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仮面令嬢の過去
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私は、明日、辺境地に結婚する為に向かう。思い出のあった家には、既に、別の家族が住んでいる。
「私は、幸せになれるのかしら」
ふと、そんな事を呟いた。
「大丈夫です。お嬢様は、必ずお幸せになれます」
そう言ってくれたのは、乳母のサリーだった。
「もう三年になるのね。お母様が亡くなられて…」
(今でも、あんなに元気だったお母様が、段々、痩せて見る影もなく亡くなってしまうなんて、未だに信じられないわ)
私の母は、ヴィオレット・クリーク元公爵令嬢だった。
『社交界の花』と称される程の美貌の持ち主だった。
私の父との結婚は、当時の社交界に衝撃が走った程だ。
でも、父には既に愛人がいて、夫婦の仲は、冷えきっていた。というよりは、無いに等しい程だった。
物心ついた頃から、父は自宅には帰らず、常に愛人と一緒に暮らしていた。
母は、必要最低限の社交しかせず、エスコートするのは、伯父様だった。
父が、帰って来ると母は、挨拶だけして、別棟に下がった。
私は、父と話をしたり、遊んだ記憶もなかった。殆ど、接触がなかった。寧ろ、母がわざと父から遠ざけているような気がした。
(何故、お母様は、お父様をあんなに嫌うかしら?)
幼い頃の私は、不思議に思っていた。でも、特別寂しいと感じた事も無かった。
いつも、母や使用人達に囲まれて、楽しく暮らしていたから、生まれた時から、家にいない父等、私にとっては、どうでも良かった。
母は、色々な家庭教師を雇ってくれた。令嬢の教養ではなく、侯爵家の跡取りとして、私を時には厳しく導いてくれた。
中でも、魔法に関しては、一流の宮廷魔導士を連れて来たのには、私も驚いた。
「昔からのお友達なのよ」
と悪戯じみて笑うその姿は、まるで幼い少女の様だった。
社交界で、あらゆる人脈を作り、私に一人でも生きていける知恵や技術の基盤を作り上げた頃、母は儚くなった。
女丈夫の様な母でも病には勝てなかった。
突然、倒れた。お医者様を呼んでも、原因が解らず、日に日に弱って行く母をひたすら看病した。
母は、ある日私に
「私が亡くなったら、この仮面で、顔を隠しなさい。あなたを幸せに導いてくれるから、時が来たら、大丈夫、仮面は自然に外れるから、安心しなさい。」
「お母様、何故、そんな悲しい事を仰るんですの」
私は、母に云われた通り、仮面を付けた。
そして、私が15歳の雪解け間近の春先の朝、母は天国に旅立った。
知らせを聞いた伯父は、葬儀や手続き等、色々と手伝ってくれた。伯父は、母から仮面の事を聞いていたらしく、特に何も聞かなかった。
でも、父は見舞いにも帰らず、葬儀にも顔を出さなかった。
この日、私の中で、母と一緒に父も死んだ。
ーーーーー
母の葬儀から一週間後、あの母子が屋敷にやって来た。
「今日から、私がこの家の女主人よ。宜しくね」
新しい義母は、美しい顔の下に黒い微笑みを浮かべて挨拶した。
「宜しくね。お・義・姉・様」
義妹となったジャネットも義母同様に黒い微笑みを浮かべていた。
何処までも似た者母子だった。
特に人の物を何でも欲しがる所は、そっくりだった。
「私は、幸せになれるのかしら」
ふと、そんな事を呟いた。
「大丈夫です。お嬢様は、必ずお幸せになれます」
そう言ってくれたのは、乳母のサリーだった。
「もう三年になるのね。お母様が亡くなられて…」
(今でも、あんなに元気だったお母様が、段々、痩せて見る影もなく亡くなってしまうなんて、未だに信じられないわ)
私の母は、ヴィオレット・クリーク元公爵令嬢だった。
『社交界の花』と称される程の美貌の持ち主だった。
私の父との結婚は、当時の社交界に衝撃が走った程だ。
でも、父には既に愛人がいて、夫婦の仲は、冷えきっていた。というよりは、無いに等しい程だった。
物心ついた頃から、父は自宅には帰らず、常に愛人と一緒に暮らしていた。
母は、必要最低限の社交しかせず、エスコートするのは、伯父様だった。
父が、帰って来ると母は、挨拶だけして、別棟に下がった。
私は、父と話をしたり、遊んだ記憶もなかった。殆ど、接触がなかった。寧ろ、母がわざと父から遠ざけているような気がした。
(何故、お母様は、お父様をあんなに嫌うかしら?)
幼い頃の私は、不思議に思っていた。でも、特別寂しいと感じた事も無かった。
いつも、母や使用人達に囲まれて、楽しく暮らしていたから、生まれた時から、家にいない父等、私にとっては、どうでも良かった。
母は、色々な家庭教師を雇ってくれた。令嬢の教養ではなく、侯爵家の跡取りとして、私を時には厳しく導いてくれた。
中でも、魔法に関しては、一流の宮廷魔導士を連れて来たのには、私も驚いた。
「昔からのお友達なのよ」
と悪戯じみて笑うその姿は、まるで幼い少女の様だった。
社交界で、あらゆる人脈を作り、私に一人でも生きていける知恵や技術の基盤を作り上げた頃、母は儚くなった。
女丈夫の様な母でも病には勝てなかった。
突然、倒れた。お医者様を呼んでも、原因が解らず、日に日に弱って行く母をひたすら看病した。
母は、ある日私に
「私が亡くなったら、この仮面で、顔を隠しなさい。あなたを幸せに導いてくれるから、時が来たら、大丈夫、仮面は自然に外れるから、安心しなさい。」
「お母様、何故、そんな悲しい事を仰るんですの」
私は、母に云われた通り、仮面を付けた。
そして、私が15歳の雪解け間近の春先の朝、母は天国に旅立った。
知らせを聞いた伯父は、葬儀や手続き等、色々と手伝ってくれた。伯父は、母から仮面の事を聞いていたらしく、特に何も聞かなかった。
でも、父は見舞いにも帰らず、葬儀にも顔を出さなかった。
この日、私の中で、母と一緒に父も死んだ。
ーーーーー
母の葬儀から一週間後、あの母子が屋敷にやって来た。
「今日から、私がこの家の女主人よ。宜しくね」
新しい義母は、美しい顔の下に黒い微笑みを浮かべて挨拶した。
「宜しくね。お・義・姉・様」
義妹となったジャネットも義母同様に黒い微笑みを浮かべていた。
何処までも似た者母子だった。
特に人の物を何でも欲しがる所は、そっくりだった。
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