「いや、何かあったかというとそういうわけではないんッスけど………。殿下もマクウェル様やアルフォンス様とは互角に戦えるほど力を伸ばしているッス。だけど、どうしてもアルベルト殿下には勝てないようで………。ここ1年は、朝から晩まで時間があれば剣を握っているッス。まあこの1週間が1番ひどいッスけどね………。」
兄上やアルフォンスさんとは互角に戦える、だけどアルベルト殿下には勝てないか………。アルベルト殿下に勝つために、なりふり構わず剣を握っている。つまりは………
「つまり、オーバーワークということ?」
「そうッスね………。何度も訓練時間を減らすように言っているッスけど、受け流されてしまうッス。これは俺の想像ッスけど、殿下は焦っているんだと思うッスよ。アルベルト殿下に勝てないようでは、何も守ることはできないのだと。だから、無理をしてでも剣を握っているんだと思うッス。」
何も守ることができない。
つまり、俺達を守れなかったあの時の記憶がキルを焦らせているのだろう。
あれはキルだけの力不足のせいではなく、俺達全員の力不足が原因だ。だけど、キルは、主として俺たち側近の誰よりも責任を感じているのだろう。
………そうキルに感じさせているのは、俺がけがをしてしまったことが大きな要因となっていると思う。その原因の俺が、「訓練時間を減らして」といったら、キルはどう思うだろうか。キルの今までの努力を否定することになってしまうかもしれない。
だけど、ジールたちが心配するほどのオーバーワークだ。どうにかして、訓練のし過ぎを止めなくてはいけない。
「キルが焦っている原因の1つは、とういか大部分は、俺が怪我をしたことだと思う。原因の俺が、「訓練時間を減らして」と言うのは、キルにとって残酷なことかな………。」
俺がそういうと、ジールは何かを考えるように立ち止まってうつむいてしまった。
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