異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo

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第三章 ウェルカムキャンプ編

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※キルヴェスター視点


今日は、アースがローウェルの魔力回路を回復させた。今まで不可能とされてきた魔力回路を回復させたことは、本当にすごいと思った。だけど、俺がそれ以上に感動したのはアースの魔法の多彩さだ。回復力を高めるための水の羽衣、患部を詳しく見るための氷鏡、そしてもはや芸術の域に達しているのではないかと思えるほどの美しさを放っていた、清属性による上級水回復魔法。「魔法とはこういうものだ」と、直接訴えかけられるような衝撃を受けた。

……しかし、感動を覚えたのと同時に、なぜだかものすごく胸がざわついた。これは1人で抱えていては、良くない方向に感情が向いてしまうのではないかと考えて、俺はその夜、側近の1人を訪ねることにした。

部屋の前につきノックをすると、メイドが扉を開いた。


「ジールと今から話せるだろうか? 話せるのなら、少し部屋に入って話したいと伝えてくれるか?」

「かしこまりました。ジール様は、先程入浴を済ませて、今は自学をしておられます。少々お待ちください。」


メイドはそういうと、機敏な動きで中に下がっていった。
うん、本来はこのように部屋の中のメイドが扉の開け閉めをしたり、茶の準備をしたりするのだ。どこかの誰かのように自分で扉を開けて、茶の準備をするようなことを普通はしない。……アースは、人に世話されるのがあんまり好きじゃないようだ。自分でできることは自分でしてしまうことが多い。


そんなことを考えていると、先程のメイドが戻ってきて俺を部屋の中へ通した。
部屋の中を見た瞬間、訪ねる部屋を間違えたのかと思うほどの植物の量に驚いた。そういえば、ジールは樹との親和性を高めるために領地の一部で植物の栽培を行っていると言っていたな。この部屋の中の植物も樹との親和性を高めるための趣味の一環なのだろう。



「お疲れ様ッス、殿下。どうしたんッスんか、側近の部屋の視察ッスか?」


ジールは、いつもの人懐っこい笑顔でそう問いかけてきた。ジールのそばには、開きかけの魔法基礎論の教科書があった。……ジールも今日の一件で、何か思うことがあったのかもしれないな。



「急にすまないな、ジール。視察というわけではなく、ジールと少し話がしたかったんだ。」


「なるほど。俺でよければいつでもウェルカムッスよ。」


ジールはそういうと、片手を挙げてメイドに合図した。
メイドはすぐにお茶の準備をして、素早く部屋から出ていった。



「ありがとう。……いい香りのお茶だな。ジールの好きそうなお茶だ。」


「そういってもらえると嬉しいッス。最近ハマっているクラボの実のお茶っスよ。」


爽やかな柑橘系の香りが部屋の中に漂っている。
ジールはこういうフルーティーなお茶を好んで飲んでいる。


「魔導士クラブはどんな感じだ? アースと見に行ったが、訓練をしている者が騎士クラブよりも少ないと感じたが……。」


「ああ、まあそれは仕方がないッスよ。この国は魔道具開発が盛んッス。いわゆる戦闘を得意とする魔導士よりも、魔導具の開発等を行う魔道具士を志望する人が結構いるんッスよ。同じ魔導士クラブでも、訓練を行っている者は半分くらいで、もう半分は併設されている研究棟のほうにいるッスよ。」


「なるほどな。」


確かに、この国では他の国よりも魔道具士になりたがる者が多い。魔道具研究に対する支援も潤沢だし、なにより有用な魔道具を開発すれば名誉や金がわんさか入ってくるからな。命の危険がある魔導士よりも、魅力的だと感じる者が多くても不思議ではない。そのお陰で、この国が発展しているので、何も否定されるようなことではない。しかし、その弊害として魔導士の質が年々低下するという頭の痛い問題を抱えているわけだが……。



「魔導士といえば、今日のアースはすごかったッスね。上級回復魔法はもちろんのこと、あの水の羽衣や氷の鏡はおそらく上級補助魔法の一種ッスね。まったく、アースには驚かされてばかりッスね。」


「あれも上級魔法の一つなのか? すごく画期的だとは思っていたが……。」


「効果や使用魔力か量からして、上級補助魔法と考えて差し支えないッスよ。むしろ、あれで初級や中級魔法だったら恐怖ッスよ。」


「………ああ、確かにそうだな。」


ジールは、肩をすくめておどけたように笑った。確かにジールの言うとおりだが……ジールは、今日のアースを見て、ただすごいと感じただけなのだろうか? 


「……ジールは、今日のアースを見て、すごいと感じただけなのか?」


俺が少しためらいがちに、そう聞くと、ジールは穏やかな笑みを浮かべながら頷いた。


「そういうことっスか。殿下が俺に聞きたいのは、アースと同じ魔導士として今日のアースに嫉妬や焦りを感じなかったか、ということで間違いないッスか?」


なんてことなさそうにジールはそういったが、その言葉は俺の胸に深く突き刺さった。
……そうか、俺は今日のアースを見て、いつでも先を行くアースを見て、焦りを覚えるのと同時に嫉妬していたのか。いや、自分でも気づいていただろうに。こんなみっともない感情を持っているのは俺だけではないと、それを確かめるために魔導士のジールのもとを訪ねたのだ。……まったく、自分が嫌いになりそうだ。



「………すまない、ジール。俺、ジールに失礼なことを聞いたよな。そういう感情を抱いているのが自分だけではないと、確かめて安心したかったんだ。自分勝手で、本当にすまない。」



俺がそういうと、ジールはお茶をゆっくりと飲み干した後、静かに立ち上がって俺の座っているソファーにゆっくりと腰を掛けた。
































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