126 / 172
第三章 ウェルカムキャンプ編
123
しおりを挟む
「ザール様、私がローウェルの魔力源に魔力を送り込んでローウェルの魔力と一体化させてから回復魔法をつかえば、治療できるのではないでしょうか?」
「可能性はないとはいえません。しかし、魔力を一体化させてもアース様の魔力だけがはじかれる可能性がありますし、なにより他人の魔力と一体化させることは難しいと言わざるを得ません。先程述べたように、通常、他人と魔力が交わることはありませんから。たとえできたとしても、回復魔法を行使し治療するには、精神的負担があまりに大きすぎるでしょう。」
「………で、でも、あきらめることはできません。とにかく、可能性がゼロでないなら試して」
「まあ、お待ちください。私は先ほど、通常は他人と魔力は交わらないと申しました。つまり、例外があるのですよ。」
俺が強行しようとすると、ザール様は穏やかな笑みで俺の腕を掴んで、理由を述べながら俺を制した。
例外がある………? つまり、ザール様には心当たりがあるということだろうか?
すると、アルベルト殿下が納得した表情で、あごに手を当てながら声を発した。
「あー、なるほど。サリーヴェか。」
「その通りです、アルベルト殿下。ただ、今から調合するのは現実的ではありませんね。」
「そうだな。今から調達するとなると………尋問部に掛け合うしかないだろうな。俺の権限で用意させよう。………アルフォンス、行け。」
アルベルト殿下に指名されたアルフォンスさんは、了解の意味を込めて跪いた後、颯爽と部屋を出ていった。
………なにやら、上の世代の皆さんでわかり合っているようだけど、俺にはさっぱりわからない。俺は視線をキルに送ってみたが、キルもわからないようで小さく首を振った。
「ザール様。サリーヴェとは何でしょう?」
「サリーヴェとは、貴族院の高学年で調合の仕方を習う液体です。効果は、他人を自分の魔力で染めやすくし、さらに言うと支配下に置くことができます。主な使用用途は2つあります。1つは省きますので、ご自身で習うときに確認してください。もう1つは、犯罪者に対して使います。精神関与系の魔法を直接身体に流したり、記憶をのぞいたりするために用います。」
なるほど。サリーヴェは、今の状況にぴったりの薬のようなものか。これを使えば、ローウェルの魔力回路に俺の魔力を流すことができるようになるから、治療することができるということか。それにしても、もう1つの使用方法とはいったい何だろうか? この場で言わない又は言えない使用方法で、成人間際に調合方法を学ぶことから考えると………いわゆるR18系だろうか? 成人間際ということから考えると、閨関係のことだろう。
………たしか、貴族の子を産むためには父親と母親の両方の魔力を注がなければいけないときいたな。
あー、わかった。夫婦がお互いにサリーヴェをつくって、お互いのサリーヴェを飲んでから、行為に及ぶということか。俺は成人後の記憶があるからなんとなく推測できたけど、キルたちは何のことか多分わからないんだろうな。
もちろん俺も、純粋無垢な貴族院1年生であるから、何もわからないですというような微笑みを浮かべておこう。
ーー
少しすると、アルフォンスさんが優雅かつ素早い身のこなしで戻ってきた。アルベルト殿下にサリーヴェを見せた後に、ローウェルに手渡した。
ローウェルは少し視線をさまよわせた後、ザール様に、「飲めばよろしいのでしょうか?」と尋ねた。
確かに、いきなりよくわからない液体を手渡されても困るよな。
「ええ、すべて飲み切ってください。効果は一日たてば消えるので、日常生活に支障はございません。ちなみに、尋問対象にサリーヴェを使うときは、強制的に投与するのですよ。飲ませるのも一苦労ですからね。」
途中まで感心して聞いていたが、後半部分の話を聞いて俺たちは微妙な顔でお互いを視線を交わし合った。
ザール様には時々、少年のような幼い容姿と発言内容が一致しないことが多いので戸惑ってしまう。
「サリーヴェの話はもういい。ローウェル、サリーヴェ単体では特段意味のないもので水と同じようなものだ。早く飲んでしまえ。」
アルベルト殿下は、パタパタと手を振りながらローウェルに飲むように促した。ローウェルは「かしこまりました。」と言ったあとに、一気にサリーヴェをあおった。
アダルト組の言う通り、サリーヴェを飲んだローウェルには特に何も起こらなかった。
よし、ここからは俺の仕事だ。俺はもう一度ローウェルに上級魔法をかけた。
「お! 今回は回復魔法がはじかれずに、しっかりと魔法回路が治療されてる!」
俺はうれしさのあまり、思わず大きな声を出してしまった。俺が思わず口に手を当てると同時に、キルたちが近くにきて氷鏡を覗き込んだ。
「………本当だ。これを見ると、魔力が溢れずに魔力回路の中を流れているのがよく見える。」
「そうッスね。魔力回路が可視化されていることで、勉強にもなるッスよ。」
「ああ、そうだな。………ローウェルの裸体が見えることが若干気に障るが。」
「気に障るなら、あっちに行ってろよ!」
無事に回復がされたことで、周りの雰囲気も柔らかくなった。
キースとローウェルが、いつものように憎まれ口をたたき合っている。
「可能性はないとはいえません。しかし、魔力を一体化させてもアース様の魔力だけがはじかれる可能性がありますし、なにより他人の魔力と一体化させることは難しいと言わざるを得ません。先程述べたように、通常、他人と魔力が交わることはありませんから。たとえできたとしても、回復魔法を行使し治療するには、精神的負担があまりに大きすぎるでしょう。」
「………で、でも、あきらめることはできません。とにかく、可能性がゼロでないなら試して」
「まあ、お待ちください。私は先ほど、通常は他人と魔力は交わらないと申しました。つまり、例外があるのですよ。」
俺が強行しようとすると、ザール様は穏やかな笑みで俺の腕を掴んで、理由を述べながら俺を制した。
例外がある………? つまり、ザール様には心当たりがあるということだろうか?
すると、アルベルト殿下が納得した表情で、あごに手を当てながら声を発した。
「あー、なるほど。サリーヴェか。」
「その通りです、アルベルト殿下。ただ、今から調合するのは現実的ではありませんね。」
「そうだな。今から調達するとなると………尋問部に掛け合うしかないだろうな。俺の権限で用意させよう。………アルフォンス、行け。」
アルベルト殿下に指名されたアルフォンスさんは、了解の意味を込めて跪いた後、颯爽と部屋を出ていった。
………なにやら、上の世代の皆さんでわかり合っているようだけど、俺にはさっぱりわからない。俺は視線をキルに送ってみたが、キルもわからないようで小さく首を振った。
「ザール様。サリーヴェとは何でしょう?」
「サリーヴェとは、貴族院の高学年で調合の仕方を習う液体です。効果は、他人を自分の魔力で染めやすくし、さらに言うと支配下に置くことができます。主な使用用途は2つあります。1つは省きますので、ご自身で習うときに確認してください。もう1つは、犯罪者に対して使います。精神関与系の魔法を直接身体に流したり、記憶をのぞいたりするために用います。」
なるほど。サリーヴェは、今の状況にぴったりの薬のようなものか。これを使えば、ローウェルの魔力回路に俺の魔力を流すことができるようになるから、治療することができるということか。それにしても、もう1つの使用方法とはいったい何だろうか? この場で言わない又は言えない使用方法で、成人間際に調合方法を学ぶことから考えると………いわゆるR18系だろうか? 成人間際ということから考えると、閨関係のことだろう。
………たしか、貴族の子を産むためには父親と母親の両方の魔力を注がなければいけないときいたな。
あー、わかった。夫婦がお互いにサリーヴェをつくって、お互いのサリーヴェを飲んでから、行為に及ぶということか。俺は成人後の記憶があるからなんとなく推測できたけど、キルたちは何のことか多分わからないんだろうな。
もちろん俺も、純粋無垢な貴族院1年生であるから、何もわからないですというような微笑みを浮かべておこう。
ーー
少しすると、アルフォンスさんが優雅かつ素早い身のこなしで戻ってきた。アルベルト殿下にサリーヴェを見せた後に、ローウェルに手渡した。
ローウェルは少し視線をさまよわせた後、ザール様に、「飲めばよろしいのでしょうか?」と尋ねた。
確かに、いきなりよくわからない液体を手渡されても困るよな。
「ええ、すべて飲み切ってください。効果は一日たてば消えるので、日常生活に支障はございません。ちなみに、尋問対象にサリーヴェを使うときは、強制的に投与するのですよ。飲ませるのも一苦労ですからね。」
途中まで感心して聞いていたが、後半部分の話を聞いて俺たちは微妙な顔でお互いを視線を交わし合った。
ザール様には時々、少年のような幼い容姿と発言内容が一致しないことが多いので戸惑ってしまう。
「サリーヴェの話はもういい。ローウェル、サリーヴェ単体では特段意味のないもので水と同じようなものだ。早く飲んでしまえ。」
アルベルト殿下は、パタパタと手を振りながらローウェルに飲むように促した。ローウェルは「かしこまりました。」と言ったあとに、一気にサリーヴェをあおった。
アダルト組の言う通り、サリーヴェを飲んだローウェルには特に何も起こらなかった。
よし、ここからは俺の仕事だ。俺はもう一度ローウェルに上級魔法をかけた。
「お! 今回は回復魔法がはじかれずに、しっかりと魔法回路が治療されてる!」
俺はうれしさのあまり、思わず大きな声を出してしまった。俺が思わず口に手を当てると同時に、キルたちが近くにきて氷鏡を覗き込んだ。
「………本当だ。これを見ると、魔力が溢れずに魔力回路の中を流れているのがよく見える。」
「そうッスね。魔力回路が可視化されていることで、勉強にもなるッスよ。」
「ああ、そうだな。………ローウェルの裸体が見えることが若干気に障るが。」
「気に障るなら、あっちに行ってろよ!」
無事に回復がされたことで、周りの雰囲気も柔らかくなった。
キースとローウェルが、いつものように憎まれ口をたたき合っている。
303
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に1話ずつ更新
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる