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第三章 ウェルカムキャンプ編
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午後の1コマを終えれば、今日の授業は終了だ。のんびりとしていようと思っていた。しかし、午後の講義で予期していないメインイベントがアクア先生から告知された。
「今日は今月末に行われる課外実習の告知をするの。例年1年生のこの時期に、ウェルカム合宿を行っているの。今日はその班分けをしたいと思うの。」
ウェルカム合宿………なんて学園生活らしいイベントだろうか!
クラスのみんなも貴族の子女らしく騒ぎはしなかったものの、楽しげな雰囲気を醸し出していた。
その後、アクア先生によってウェルカム合宿の概要が話された。
期間は1泊2日で、場所は貴族院が所有する森らしい。魔物はC級がちらほらいるくらいだそうだ。各班に分かれて、自給自足のキャンプをするとのことだ。なぜ、貴族の子女がそのようなことをするのかというと、騎士や魔導士になると討伐や遠征等で野営することになるからだそうだ。貴族院で、野営体制をつけようということらしい。1年生の今回は、手始めとして1泊2日のキャンプをしようということだ。
「それでは、自由に班を組んでほしいの。4人ずつで班を組んでほしいの。もちろん、魔物も出現するから文官のみなさんへの配慮をした班組みをお願いしたいの。それでは、班決めはじめなの!」
4人ということは………1人余る。
キルの側近という立場が優先されるため、俺達側近はキルと一緒に行動する必要がある。班に入るのは、キースとローウェルが確定だ。なぜなら、固有の役割である騎士と文官だからだ。
となると、抜けるのは役割りが魔導士と同じの俺かジールになる。ジールは木属性で、森と親和性が高いから能力を最大限生かすことができる。
うーん、誰が抜けるかで雰囲気が悪くのもいやだし、俺が抜けるのがベストかな。
俺は、どうしたものかと微妙な顔をする皆に向き直って、笑顔で語りかけた。
「それじゃあ、俺が抜けるよ。3人とも、キルのことをよろしくね!」
「ちょっと待て。何で、そうなるんだ?」
側近組3人は何か言いたげな顔をしながらも頷きかけていたが、主のキルはたいそうご不満のようだ。
俺は、さっきまで考えていた俺が抜けることが適切な理由を話した。
「………という理由だよ。それに、誰が抜けるかでギクシャクしたくなかったしね。」
「だからって、アースが抜ける必要はないだろ。………俺が抜けてもいいだろ。」
その瞬間、キルは失言だと悟ったのかすぐに手の甲を口に当てた。
………はい? 王子であるキルが、側近を置き去りにして、他の生徒と組むという風に聞こえたけどどういうことだろうか? 失言だと気づいたとしても、そういう思考回路になることに俺は若干カチンときた。
朝からのギクシャクで俺は、キルに対する感情のブレーキが利きづらくなっていた。
「キルヴェスター殿下。今のお言葉は、いったいどういうことでしょうか? まさかとは思いますが、我々側近を誰一人付けずに魔物が出る森へ行こうとお考えですか? 王族である殿下方に、いったいなぜ側近がつけられているとお思いですか?」
「………その側近の役目よりも他に行くことを優先したのはアースじゃないか。理由は納得できるものだが、最初から抜けると言わずに話し合うべきだったのではないか?」
俺は、まさか反論が来るとは思わずに若干驚いてしまった。
確かに抜けることを優先したように見えるかもしれないけど、ギクシャクするのが嫌だから最初から抜ける宣言をしたんだ。もちろんこの程度で仲が悪くなるとかそういうことは思っていいないけど、
こういう誰が抜けるかの話し合いをするのも嫌だったのだ。
「確かに、そうかもしれません。ですが、殿下。今私は、殿下が側近をつけずに他の方と組んで森に行こうとしたことについて問うているのです。それから、殿下と組むことになる班員の皆さんの迷惑を考えていますか? 確かにこの国の王族を守ることはこの国の貴族の義務ではありますが、側近でもない皆さんにキャンプの間ずっと護衛をさせることになるのですよ。」
「そんなこと、アースに言われなくてもわかっている。アースの方こそ、側近であるのにもかかわらず第一声が別行動をするとはどういうことだ?」
だから、それには理由があるからで………なんでこうなるんだよ。
俺がさらに、反論を重ねようとすると、キースが俺とキルの肩を軽くつかんだ。
こういう場面で出てくるのは、ローウェルかジールだと思っていたので正直驚いてしまった。キースは基本的に、キル言動に対して否は言わない。キルも驚いたようで、キースのことを凝視している。
「殿下、アース、ここはお2人の私室ではありません。非常に目立っておりますし、皆を驚かせています。………殿下、人目があるところでは王族らしさをお忘れなきようお願いいたします。それから、先ほどの側近をつけない云々の発言は、失言でした。以後、お気をつけください。それからアース、少し言いすぎだ。殿下がご自分の失言に気づいたことを、お前ならすぐに察知したはずだ。その殿下に対して、少々言葉がきつすぎる。それから、理由は納得のいくものだが、少しは話し合いをするべきだったのではないか? 他者を気遣えるお前のことだ、そういう話し合いをするよりは自分が身を引いた方が良いとでも考えたんだろ? 他者を思いやり行動できるのはアースの美点だが、俺達はそういうことも話し合える間柄じゃないか?」
友人にこのように真面目に説教されると単純にへこむし、素直に謝罪してしまう………。
キルもキースに諫められてへこんだようで、若干俯いている。
「ごめん、キース………。キースの言うとおりだよ、少し意地を張ってしまったみたい。キルもごめんね。」
「いや………俺の方こそすまなかった。アースの理由はもっともだと頭ではわかっていたが、俺も意地を張りすぎてしまった。クラスの皆も騒いでしまい、すまなかった。」
キルの謝罪に合わせて俺たちも謝ると、クラスのみんなは笑顔で「とんでもございません。」といい、班決めに戻ってくれた。
皆対応が大人だな………。朝の件もあってか、変な意地を張ってしまった、反省しないとな。
「2人が言い合いするなんてめったに見ないッスから、少しびっくりしたッスよ。無事に仲直りできたようでよかったッス。ということで、班決めの話に戻るッスけど、みんなは魔導士の俺とアースのどちらかが抜けることに異論はないッスよね?」
ジールがそういうと、俺を含めたみんなは頷いた。
ここまでは特に異論は出ないだろう。問題はこの後、どちらが抜けるかだけど………。
すると、ジールのあとをローウェルが引き継いだ。
「なら、こう考えるのはどうだ? 主の側を離れる者が粗めの広範囲索敵を行い、近くにいる者が近い範囲の精度の高い索敵を行うという役割分担にするのは?」
なるほど、流石ローウェルだ。
それならば、抜けた側近もキルのために活動することができ、危険が差し迫ったらすぐに察知することができる。ということは、キャンプが行われる森の広さがどれくらいか知る必要があるな。
俺は手を挙げて、アクア先生に質問することにした。
「今日は今月末に行われる課外実習の告知をするの。例年1年生のこの時期に、ウェルカム合宿を行っているの。今日はその班分けをしたいと思うの。」
ウェルカム合宿………なんて学園生活らしいイベントだろうか!
クラスのみんなも貴族の子女らしく騒ぎはしなかったものの、楽しげな雰囲気を醸し出していた。
その後、アクア先生によってウェルカム合宿の概要が話された。
期間は1泊2日で、場所は貴族院が所有する森らしい。魔物はC級がちらほらいるくらいだそうだ。各班に分かれて、自給自足のキャンプをするとのことだ。なぜ、貴族の子女がそのようなことをするのかというと、騎士や魔導士になると討伐や遠征等で野営することになるからだそうだ。貴族院で、野営体制をつけようということらしい。1年生の今回は、手始めとして1泊2日のキャンプをしようということだ。
「それでは、自由に班を組んでほしいの。4人ずつで班を組んでほしいの。もちろん、魔物も出現するから文官のみなさんへの配慮をした班組みをお願いしたいの。それでは、班決めはじめなの!」
4人ということは………1人余る。
キルの側近という立場が優先されるため、俺達側近はキルと一緒に行動する必要がある。班に入るのは、キースとローウェルが確定だ。なぜなら、固有の役割である騎士と文官だからだ。
となると、抜けるのは役割りが魔導士と同じの俺かジールになる。ジールは木属性で、森と親和性が高いから能力を最大限生かすことができる。
うーん、誰が抜けるかで雰囲気が悪くのもいやだし、俺が抜けるのがベストかな。
俺は、どうしたものかと微妙な顔をする皆に向き直って、笑顔で語りかけた。
「それじゃあ、俺が抜けるよ。3人とも、キルのことをよろしくね!」
「ちょっと待て。何で、そうなるんだ?」
側近組3人は何か言いたげな顔をしながらも頷きかけていたが、主のキルはたいそうご不満のようだ。
俺は、さっきまで考えていた俺が抜けることが適切な理由を話した。
「………という理由だよ。それに、誰が抜けるかでギクシャクしたくなかったしね。」
「だからって、アースが抜ける必要はないだろ。………俺が抜けてもいいだろ。」
その瞬間、キルは失言だと悟ったのかすぐに手の甲を口に当てた。
………はい? 王子であるキルが、側近を置き去りにして、他の生徒と組むという風に聞こえたけどどういうことだろうか? 失言だと気づいたとしても、そういう思考回路になることに俺は若干カチンときた。
朝からのギクシャクで俺は、キルに対する感情のブレーキが利きづらくなっていた。
「キルヴェスター殿下。今のお言葉は、いったいどういうことでしょうか? まさかとは思いますが、我々側近を誰一人付けずに魔物が出る森へ行こうとお考えですか? 王族である殿下方に、いったいなぜ側近がつけられているとお思いですか?」
「………その側近の役目よりも他に行くことを優先したのはアースじゃないか。理由は納得できるものだが、最初から抜けると言わずに話し合うべきだったのではないか?」
俺は、まさか反論が来るとは思わずに若干驚いてしまった。
確かに抜けることを優先したように見えるかもしれないけど、ギクシャクするのが嫌だから最初から抜ける宣言をしたんだ。もちろんこの程度で仲が悪くなるとかそういうことは思っていいないけど、
こういう誰が抜けるかの話し合いをするのも嫌だったのだ。
「確かに、そうかもしれません。ですが、殿下。今私は、殿下が側近をつけずに他の方と組んで森に行こうとしたことについて問うているのです。それから、殿下と組むことになる班員の皆さんの迷惑を考えていますか? 確かにこの国の王族を守ることはこの国の貴族の義務ではありますが、側近でもない皆さんにキャンプの間ずっと護衛をさせることになるのですよ。」
「そんなこと、アースに言われなくてもわかっている。アースの方こそ、側近であるのにもかかわらず第一声が別行動をするとはどういうことだ?」
だから、それには理由があるからで………なんでこうなるんだよ。
俺がさらに、反論を重ねようとすると、キースが俺とキルの肩を軽くつかんだ。
こういう場面で出てくるのは、ローウェルかジールだと思っていたので正直驚いてしまった。キースは基本的に、キル言動に対して否は言わない。キルも驚いたようで、キースのことを凝視している。
「殿下、アース、ここはお2人の私室ではありません。非常に目立っておりますし、皆を驚かせています。………殿下、人目があるところでは王族らしさをお忘れなきようお願いいたします。それから、先ほどの側近をつけない云々の発言は、失言でした。以後、お気をつけください。それからアース、少し言いすぎだ。殿下がご自分の失言に気づいたことを、お前ならすぐに察知したはずだ。その殿下に対して、少々言葉がきつすぎる。それから、理由は納得のいくものだが、少しは話し合いをするべきだったのではないか? 他者を気遣えるお前のことだ、そういう話し合いをするよりは自分が身を引いた方が良いとでも考えたんだろ? 他者を思いやり行動できるのはアースの美点だが、俺達はそういうことも話し合える間柄じゃないか?」
友人にこのように真面目に説教されると単純にへこむし、素直に謝罪してしまう………。
キルもキースに諫められてへこんだようで、若干俯いている。
「ごめん、キース………。キースの言うとおりだよ、少し意地を張ってしまったみたい。キルもごめんね。」
「いや………俺の方こそすまなかった。アースの理由はもっともだと頭ではわかっていたが、俺も意地を張りすぎてしまった。クラスの皆も騒いでしまい、すまなかった。」
キルの謝罪に合わせて俺たちも謝ると、クラスのみんなは笑顔で「とんでもございません。」といい、班決めに戻ってくれた。
皆対応が大人だな………。朝の件もあってか、変な意地を張ってしまった、反省しないとな。
「2人が言い合いするなんてめったに見ないッスから、少しびっくりしたッスよ。無事に仲直りできたようでよかったッス。ということで、班決めの話に戻るッスけど、みんなは魔導士の俺とアースのどちらかが抜けることに異論はないッスよね?」
ジールがそういうと、俺を含めたみんなは頷いた。
ここまでは特に異論は出ないだろう。問題はこの後、どちらが抜けるかだけど………。
すると、ジールのあとをローウェルが引き継いだ。
「なら、こう考えるのはどうだ? 主の側を離れる者が粗めの広範囲索敵を行い、近くにいる者が近い範囲の精度の高い索敵を行うという役割分担にするのは?」
なるほど、流石ローウェルだ。
それならば、抜けた側近もキルのために活動することができ、危険が差し迫ったらすぐに察知することができる。ということは、キャンプが行われる森の広さがどれくらいか知る必要があるな。
俺は手を挙げて、アクア先生に質問することにした。
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