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アスターテ皇国2

アスターテ皇国　新皇帝誕生

結婚後、皇太子妃となったエカリテが望んだのは彼女の侍女となったマリンをそのまま伴うことのみであった。
もちろん、皇太子はこれを認めた。

兄はすっかり兄妹の仲が良くなり寂しい気持ちにはなった。それでも、月に一度の連絡を二人に義務付け、エカリテとマリンを送り出した。

これは、たくさんの事に気づけたエカリテではあったが、困ったことを聞いても、基本「常に不足なく」だけの返答をするからであった。
そしてまだ、文章にするには不器用なところのあるエカリテだけの手紙では兄は不安だったのだろう。

時間を見つけて、マリンも侯爵家へ手紙を送ったことで兄も安心して過ごすことができたのだった。

専属侍女としてマリンを伴うことにより心身共に安定し、安心できたエカリテは無事初夜を過ごすことができた。

そんなふうに過ごしていき、程なくしてエカリテは懐妊したのだった。

周囲は喜びにわき上がった。

エカリテは妊娠中は特に問題なく過ごしていたが、出産時大量の出血があり1週間意識が戻らなかった。

このことにより、エカリテはこれ以上の出産を危ぶまれることになった。
それ以上に皇太子がエカリテの身体を心配してこれ以降の出産をさせたくなかったようだ。


こうして出産したのが男児であった。皇子誕生に国中がお祭り騒ぎとなった。

そんなときではあったが、皇太子と兄はエカリテを心配して心ここにあらずだった。それでも二人には立場もあり、皇太子妃なしで式典などを行うしかなかった。

エカリテには常に医師と共にマリンが付き添い、命の危険だけは乗り越えた。命の危険を越えてからもなかなかエカリテの体調は回復しない。もどかしい思いで誰もが過ごしていた。

そんな中でも調子の良い時には乳母たちとマリンにより息子との交流を持つことができた。

自分の産んだ小さな大切な命。この息子の存在はエカリテにとって大きな希望になった。

皇太子もエカリテに寄り添い、公務のできない彼女をよく助けていた。皇太子はこれまで以上にエカリテを大事にしていた。

そうして本当にゆっくり、ゆっくりではあるが
エカリテの身体は回復していった。


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やがて息子が5歳になるころ、エカリテの調子もすっかり落ち着きを取り戻した。

その復調を見届けた皇帝は皇太子ヨハンに帝位を譲ることを決めた。

こうしてヨハンは皇帝に、
エカリテは皇后に、
息子　シルヴァは皇太子になった。

アスターテ皇国はこの新皇帝即位に沸き立ったのである。