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第四章 人狼編
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「変なことって……主。んんっ! アース、この村の飲食物には口をつけるなといわれているだろ? 回復薬も食べ物じゃないが、一応飲み物の部類だ。」
すると、呆けていたアースが口をふさいでいた俺の手を揺らした。
あ、ついふさいだままにしてしまった。俺はすぐに口から手を放して、「すまん」と謝った。
「ご、ごめん! 食べ物じゃなかったから、つい……。ちょっと、不思議だったから効力を確かめてみようと思って……。」
「だからって、すぐに口をつけようとするな! 心配しただろ!」
俺がそういうと、アースは「ごめんなさい」と謝って項垂れてしまった。
悪気がなかったのはわかっている、わかっているが……。もっと自分の身を大切にしてほしい。
「まあまあ、結局飲まなかったからいいじゃないッスか。それよりも、アースも回復薬に何か、違和感を覚えたんッスか?」
ジールが空気を換えるように、アースにそう問いかけた。
確かに、魔導士組が回復薬に何かしらの違和感を覚えたのは事実だ。アースの口ぶりからすると、回復薬の品質に違和感を覚えたようだ。ジールも、同じく品質に違和感を思えたのだろうか?
「あ、ジールも違和感を感じていたんだ! 8割の効果しか発揮できないような王都産の回復薬が、市場に流れているのはちょっと不思議だよね。」
「へー、その回復薬は品質があまりよくなかったんッスね。」
「え?」
「え?」
どうやら、2人の違和感は同じものではなかったらしい。
アースとジールは、どういうことだと言わんばかりに首をかしげている。
「ちょっと整理するぞ。アースは、回復薬の品質に違和感を感じたんだよな?」
「そうだよ、キル。さっきも言ったとおり、王都で作られた回復薬は、基本的に品質のいいものしか市場に流れないんだ。」
「なるほど。で、ジールは? 品質に違和感を覚えたんじゃないんだな?」
「当然ッスよ。見ただけで品質を見抜けるのは、上位の回復魔導士くらいッス。ただの魔導士である俺には、到底無理ッスね。」
確かにそのとおりだ。
飲んで効力を感じることはできるが、ビン詰めにされている回復薬の効力を普通は見ただけで判断できないだろう。
「俺は、ほんの一瞬ッスよ。並べられている回復薬を見たときに、一瞬だけ、回復薬以外の魔力を感じたんッスよ。」
回復薬以外の魔力を感じた? それじゃあまるで、別のものが混じっているみたいな言い方じゃないか。
まさか……別のものとは……毒のことか?
すると、さっと顔色を変えて、『氷鏡』と詠唱し、ローウェルの魔力回路を可視化するために用いた魔法を展開した。
「キルがもらったということは、ジールたちも回復薬をもらったんでしょ? 3人の回復薬をすぐに見せて!」
アースの指示を聞き、3人ははっとした表情ですぐに回復薬を取り出し、アースの近くにことりと置いた。
アースは、氷鏡を用いながら、ゆっくりとその回復薬を観察した。
「……毒、というわけではなさそうかな。そもそも、毒が入っていたらもっと多くの犠牲者が出ているだろうからね。」
確かに、アースの言うとおりだ。
ジールによると、並べられていた回復薬のすべてから違和感を感じたとのことだから、毒だった場合は不特定多数の冒険者が毒を摂取することになり、被害の規模も現在の比ではなくなる。それに、満月の日だけに毒に侵されるのも説明がつかない。
「じゃあ、その違和感の正体は一体何なんだ? 」
「それは……わからない。でも、確かにジールの言うとおり別の魔力が僅かに混じっているみたい。一見しただけではわからないくらい、本当にごく少量の魔力が。おそらく、ジールが違和感を感じたのは、たくさんの回復薬を見たからだと思う。一本あたりに混じっている量が少なくても、集まれば多くなるからね。だけど、多いとはいっても普通の人は気づけないレベル。日ごろから、感知を扱っている魔導士ぐらいしか、この違和感には気づけないんじゃないかな?」
……なるほど。それで回復魔導士ではないジールが、アースよりも先に気付けたというわけか。
だが、毒でないのならいったい何が混じっているというんだ?
「その回復薬の作成者の腕が悪かったということか? 何らかの理由で、別系統の魔力が混じってしまったとか?」
「それは考えられないよ。回復薬をつくるときに、別の魔法を発動しようなんて普通は思わない。それに、この魔力はおそらく、回復薬ができた後に別の第三者から注がれたものだよ。」
「別の第三者って……。その魔力は、身体に害があるようなものなのか?」
「いや、この程度の微量の魔力は、大量に摂取しない限りは魔力中毒を起こすほどの害にはならないよ。本当に……何の目的でこんなことをしているのかわからない。……だけど」
アースはそこで言葉を区切ると、ダンッ! と音を立てながら、拳をテーブルにたたきつけた。
「回復薬に干渉できるのは、回復魔導士だけだ。人を癒すための回復魔法で、いったい何を企んでいるんだ!」
普段は怒りの感情をほとんど見せないアースが、瞳の色を濁らせながらそう叫んだ。
同じ回復魔導士として、回復薬を汚されたことが看過できなかったのだ。
俺はアースに目線を合わせるように膝をつき、アースの肩を掴んだ。
「回復薬に精通しているアースにしか調べられないこともあるはずだ。まずは、この回復薬を作成した王都に問い合わせてみないか? 上位の回復魔導士であるアースと俺からの連名で書簡を出せば、王都もすぐに動くだろう。いいな?」
俺がそういうと、アースは拳をもう一度たたきつけた後に、大きく息を吸い込んで深呼吸をした。
そして、いつもの透き通るような翡翠色に瞳の色を戻し、俺の目をしっかりと見つめた。
「ごめん、そのとおりだね。回復魔導士の本部に問い合わせよう。」
「ああ、もちろんだ。ローウェル、すぐに書簡を準備しろ。アルフォンスは、早馬の準備を!」
すると、呆けていたアースが口をふさいでいた俺の手を揺らした。
あ、ついふさいだままにしてしまった。俺はすぐに口から手を放して、「すまん」と謝った。
「ご、ごめん! 食べ物じゃなかったから、つい……。ちょっと、不思議だったから効力を確かめてみようと思って……。」
「だからって、すぐに口をつけようとするな! 心配しただろ!」
俺がそういうと、アースは「ごめんなさい」と謝って項垂れてしまった。
悪気がなかったのはわかっている、わかっているが……。もっと自分の身を大切にしてほしい。
「まあまあ、結局飲まなかったからいいじゃないッスか。それよりも、アースも回復薬に何か、違和感を覚えたんッスか?」
ジールが空気を換えるように、アースにそう問いかけた。
確かに、魔導士組が回復薬に何かしらの違和感を覚えたのは事実だ。アースの口ぶりからすると、回復薬の品質に違和感を覚えたようだ。ジールも、同じく品質に違和感を思えたのだろうか?
「あ、ジールも違和感を感じていたんだ! 8割の効果しか発揮できないような王都産の回復薬が、市場に流れているのはちょっと不思議だよね。」
「へー、その回復薬は品質があまりよくなかったんッスね。」
「え?」
「え?」
どうやら、2人の違和感は同じものではなかったらしい。
アースとジールは、どういうことだと言わんばかりに首をかしげている。
「ちょっと整理するぞ。アースは、回復薬の品質に違和感を感じたんだよな?」
「そうだよ、キル。さっきも言ったとおり、王都で作られた回復薬は、基本的に品質のいいものしか市場に流れないんだ。」
「なるほど。で、ジールは? 品質に違和感を覚えたんじゃないんだな?」
「当然ッスよ。見ただけで品質を見抜けるのは、上位の回復魔導士くらいッス。ただの魔導士である俺には、到底無理ッスね。」
確かにそのとおりだ。
飲んで効力を感じることはできるが、ビン詰めにされている回復薬の効力を普通は見ただけで判断できないだろう。
「俺は、ほんの一瞬ッスよ。並べられている回復薬を見たときに、一瞬だけ、回復薬以外の魔力を感じたんッスよ。」
回復薬以外の魔力を感じた? それじゃあまるで、別のものが混じっているみたいな言い方じゃないか。
まさか……別のものとは……毒のことか?
すると、さっと顔色を変えて、『氷鏡』と詠唱し、ローウェルの魔力回路を可視化するために用いた魔法を展開した。
「キルがもらったということは、ジールたちも回復薬をもらったんでしょ? 3人の回復薬をすぐに見せて!」
アースの指示を聞き、3人ははっとした表情ですぐに回復薬を取り出し、アースの近くにことりと置いた。
アースは、氷鏡を用いながら、ゆっくりとその回復薬を観察した。
「……毒、というわけではなさそうかな。そもそも、毒が入っていたらもっと多くの犠牲者が出ているだろうからね。」
確かに、アースの言うとおりだ。
ジールによると、並べられていた回復薬のすべてから違和感を感じたとのことだから、毒だった場合は不特定多数の冒険者が毒を摂取することになり、被害の規模も現在の比ではなくなる。それに、満月の日だけに毒に侵されるのも説明がつかない。
「じゃあ、その違和感の正体は一体何なんだ? 」
「それは……わからない。でも、確かにジールの言うとおり別の魔力が僅かに混じっているみたい。一見しただけではわからないくらい、本当にごく少量の魔力が。おそらく、ジールが違和感を感じたのは、たくさんの回復薬を見たからだと思う。一本あたりに混じっている量が少なくても、集まれば多くなるからね。だけど、多いとはいっても普通の人は気づけないレベル。日ごろから、感知を扱っている魔導士ぐらいしか、この違和感には気づけないんじゃないかな?」
……なるほど。それで回復魔導士ではないジールが、アースよりも先に気付けたというわけか。
だが、毒でないのならいったい何が混じっているというんだ?
「その回復薬の作成者の腕が悪かったということか? 何らかの理由で、別系統の魔力が混じってしまったとか?」
「それは考えられないよ。回復薬をつくるときに、別の魔法を発動しようなんて普通は思わない。それに、この魔力はおそらく、回復薬ができた後に別の第三者から注がれたものだよ。」
「別の第三者って……。その魔力は、身体に害があるようなものなのか?」
「いや、この程度の微量の魔力は、大量に摂取しない限りは魔力中毒を起こすほどの害にはならないよ。本当に……何の目的でこんなことをしているのかわからない。……だけど」
アースはそこで言葉を区切ると、ダンッ! と音を立てながら、拳をテーブルにたたきつけた。
「回復薬に干渉できるのは、回復魔導士だけだ。人を癒すための回復魔法で、いったい何を企んでいるんだ!」
普段は怒りの感情をほとんど見せないアースが、瞳の色を濁らせながらそう叫んだ。
同じ回復魔導士として、回復薬を汚されたことが看過できなかったのだ。
俺はアースに目線を合わせるように膝をつき、アースの肩を掴んだ。
「回復薬に精通しているアースにしか調べられないこともあるはずだ。まずは、この回復薬を作成した王都に問い合わせてみないか? 上位の回復魔導士であるアースと俺からの連名で書簡を出せば、王都もすぐに動くだろう。いいな?」
俺がそういうと、アースは拳をもう一度たたきつけた後に、大きく息を吸い込んで深呼吸をした。
そして、いつもの透き通るような翡翠色に瞳の色を戻し、俺の目をしっかりと見つめた。
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